※AIはChatGPT pro 6を使用
こんにちは。英語講師のmasaです。
前回のブログでは、AIとAnkiを使った英語学習についてお話ししました。
今回は、そのうちの「AIによる解説」を、実際の英文でお見せしたいと思います。
AIの解説がすごいと言われても、和訳を出したり、文法を説明したりするところを想像する方が多いかもしれません。
もちろん、それも助かります。
ただ、私が特に驚いているのは、文章の展開をかなり深いところまで読み解いてくれることです。
その話をする前に、一冊だけ紹介させてください。
丹羽裕子先生の『入試英文 精読の極意〈新装版〉』(研究社)です。
私の知る大学受験用の英語長文参考書の中で、いちばん素晴らしいと思っている本です。
特に好きなのが、「英文の展開を追う」という解説です。
英文を一文ずつ訳せても、
「なぜここでこの話が出てくるのか」
「この具体例は、何を説明するためにあるのか」がわからないことがあります。
この本は、そういう疑問に丁寧に付き合ってくれます。
冒頭で何に注目し、どんな展開を予想するのか。
次の文を読むことで、前の文の見え方がどう変わるのか。
離れたところにある表現が、どのようにつながっているのか。
解説を読んでいると、英文を読むときの頭の働かせ方を、隣で教えてもらっているように感じます。結論だけでなく、そこにたどり着く過程が見えてきます。
そして今、この本をAIに学習させ、再現を求めると、かなりきれいな形で実践してくれます。
少なくとも今回の出力には、私がこの本の解説で大切だと感じているところが、よく表れています。
実際に見てみましょう。次の英文は、アメリカ人の自国観と、他文化との違いを論じたものです。
Growing up, Americans hear that theirs is the strongest country, the freest and most fortunate, the most open to new ideas and change. We also hear that it is the world's most violent society, the most spoiled and pampered, the least sensitive to other cultures and their values. The real significance of such messages, whether complimentary or belittling, rarely sinks in. America is a large country, and most of its people never leave. Its popular culture has spilled over into nearly every part of the world. Americans can buy blue jeans in Thailand, watch The CBS Evening News in Korea, find USA Today almost anywhere they go. At first glance Tokyo, Singapore, and Frankfurt may look like cities in the United States. It is not surprising, then, that many Americans should half consciously assume that America represents a universal culture, that other countries are steadily becoming more like it, that its peculiarities cannot matter very much. The world is full of potential Americans, since people can come from any other society and be accepted here. Therefore the world may seem to be full of potential Americas too.
The assumption is erroneous: the United States is not an ordinary society. The differences between America and other cultures run deep and matter profoundly. They are differences of kind, not just of degree. Of course people are essentially the same anywhere on earth, but cultures are not. America is unusual because of its fundamental idea of how a society holds itself together. American society is not made of people who all happened to be living in a certain region or who have some mystic tribal tie. It's made of people who came or were brought here from somewhere else. This is perfectly obvious, but some of the consequences of the fact are not, and they affect our dealings with the rest of the world every day.
ここからは、AIが出した解説を、ブログ用に整理して紹介します。
まず、冒頭の三文から、どんな話が始まるのかを考えます。
最初の文では、アメリカは最も強く、自由で、恵まれた国だと言われています。ところが次の文では、最も暴力的で、甘やかされ、他文化に鈍感な社会だと言われる。
ここまでは、アメリカに対する称賛と批判が並んでいます。
しかし、第三文では、そのどちらが正しいかを決める方向には進みません。
称賛であれ批判であれ、そうした評価の本当の意味が、当のアメリカ人にはなかなか実感されない、と述べられます。
すると、読み手には疑問が生まれます。
自国についてこれだけいろいろなことを聞いているのに、なぜ、その意味を深く受け止めにくいのでしょうか。
この疑問を持って先へ進むと、続く具体例の役割が見えてきます。
タイのジーンズや韓国のニュース番組は、何のために出てくるのでしょうか。
アメリカは大きな国で、多くの人は国外に出ない。
しかも、アメリカの大衆文化は世界各地に広がっています。
国外に出ても、タイでジーンズを買え、韓国でアメリカのニュースを見られ、各地でアメリカの新聞が手に入る。
東京やシンガポール、フランクフルトの街並みさえ、一見するとアメリカの都市に似ている。
これらの例に共通するのは、外国でも、自分たちにとってなじみのあるものに出会うということです。
他国の文化の違いに触れる前に、「ここもアメリカと似ている」と感じてしまう。
そういう経験があれば、アメリカの文化こそ世界に通用する普遍的なもので、ほかの国も次第にそれへ近づいていると思うのも、無理はない。
このように、商品の話から街並みの話へ、さらに世界の文化をどう捉えるかという話へと進んでいます。
具体例をまとめることで、一見ばらばらに見えた文がつながります。
ただし、筆者が「そう思うのも無理はない」と説明していることと、その考えを正しいと認めていることは、分けて読む必要があります。
その考え方が、はっきり形になるのが、AmericansからAmericasへと変わるところです。
The world is full of potential Americans.
Therefore the world may seem to be full of potential Americas too.
最初は、外国の「人」がアメリカ人になれるという話です。
ところが次の文では、外国の「社会」そのものがアメリカのようになれるという話へ移っています。
人が別の社会の一員になれることと、社会全体が同じ性質になることは、同じでしょうか。
英単語では、Americansからnが一文字なくなっただけです。
しかし、話の対象は、個人から社会全体へと変わっています。
chat gptの解説は、この小さな表現の変化に、大きな推論の飛躍を見つけています。
そして、次の段落の冒頭で、筆者は言い切ります。
The assumption is erroneous.
その思い込みは誤りだ、と。
ここで、それまで説明されていた見方に、筆者の判断が突きつけられます。
さらに面白いのが、同じ言葉が、前後で反対の判断に使われていることです。
第1段落には、
its peculiarities cannot matter very much
とあります。
アメリカ固有の特徴は、それほど重要ではないだろう、という見方です。
ところが第2段落では、
The differences between America and other cultures run deep and matter profoundly.
と述べられます。
他文化との違いは深く、非常に大きな意味を持つ。
同じmatterが使われながら、「大して重要ではない」から「深く重要である」へと、判断が反転しています。
また、第1段落のAt first glanceに対して、第2段落にはrun deepやfundamental ideaが出てきます。
「一見すると似ている」という表面の話から、社会を成り立たせる根本の話へと、目を向ける場所が変わっているんです。
ここまで見ると、筆者が単に「アメリカは特殊だ」と言っているだけではないことがわかります。
前の段落で示した見方に、言葉を対応させながら反論しているわけです。
後半を読んでから冒頭に戻ると、もう一つ気づくことがあります。
They are differences of kind, not just of degree.
違いは、程度だけでなく、種類にある。
この一文を踏まえて冒頭を読み返すと、最初に並んでいた評価が、いずれも強さや自由、暴力性といった「程度」に注目していたことに気づきます。
称賛と批判では評価の向きが反対です。
それでも、共通の尺度でアメリカを比べているという点は同じです。
それに対して後半では、「どれほど強いか、自由か」といった比較だけでは捉えられない、社会の成り立ちそのものの違いが問題になります。
冒頭の最上級だけで、筆者がそこまで意図していたと断定することはできません。ただ、後半のkindとdegreeを手がかりに読み直すと、前半と後半の関係を、このように捉えることができます。
私は、こういう解説にとても惹かれます。
最後まで読むことで、最初に読んだ文に戻る理由が生まれる。
読み返すたびに、文章のつながりが見えてくるからです。
では、筆者は何を認め、何を否定しているのでしょうか。
Of course people are essentially the same anywhere on earth, but cultures are not.
人間には本質的な共通性がある。
しかし、文化まで同じということにはならない。
ここでは、人間の共通性と文化の同一性が切り分けられています。
先ほどのAmericansからAmericasへの推論を振り返ると、個人について成り立つことを、そのまま文化や社会全体に広げてはいけない、という問題が改めて見えてきます。
続いて、筆者はアメリカの特殊性を、社会がどのように一つにまとまっているか、その根本的な考え方に求めます。
同じ土地に住んでいたことや、部族的な結びつきで説明される社会とは違い、アメリカは、ほかの場所から来た人や連れてこられた人によって成り立っている。
ここまで読むと、多様な出身の人を受け入れる性質も、単に「どの文化にも共通する普遍性」の証拠と捉えるだけでは足りません。
その人々が一つの社会を作っている、その成り立ちにこそ目を向ける必要があるのです。
ただし、この抜粋では、人々を結びつける考え方の具体的な中身までは説明されていません。
最後の文は、外から来た人々によって社会が作られたという事実は明白でも、その事実がもたらす結果は十分に理解されておらず、他国との関係にも影響している、と述べています。
そこで「その成り立ちが、他国との関係にどんな影響を与えるのか」という、次に読むべき問いが残ります。
ここまでが、AIの出力をもとに整理した解説です。
私がすごいと思ったのは、具体例の共通点をまとめ、離れた表現を結びつけ、後半から冒頭を読み直すところまでできていることです。
そして、「この文を読んだら、次に何を考えるか」という読み手の思考も説明しています。
『精読の極意』で私が好きなのは、まさにこうした、文章の展開を自分の頭で追っていく読み方です。
今回のAIの解説には、その特徴がかなりきれいに表れていると感じました。
もちろん、気になる説明があれば、英文に戻って確かめます。
今回のように、本文に明示されていることと、そこから考えられる読みを分けるのも、その一つです。
AIには、さらに「なぜその二つがつながるの?」「本文のどこからそう言えるの?」と聞き返せます。
最初の解説で納得できなかったところを、その場で掘り下げられるのは、独学をするうえで大きな助けになると思います。
読んだあとに、自分でも具体例の役割や段落同士のつながりを説明してみる。説明できなかったところは、もう一度確かめる。
前回紹介したAnkiに、短い問いとして残しておくのもよいと思います。
私の学習サポートでは、こうしたAIへの質問の仕方や、理解した内容を復習につなげる方法も、一緒に考えていきます。
参考書:丹羽裕子編著『入試英文 精読の極意〈新装版〉――読み込むための10の軸(AXIS)』研究社。