初めての休日になった。
僕は同僚と、新城という海へ向かった。
「新城」と書いて「アラグスク」と読む。
地元でも結構、有名な海だった。
僕たちは、着いて早々に潜りはじめた。
透明な海の中を潜っては、色とりどりの魚やカメを見つけた。
同僚は何度か来ていたらしいが、楽しんでいるように見えた。
僕は20分くらいで海から上がり、遠くから、まだ潜っている同僚を眺めていた。
海中の塩分濃度が高かったのか、乾いてきた肌はベタついた。
この時、僕はひとり浜辺に座り込み、がっかりしていた。
出てきた言葉は「こんなもんなのか」だった。
心から宮古島の海を見たいと思ったのに、自分が望んで来た場所だったはずなのに。
その程度の感想にしかならなかった。
来るかどうかを何度も悩んで、考えて、それでも行きたいと思って踏み出した一歩が、すべて”無”に帰するような錯覚に陥った。
呆然とした。
「やっとの思いで行動したのに、なんの収穫も得られなかった」
僕は、島に来た意味を見失っていた。
今だからわかるが、当時の僕は、
島に来る前から期待を膨らませ過ぎており、何かを掴もうと意気込みすぎていたのだった。
遠くでシュノーケリングを楽しむ同僚がみえた。
僕は一人、虚しい気持ちで浜辺にいた。
「ずっと座っていても仕方ないから、一旦、歩こう…」
おもむろに立ち上がり、なんとなく浜に沿って歩きはじめた。
うっそうと茂る木々の前を通りすぎ、しばらく行くと、開けた場所に着いた。
その場所からは、今まで、木々で遮られて見えなかった大きな岩山が見えた。
その岩肌はゴツゴツしていて荒々しく、所々には苔が生えていた。
まるで大地が躍動しているようで、強い存在感があった。
僕は岩山に見惚れながら、
「ああ、人間は所詮、この壮大な地球の一部にしかすぎないんだな」そう思った。
まるで「ふわふわと宙に浮かび、高い所から世界を見下ろしているような感覚」だった。
圧倒的な自然の存在を前に、僕の小さな悩みはどうでも良くなりそうだった。
そして、何かの引っかかりが取れたかように「僕は山が好きだったんだ」と分かった。
その瞬間、心がスッと軽くなり、安心した気持ちになった。
さまざまな葛藤の末に選んだ、宮古島はへの旅は、
きちんと次の道を示してくれたのだった。
続く。