境内の風が、ふと涼しく感じられるようになってきました。

境内の風が、ふと涼しく感じられるようになってきました。

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コラム


ほんの数日前まで、蝉の声が耳に残るような暑さが続いていたのに、今朝は草木の間をすり抜けてくる風がどこかやさしくて、秋の気配をしっかりと届けてくれているようでした。朝の掃除をしながらふと見上げると、銀杏の葉がほんのわずかに黄色く色づいていて、季節は確かに次へと歩み始めていると感じます。

お寺の仕事は、季節によって忙しさの質が変わります。夏はお盆で多くの方が訪れ、日々が慌ただしく過ぎていきましたが、秋の入り口は少しだけ時間の流れがゆっくりになります。参拝に訪れる方の足取りも、どこか落ち着いていて、境内に佇む時間も長く感じられます。

今日は、ひとりの年配の女性が朝早くに来られて、境内の片隅にしばらく座っていらっしゃいました。静かに手を合わせたあと、ぽつりと「秋になると、昔を思い出すのよ」と話してくださいました。その言葉に、私も思わず立ち止まってしまいました。

秋は、物思いの季節なのかもしれません。過ぎていった時間、大切な人との記憶、今ここにある自分の立ち位置。夏の賑わいが少しずつ落ち着いて、静けさが戻ってくるこの時期だからこそ、心の奥にあるものと自然に向き合えるのかもしれません。

境内では、彼岸花のつぼみがそっと顔を出していました。咲くのはもう少し先になりそうですが、その姿が何とも言えずいとおしく感じます。花もまた、自分の役目を知っているかのように、ちゃんと時期がくると姿を見せてくれるのですね。

私たちの暮らしも、焦らず、無理に急がず、自然の流れの中で少しずつ変わっていければいいのだと思います。季節が静かに移ろうように、心も静かに、でも確かに整っていく。そんな日々を大切にしていきたいと、改めて感じました。

秋の始まりは、日常の中の静かな変化に気づかせてくれる大切な時間。忙しさに流されず、ひとつひとつの変化を味わうように過ごしていけたらと思います。
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