私は私をどれだけ愛せるか

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コラム
突然ですが
貴方は貴方を愛していますか?
それを感じとれたことはありますか?

ちょっといきなり何を言ってるのって思われますよね。

実は私、最近ふとした時にそれを感じてしまったのです。
私がまだ子供だった頃の、懐かしい思い出と共に。

19××年、クリスマスの夜

幼い頃の私は
「ウルトラマンタロウみたいになりたい」
と憧れを抱いていました。

それを兼ねてから知っていた
幼き私の取り巻きである善良なる大人達は
クリスマスの夜に結託し、私達子供をリビングに集めるのでした。

暖かいクリームシチューに鳥の照り焼き、クリスマスケーキに、プレゼント。
申し合わせたかの様にとっておきの夜が遂行されようとしていました。

大人達は勝利を信じて止まぬ顔で、少しばかりのアドリブでさえ許される程の余裕を携え見事な演出をしていたのです。


さて、そんな最中
子供たちにとってはシチューなどどうでもよく、兄と私は赤いリボンと緑色の包装紙によって象徴的に包まれた箱に憑りつかれていました。

そして今夜ばかりは、「もう寝なさい」などという500万年にも渡り全幼児を地の底に叩き落としてきた無慈悲なバスターコールも一切無用である!メリークリスマス!!

直線、僅か2メートル、息を吞む。
ビクトリーロードのパレードに乗り、それがやってくる。

しかし、いややはりというべきか。得意げな顔をした髭の内の一人が、ここぞとばかりに弄び、私達を焦らす。
くだらぬ不意を突かれ、心底気に入らぬ。

おのれ、驕り高き大人め。
もし、悪魔との取引が叶う角印が今ここにあれば躊躇いもなく押印するであろう。控えは要らぬ!聖戦さながら、トップダウンの決定力である。

ろくでもない余興を過ぎやった後、さぁさぁ、お待ちかね、開封の儀。

微塵にされた包装紙から顔を覗かせたのは
なんと、私の憧れのウルトラマンタロウになれる変身コスチューム。

「これなーーーんだっ??!」

幾度もこの状況をシミュレーションしてきた大人が見せる、妙に癇に障るハイテンションをよそに、私の秤は最大瞬間風速を記録した後にすぐさま地に落ち、言葉を失っていた。

刹那、幾度もこの状況をシミュレーションしてきたはずの大人が見せる、とても隠し切れない程の不穏で惨めな関心が私の顔に浴びせられる


「どうかした...?」


その場では決して口にしてはならない類の言葉が最高に不適切な響きとして空間を支配する。服従を強制される大人達の口元から余裕の証が少しずつ消える。消え去る。

私は声を上げ泣いた。
取り巻きには目もくれず、永遠の悲しみに打ち泣いた。



私である事よりも大切なことなど。

何の話ですか、、?と思われてしまいそうですが、実はあの時の私は、
ウルトラマンタロウになりたかった訳ではなく
ウルトラマンタロウ「みたいに」なりたかったのです。

あの涙を翻訳するとこういうことです。
「この変身コスチュームを着てしまえば、私は跡形も無くなり、まるでウルトラマンタロウではないか!大人達よ、よく聞いてくれ、そう言う事ではない。。決してそうではない!」

とても質の悪い我儘ですね。大人達が可哀そう。笑
しかしながら、この絶妙ながら絶対的な違いを、子供ながらに、もしくは子供だからこそ見分けがついていたのです。子供は何かになれるということを信じていますからね。大人になるにつれ、誰かに為り変われる事の物理的、技術的、倫理的、精神的、生物学的、それ以外のあらゆるもの的不可能を叩き込まれる訳ですが。

それにつけても自分以外への何かへの憧れは止みません。
これまでに私は友人や、芸能人、アニメや小説の主人公と、多くの他者に憧れてきました。

ですがいつも決まって、
その人そのものになりたい訳ではない」
という前提を無意識下に持っていたようです。

皆さんはどうですか?

私にはこれがとても不思議でした。
だって、こんなにも自身に対して気に入らないところがあっても、他人に有って私に無いことを呪っていても、明かな成功者を羨んでいたとしても、
私が私であることの方がよっぽど大切だってことになるからです。

あの人達に為り変わる代償に私である事を完全にやめるなんて、絶対にしたくないということなんだと思います。

言い変えれば、
私は私以上に愛せるものなんてない
ということになってしまいます。ジーザス。

(※失礼、馴染みのない他国語の感嘆詞がいとも容易く口をついて出てしまう程のジーザスを披露してしまいました。こいつはジーザス界でもきっと課長クラスでしょう。それも将来役員を約束されている程有望な。)

まさかまさか、あの人や、あの人や、あの人よりも、自分の方が愛するに値するということになってしまうのですから、これはもう大変。

一転、我に返る。
ん、いや、何を今さら当たり前のことを。自分を一番愛すべきなんてこと、これまでにも誰かが言っていたじゃないか。知っていたさ。

一転。
でも。では、なぜ私の心には英国製の感嘆符が突き刺さったまま抜けないのでしょうか。


ー完ー


追伸
やや過言な気もしなくもないですが、今の理解は概ねこんなところです。
例えば、貴方に成り代わってしまったら貴方に会えなくなるじゃないの、といった素敵な指摘については、良ければ一緒にお話ししてみませんか^^?



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