「分かりやすい文章にしてください」
仕事で文章を扱っていると、よく出てくる言葉です。
難しい言葉を簡単な言葉に変える。
一文を短くする。
箇条書きを使う。
もちろん、どれも大切です。
でも、それだけで「伝わる文章」になるとは限りません。
たとえば、こんな社内通知があったとします。
10月1日より申請方法が変更となりますので、対象となる従業員については社内システムより申請を行っていただきますようお願いいたします。なお、システムの利用が困難な場合については総務課までお問い合わせください。
日本語としては、それほどおかしくありません。
けれど、読む側からすると、
「何が変わるの?」
「自分は何をすればいい?」
「いつから?」
「できなかったらどうする?」
という情報を、文章の中から探さなければなりません。
そこで、
申請方法が変わります
10月1日から、紙の申請書ではなく社内システムから申請してください。
・変更日:10月1日
・申請方法:社内システム
・分からない場合:総務課へ相談
と整理すると、使っている言葉そのものは大きく変わっていなくても、かなり読みやすくなります。
違うのは、情報の順番です。
「何を書くか」より先に考えること
私が文章を整理するとき、まず考えるのは文章表現ではありません。
誰に伝えるのか。
何を伝えるのか。
読んだ人に何をしてほしいのか。
この3つです。
社内通知なら、従業員に手続きをしてもらう。
採用案内なら、応募者が次の予定を理解できるようにする。
マニュアルなら、初めてその仕事をする人が迷わず作業できるようにする。
外国人スタッフ向けの案内なら、日本語を簡単にするだけでなく、必要な行動を一つずつ分けて伝える。
目的が違えば、同じ「分かりやすい文章」でも形は変わります。
やさしい日本語も同じです
「やさしい日本語」というと、難しい言葉を簡単な言葉へ置き換えるイメージが強いかもしれません。
でも、実際にはそれだけではありません。
一文に複数の指示が入っていたら分ける。
期限を文章の中に埋めず、目立つ場所に出す。
「申出日」「押印」「認印」のような言葉が必要なら、意味も一緒に示す。
つまり、読み手が次に何をすればよいか分かる状態をつくることが大切です。
生成AIを使うときも、考え方は同じ
最近は、文章作成に生成AIを使う場面も増えました。
ただ、AIに
「分かりやすい文章にしてください」
とだけ頼んでも、必ずしも仕事で使いやすい文章になるとは限りません。
誰向けなのか。
目的は何なのか。
絶対に変えてはいけない情報は何なのか。
最後に人が何を確認するのか。
こうした条件を人が整理してからAIを使う方が、安定した文章を作りやすくなります。
私は、
人が整理する → AIが補助する → 人が確認する
という流れを大切にしています。
AIが仕事をするというより、人の仕事を整理した結果としてAIを使いやすくするイメージです。
文章の仕事は、「書く」だけではない
社内文書、マニュアル、採用文章、FAQ、やさしい日本語。
一見すると違う仕事ですが、私の中では共通しています。
それは、
散らばっている情報を整理して、相手が理解し、次の行動を取れる形にすること。
文章を書く前に、情報の交通整理をする。
私はこの部分を大切にしています。
「内容はあるけれど、うまく文章にならない」
「説明しているはずなのに、何度も同じ質問が来る」
「担当者しか分からない仕事を整理したい」
そんな状態からでも、少しずつほどいていけば形にできます。
分かりやすい文章は、難しい言葉を減らすことだけではありません。
読み手が迷わない道をつくること。
それが、「伝わる文章」の一つの形だと思っています。