若手の離職は「最近の若者」が原因?人事データで本当の傾向を見つける方法

若手の離職は「最近の若者」が原因?人事データで本当の傾向を見つける方法

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「最近の若手はすぐ辞める」。退職者が続くと、そんな説明で会議が終わってしまうことがあります。しかし、それでは次に何を改善すべきか決まりません。
確認したいのは、若手という属性ではなく、どの時期に入社した人が、どの部署で、何か月目に辞めているのかという偏りです。人事データを整理すれば、経験や印象だけでは見えなかった検討材料が生まれます。
この記事では、Excelで始められる離職分析の手順と、分析を仕組み化する際の判断基準を説明します。

「最近の若者は辞める」は、統計だけでは証明できない

厚生労働省の「令和7(2025)年雇用動向調査」による全国の年間離職率は13.7%で、前年より0.5ポイント低下しました。一方、2023年3月卒業の新規大卒就職者では、就職後3年以内の離職率が31.2%でした。
ただし、この二つは対象集団と計測期間が違います。全国の1年間の離職率と、新卒者の3年間の累積離職率を並べて、「若者が辞めやすくなった」と結論づけることはできません。過去の同じ条件の集団と比較し、業種や事業所規模も考慮する必要があります。
また、厚生労働省「令和7年転職者実態調査」では、自己都合で前職を離れた転職者が挙げた理由(最大3つの複数回答)として、「賃金が低かった」25.5%、「会社の将来に不安を感じた」25.2%、「満足のいく仕事内容でなかった」24.7%が上位でした。これは若手だけの調査ではなく、離職者全員を代表する数字でもありません。それでも、離職の理由を「世代の性格」で一括りにする前に、仕事や条件を確認する意味はあります。

最初に見るのは「辞めた人数」ではなく、分母と期間

例えば、営業部の退職者が6人、管理部が1人だったとします。人数だけでは、営業部の方が問題だとは言い切れません。所属人数、採用人数、観察した期間が異なるからです。
分析の最初に、次の二つを分けます。
・ 年間離職率:定義した1年間の離職者数を、期首在籍者数など事前に決めた分母で割る指標。毎年同じ定義で比較します。
・ 入社12か月以内の離職割合:同じ採用集団(入社コホート)のうち、入社から12か月以内に離職した人数の割合。入社後12か月を観察できた人を対象に比較します。
特に若手の早期離職を調べたいなら、後者が役立ちます。今年入社したばかりの人と、入社から丸1年を経た人を同じ条件で比較しないことが重要です。

部署別の違いを「原因」だと決めつけない

以下は考え方を説明するための架空の集計例です。実際の企業の調査結果ではありません。
同じ12か月を観察した採用集団:営業部 / 入社人数:20人 / 12か月以内の離職者:6人(30.0%)
同じ12か月を観察した採用集団:管理部 / 入社人数:15人 / 12か月以内の離職者:1人(6.7%)
この結果だけで「営業部の上司が悪い」と判断するのは危険です。職種、採用経路、雇用形態、繁忙期、仕事内容の説明などが違うかもしれません。人数が少なければ、1人の増減でも割合は大きく動きます。
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図のように差が見つかったら、責任者探しではなく、次に確認する条件を絞ることが分析の目的です。

Excelで集めたい人事データは、まず6項目

必要なデータは、最初から大量である必要はありません。まずは次の列があれば、勤続期間・部署別・入社期別の基本集計を始められます。
1. 匿名化した従業員ID
2. 入社日
3. 退職日(在籍中は空欄)
4. 所属部署(異動がある場合は履歴も確認)
5. 雇用形態
6. 入社経路や採用区分(取得できる場合)
退職理由、残業時間、面談結果などを追加するのは、利用目的と閲覧権限を確認してからにします。氏名や個別の人事評価を分析用ファイルへ無条件でコピーする必要はありません。
Excelなら、入社年月・勤続月数の補助列を作り、ピボットテーブルで部署別や入社期別の人数を整理できます。月ごとに分母を合わせて推移を確認するだけでも、議論の質は変わります。

どの順序で分析すると、施策につながるのか

おすすめは、原因を先に仮定しない次の順序です。
① 入社期別に見る。 たとえば特定の採用年度だけ早期離職が多ければ、その年の採用条件や配属方法に注目できます。ただし、入社後の観察期間を揃えます。
② 勤続月数で見る。 1~3か月、4~6か月、7~12か月など、どこに退職が集中するかを確認します。入社直後なら職務説明や受け入れ体制、半年後なら業務負荷や役割の変化などを追加調査する候補にできます。
③ 部署・職種・雇用形態で分ける。 全社平均では目立たない偏りも、集団を揃えると見える場合があります。少人数の区分は数値を公開しすぎないようにします。
④ 退職理由を照合する。 「一身上の都合」のような記録は、そのまま実際の理由だとは限りません。面談や匿名アンケートの結果も、回答しなかった人がいるという限界を付けて扱います。
⑤ 施策の前後を比較する。 入社時の説明資料、配属手順、面談頻度などを変えた場合、同じ定義で次の採用集団を比較します。景気や採用構成も変わるため、数字が改善しただけで施策の因果効果が証明されたことにはなりません。

Excelで十分な場合、ツール化が向く場合

Excelで十分なのは、対象人数やデータ形式が管理可能で、月次・四半期ごとに担当者が集計できる場合です。最初に項目名、退職日の空欄、異動履歴の扱いを統一する方が、新しいシステムを作るより先です。
自動集計を検討したいのは、毎月複数のExcel・CSVを結合する、部署名の揺れが多い、集計定義を複数部署で共有する、入退社・異動履歴を継続的に更新するといった場合です。PythonやBIツールを使えば、前処理や定例集計を再現しやすくなりますが、アクセス権限やデータ保管方法まで設計しなければなりません。
AIに退職理由を読み込ませて人物像を推測することは、最初の一手としておすすめしません。まず必要なのは、正確なデータと誤解のない指標です。個人の「退職しそう度」を推定して評価に使うより、集団として改善できる業務条件を探す方が目的に合います。

外部へ集計ツールを依頼するなら、何を伝える?

まず、分析したい期間、従業員規模、管理しているファイルの種類、見たい切り口(部署・入社期・勤続月数など)、更新頻度がわかれば、作業範囲を整理できます。相談段階では実名入りデータを送らず、匿名化したサンプルや列名一覧で十分なことも多くあります。
単純なExcel集計なら小さく始められます。一方、異動履歴の復元、複数システムからの連携、機微な人事データの権限制御まで含む場合は個別設計が必要です。私は業務改善やデータ集計ツールの相談をココナラ内で受け付けていますが、既存のExcelで運用できるなら、無理にアプリ化する必要はありません。
「最近の若者だから」では施策を選べません。どの集団に、いつ、どんな違いがあるのか。そこまで確かめて初めて、採用・配属・育成のどこを見直すべきか、具体的な議論ができます。
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