3Dカスタマイザーは、商品を360度回転させたり、部品の色や素材を自由に変更したりできる、とても魅力的な仕組みです。
最近では、家具、アクセサリー、機械製品、住宅設備など、さまざまな分野で活用されています。
しかし、実際に3Dカスタマイザーの制作に携わってみると、プログラムや3Dモデリングの技術だけでは解決できない問題が数多くあることに気づきます。
特に重要なのが、「何を正解とするのか」を制作前に明確にしておくことです。
今回は、3Dカスタマイザーの制作経験から、依頼する側と制作する側の双方が、最初に確認しておきたいポイントをまとめました。
1.まず完成した実物の写真を用意する
3Dカスタマイザーを制作する際、最初に用意しておきたいのが完成品の実物写真です。
3DデータやCADデータ、仕様書がそろっていても、それだけでは最終的な見た目を正確に判断できない場合があります。
例えば、同じ金色の金属部品でも、表面の仕上げによって見え方は大きく変わります。
・鏡面のように光を反射する金色
・落ち着いたつや消しの金色
・細かな研磨模様が入った金色
・少し茶色がかった金色
・明るく輝く金色
これらは、単にカラーコードを指定するだけでは再現できません。
また、ねじやプレートなどの小さな部品についても、正面から見た写真だけでは形状や表面仕上げが分からないことがあります。
そのため、可能であれば次のような写真を用意します。
・製品全体の正面
・背面
・左右の側面
・斜めから見た状態
・主要な部品の拡大写真
・金属部品の表面仕上げが分かる写真
特に部品の色や質感を再現する場合は、実際にその部品が製品へ取り付けられている状態の写真が役立ちます。
照明条件によって写真の色も変わるため、色の正確さが必要な場合は、一定の照明条件で撮影し、必要に応じてカラーチャートを利用することもおすすめします。
2.「この写真を完成のゴールにする」と決める
実物写真を用意するだけでは、まだ十分ではありません。
次に必要なのが、依頼者と制作者の間で完成基準を共有することです。
例えば、制作途中で、
「もう少し明るくしてほしい」
「金属らしい光沢が足りない」
「実物の色と違うように見える」
といった意見が出ることがあります。
もちろん、こうした調整は3D制作では珍しくありません。
しかし、最初に完成の目標が決まっていなければ、修正を繰り返しても、どこで完成とするべきか判断できません。
そこで、制作開始前に、
「この実物写真の見え方を完成目標とする」
という基準を決めておきます。
さらに、写真と3D画面を比較する角度や照明条件もできるだけそろえておくと、判断しやすくなります。
なお、画面の明るさやディスプレイの特性によっても色は変わるため、すべての閲覧環境で完全に同じ見え方にすることは困難です。
そのため、どの環境で、どの程度まで再現できれば合格とするのかも、あらかじめ相談しておくことが大切です。
3.色の名前とカラーコードを統一する
3Dカスタマイザーでは、色の管理が非常に重要です。
例えば、同じ金色を指しているつもりでも、資料によって次のような表記が使われていることがあります。
Gold
Gold Tone
gold
金
ゴールド
人間が読めば同じ色を指していると理解できるかもしれません。
しかし、データベースやプログラムでは、それぞれ別の値として扱われる可能性があります。
さらに、ある資料では「銀色」、別の資料では「ニッケル」、管理画面では「Silver」と表示されている場合、本当に同じ色なのか判断が難しくなります。
そこでおすすめしたいのが、制作開始前に「色の管理表」を作ることです。
管理表には、最低限次の情報を記載します。
・色を識別するためのID
・正式な日本語名
・正式な英語名
・基準となるカラーコード
・使用する素材
・表面仕上げ
・実物の参考写真
例えば、同じGoldという名称を使用する場合は、原則として同じ色の定義を参照するようにします。
一方、明らかに異なる色や仕上げを区別する必要がある場合は、別の名称や識別IDを設定します。
名前が似ているから同じ色と判断するのではなく、最初にルールを決めておくことが重要です。
4.同じ色でも素材によって見え方は変わる
ここは、3Dカスタマイザー制作で特に理解しておきたい部分です。
例えば、同じカラーコードを設定しても、
・金属
・樹脂
・木材
・塗装面
・布製品
では、3D上の見え方が異なります。
これは、色そのもの以外に、表面の反射や光沢、粗さなどが関係するためです。
3Dでは、一般的に次のような要素が見た目に影響します。
・基本色
・テクスチャ画像
・金属度
・粗さ
・環境光
・ライトの位置
・反射
・見る角度
例えば、金属部品に黄色系のカラーコードを設定しただけでは、金属らしい質感にならず、単なる黄色い部品に見えてしまう場合があります。
逆に、金属度や反射を強くしすぎると、暗く見えたり、周囲の環境が強く映り込んだりすることもあります。
そのため、カラーコードは色の基準として管理し、素材や表面仕上げは別の情報として管理することをおすすめします。
「色を合わせること」と「実物らしく見せること」は、必ずしも同じ作業ではありません。
5.部品の名前も統一しておく
色と同じくらい大切なのが、部品名の管理です。
3Dカスタマイザーでは、同じ部品について、
・仕様書に記載された名称
・CADデータ内の名称
・3Dモデル内の名称
・データベース内の名称
・画面上に表示する名称
が異なることがあります。
例えば、「ねじ」という部品でも、製品の中には複数のねじが使われています。
それらを単に「ねじ」として登録すると、どの場所のねじを変更するのか分からなくなります。
また、プレートと、そのプレートを固定するねじは、別々の部品です。
名称が似ているからといって、同じグループとして処理してしまうと、意図していない部品まで色が変更される可能性があります。
そのため、部品ごとに固有のIDを設定し、名称と実際の3Dモデルの対応関係を整理しておくことが重要です。
6.部品の確認は画像で行う
部品の名称だけで認識を合わせることが難しい場合は、画像を利用すると効果的です。
例えば、3D画面上で対象の部品をハイライトし、番号を付けます。
① 本体
② プレート
③ ねじ
④ カバー
そして、
「今回変更するのは③のねじです」
という形で確認します。
部品が細かく分割された3Dモデルでも、この方法なら依頼者と制作者が同じ場所を確認できます。
特に、複数のねじやプレートが存在する製品では、拡大写真と3D画面を組み合わせることが有効です。
7.仕様書は「どれが正式な情報なのか」を決めておく
開発が進むと、資料が増えていきます。
Excel
PDF
メール
トークルーム
データベース
プログラム
修正履歴
こうした複数の場所に仕様が記録されることは珍しくありません。
問題になるのは、それぞれの情報が食い違った場合です。
例えば、打ち合わせで色の変更が決まったのに、元のExcelが更新されていなかったとします。
その後、別の担当者がExcelを基準に作業すると、古い色へ戻してしまう可能性があります。
これを防ぐには、正式な仕様を管理するマスター資料を1つ決めることが重要です。
チャットや打ち合わせで変更が決まった場合も、最終的にはそのマスター資料へ反映します。
変更日、変更内容、承認状況を記録しておくと、後から確認しやすくなります。
8.最初から全商品を作らない
複数の商品を扱う3Dカスタマイザーでは、最初から全商品を一度に制作したくなるかもしれません。
しかし、おすすめしたいのは、まず代表となる1商品を完成させる方法です。
最初の1商品について、
・3Dモデルの形状
・部品の名称
・色の選択肢
・素材の質感
・カスタマイズ操作
・設定内容の保存
・必要に応じた購入までの流れ
を確認します。
そして、依頼者に実際の画面を操作してもらい、完成基準について合意します。
その後、他の商品へ展開します。
この流れにしておけば、共通仕様の問題を早い段階で見つけやすくなります。
反対に、複数商品を制作した後で共通の色設定や部品管理を変更すると、多くの商品を修正する必要が生じる可能性があります。
最初に1商品で基準を確立することが、結果的に時間と費用の節約につながります。
9.AIを利用する場合は、正しい資料の管理がさらに重要
最近では、AIを活用してプログラムを作成したり、3Dモデルの構造を調査したりすることも可能になりました。
AIは非常に便利ですが、仕様そのものが曖昧な場合、必ずしも期待した結果になるとは限りません。
例えば、
資料AにはGold
資料BにはGold Color
データベースにはgold
プログラムには別の色設定
という情報が存在した場合です。
この状態でAIに、
「色を正しく統一してください」
と依頼しても、どれを正解とするべきか判断できません。
AIが一つの資料を基準に修正した結果、別の画面や商品で問題が発生する可能性もあります。
そのため、AIを利用する場合には、
・正式な仕様書を指定する
・変更対象を明確にする
・変更しない部品も指定する
・不明な情報を推測で補完させない
・修正前後の差分を確認する
・既存機能が正常に動くか検証する
といった作業ルールが重要になります。
AIを使えば作業の一部を効率化できますが、正しい完成基準まで自動的に決めてくれるわけではありません。
10.制作を依頼する前に準備したいチェックリスト
3Dカスタマイザーを依頼する際は、最低限、次の情報を準備しておくことをおすすめします。
□ 完成品の実物写真がある
□ 正面・背面・側面・斜めからの写真がある
□ 主要部品の拡大写真がある
□ 完成の基準となる写真が決まっている
□ 商品の種類と数が決まっている
□ 部品の一覧表がある
□ 部品名の表記が統一されている
□ 色の名称が統一されている
□ 各色のカラーコードが決まっている
□ 素材や表面仕上げが指定されている
□ 部品ごとに選択可能な色が決まっている
□ 正式な仕様書が決まっている
□ 仕様変更時の連絡・承認方法が決まっている
□ 最初の1商品で完成確認を行う予定になっている
これらを最初に確認するだけでも、制作途中の手戻りを減らすことにつながります。
まとめ|3D制作で最も大切なのは「正解を共有すること」
3Dカスタマイザー制作というと、3Dモデリングやプログラミングに注目が集まりがちです。
もちろん、これらの技術は重要です。
しかし、実際に制作に携わる中で、最も重要だと感じたのは「完成の基準を依頼者と制作者が共有すること」でした。
実物写真を用意する。
その写真を完成のゴールとして決める。
色の名称とカラーコードを統一する。
部品の名称と3D上の対象を対応させる。
仕様書を一元管理する。
代表となる1商品で完成基準を確立してから、他の商品へ展開する。
こうした基本的な準備が、制作の品質や進行に大きく関わります。
3Dカスタマイザーは、商品の魅力を伝え、お客様が自分好みの商品を選べるようにする、とても可能性のある技術です。
だからこそ、制作前の仕様整理を大切にしたいと思います。
これから3Dカスタマイザーの導入を検討される方や、制作に携わる方の参考になれば幸いです。