Webサイトやシステムの制作では、プログラミングの技術はもちろん大切ですが、それと同じくらい重要なことがあります。
それは、制作を始める前に、必要な仕様をできるだけ明確にしておくことです。
AIを活用することで、プログラムの作成や修正は以前より効率的に進められるようになりました。
しかし、AIを使えば、仕様が曖昧な状態でも正確なシステムが完成するというわけではありません。
今回は、制作期間を長引かせないために大切だと感じている、仕様の決め方についてお話しします。
仕様を少しずつ追加すると、なぜ制作期間が長くなるのか?
例えば、複数の商品や部品を選択できるカスタマイズシステムを制作するとします。
最初は「部品の色を変更できるようにしたい」というご依頼だったとします。
制作が進んでから、
- この部品は、別の色も選べるようにしたい
- 同じ部品でも、商品によって色を変えたい
- 色の名前を変更したい
- 金属の光沢や質感も調整したい
- 一部の部品だけ、選択方法を変えたい
といった仕様が追加されると、画面の表示だけでなく、データベースや保存機能などにも影響する場合があります。
小さな変更に見えても、関連する機能を確認し、必要に応じて修正・テストを行わなければなりません。
こうした作業が積み重なると、当初の想定より制作期間が長くなることがあります。
もちろん、制作途中で新しいアイデアが生まれることもあります。
大切なのは、変更そのものを避けることではなく、変更による影響を確認しながら進めることです。
部品名や色の名前を統一することも重要です
例えば、同じような色について、資料によって「シルバー」「Silver」「ニッケル」「Nickel」と異なる名称が使われていたら、どうでしょうか。
それぞれが同じ仕上げを意味するのか、異なる色や材質を指しているのか、確認が必要になります。
部品名についても同じです。
一つの資料では「固定ねじ」、別の資料では「プレートねじ」、さらに別の資料では英語名で記載されていると、同じ部品を指しているのか判断が難しくなる場合があります。
こうした名称の揺らぎは、選択ボタン、データベース、商品情報、保存済みの設定などに影響することがあります。
そのため、制作開始前に、部品名・色名・選択肢・対象商品を一覧表にまとめ、正式な名称を統一しておくことをおすすめします。
色の指定は、名前だけでは十分ではないことも
例えば、色を「ゴールド」と指定した場合でも、明るい金色なのか、落ち着いた金色なのか、光沢の強い仕上げなのかによって、見た目は大きく変わります。
特に3D表示では、光の当たり方や材質設定によっても色の見え方が変化します。
そのため、必要に応じて、カラーコード、参考画像、素材の仕上げ、光沢の程度などを確認しておくことが大切です。
実物と近い仕上がりを目指す場合には、実際の商品写真や色見本も重要な判断材料になります。
ただし、カラーコードだけで金属の質感まで正確に再現できるわけではありません。何を基準に仕上がりを確認するかについても、事前に合意しておくと安心です。
仕様書は、依頼者と制作者の共通の基準になります
私自身、制作ではExcelなどを活用し、商品や部品の仕様を一覧化する方法を大切にしています。
情報を整理しておけば、制作途中で確認が必要になった際にも、どの仕様を基準にするのか判断しやすくなります。
また、途中で変更が発生した場合も、変更前と変更後の内容を記録することで、認識の違いを減らすことができます。
仕様書は、制作会社やエンジニアだけのために作るものではありません。
依頼者と制作者が、同じ完成イメージを共有するための大切な資料です。
AIを活用する時代だからこそ、仕様の明確さが大切
現在はAIを利用して、プログラムの作成、調査、テストなどを効率的に進められるようになりました。
しかし、部品の名称や色の定義が曖昧な場合、AIも正しい判断の基準を持てません。
AIが素早くプログラムを修正できても、仕様そのものが変われば、追加の修正や検証が必要になります。
だからこそ、AIを活用する時代には、最初に何を作るのかを明確に定義することが、これまで以上に重要になると考えています。
制作をご依頼いただく際のお願い
私は今後も、お客様のご希望を丁寧に伺いながら、できるだけ正確で効率的な制作を心がけていきたいと考えています。
そのため、制作開始前には、必要な機能やデザイン、部品名、色の指定、完成イメージなどを、できる限り整理したうえで着手したいと思っています。
最初からすべての仕様を決められない場合もあると思います。その際は、未確定の項目を明確にし、相談しながら段階的に仕様を確定していくことが大切です。
制作途中で新しいご希望が出てきた場合も、影響範囲や必要な作業時間、追加費用の有無を確認しながら進めることで、双方が安心して取り組めると考えています。
納品前・納品後のソースコード変更についてのお願い
システム開発では、完成したプログラムだけでなく、修正履歴やテスト結果を管理することも重要です。
私は、AIを活用しながら開発を進めていますが、プログラムの変更内容を確認し、テストを行いながら、できるだけ安全に制作することを心がけています。
そのため、納品前・納品後を問わず、事前のご相談なく、お客様ご自身や第三者、AIツールなどによってソースコードやデータベースを変更することは、お控えいただくようお願いしています。
AIを利用した修正自体が悪いわけではありません。しかし、変更内容や作業履歴が共有されていない場合、こちらで管理しているプログラムと実際に稼働しているシステムの内容が一致しなくなることがあります。
その状態で不具合が発生すると、元のプログラムに問題があったのか、変更された部分が原因なのか、原因の切り分けが難しくなります。
また、過去に実施したテスト結果が、そのまま有効とは限らなくなります。
事前のご相談や合意なくコード・データベースなどが改変された場合は、安全性と動作の確認ができなくなるため、それ以降の修正作業やサポートを継続できない場合があります。
第三者による変更後にトラブルが発生した場合も、変更内容の確認、原因調査、復旧作業などが別途必要になることがあります。
修正をご希望の場合や、ほかの開発者・AIツールを利用される場合は、必ず事前にご相談ください。
変更内容や作業範囲を確認し、必要に応じてバックアップや引き継ぎ方法を決めたうえで、安全に作業を進められるようにしたいと考えています。
これは、お客様の自由なシステム運用を制限するためではありません。
お客様の大切なシステムを守り、トラブルの原因を明確にし、責任を持って対応できる状態を維持するためのお願いです。
正確な仕様は、正確な制作への第一歩です。
お客様の大切な時間とご予算を無駄にしないためにも、事前の打ち合わせと仕様の整理を大切にしていきたいと思います。