Etsyショップを始めてから約2年になります。
最近あらためて感じるのは、AIのおかげで商品をつくること自体が速くなった、ということ以上に、自分が商品を見る場所そのものが変わってきたということです。
今回再出品したのは、昨年デザインしたManetのスウェット。
このデザインのきっかけは、WikiArtでマネの作品をいろいろ見ていたときに、桃を描いた作品を見つけたことでした。
マネというと、私自身は花瓶に生けられた花の絵も好きなのですが、その桃の絵は第一印象で「あ、かわいい」と思いました。
色もよかった。
冬用のスウェットをつくりたかったので、裏起毛のものを選び、チャコールグレーに合わせてみると、桃の色がよく映えました。
そこにマネの言葉と名前も加えています。
自分でも実際に購入していて、秋冬にはかなり着ています。
今回、商品自体は昨年と同じですが、モックアップを全面的に作り直しました。
ここで、去年と今年のAIの違いをかなり感じました。
昨年なら、
「パリのアパルトマンで、朝の光が入っていて……」
と、自分で背景設定まで細かく考えてから画像をつくらせていました。
ところが今回は、ChatGPTにスウェットの画像を見せたところ、背景も含めたモックアップ案を5〜6パターンほど提案してくれました。
私のこれまでの好みやショップの文脈もある程度わかったうえで、
「このスウェットなら、こういう世界観が合うのでは」
というところから提案が始まる。
去年までは、こちらが設定を考えてAIに指示していた。
今年は、AI側から設定そのものが返ってくる。
ここはかなり大きな違いです。
単に画像生成の精度が上がったというより、AIが「制作ツール」から、少しずつ「制作相手」に変わってきた感覚があります。
出来上がったモックアップは、正直かなり秋を演出していました。
「ちょっとやりすぎでは?」
と思うくらいです。
でも、私は結局その画像を採用しました。
たぶん、アパレルの売り場をつくっていた頃の感覚があるからだと思います。
ショップのウィンドウディスプレイも、ただ商品をきれいに置けばいいわけではありません。
季節感を強く出したり、少し過剰なくらい演出したりする。
そうすることで、遠くから見たときに初めて目に入る。
逆に、商品だけをシンプルに置くことで、かえって安く見えてしまうこともあります。
AIがつくった画像を見ながら、
「少しトゥーマッチ。でも、このくらいの方が商品として目に入る」
と判断したのは、たぶんそういう経験が残っているからです。
クッションをつくる予定はなかった
もうひとつ新しく加えたのが、Klimtのクッションです。
これは、最初からつくる予定だったわけではありません。
新商品についてChatGPTと話していたときに、
「クッションはどうですか」
と提案されました。
正直、
「クッションって需要あるの?」
と聞き返した記憶があります。
特にアメリカ市場では需要がある、という話になり、それなら一度つくってみよう、と。
すでに販売しているダブルサイドのトートバッグに合わせて、クッションも両面デザインにしました。
やってみると、これが意外と面白い。
クッションそのものだけではなく、
どんな椅子に置くか。
どんなソファに置くか。
どんな部屋ならこの絵が生きるか。
そこまで含めてモックアップを考えられるからです。
こちらの画像生成にはGeminiを使いました。
最近は、ChatGPTとGeminiも使い分けています。
ChatGPTは、世界観や企画を一緒に考えるのが得意。
一方で、
「この画像とこの画像を入れ替えて」
といった単純な編集を頼むと、なぜか少し別のアレンジが加わってしまうことがあります。
Geminiは、そのまま入れ替えてほしいときに、そのままやってくれることが多い。
しかも速い。
単純な画像編集はGemini。
企画や世界観から考えたいときはChatGPT。
そんなふうに使い分けるようになりました。
ただ、Klimtのクッションをつくっているときには、Geminiも世界観づくりがかなり上手いことに気づきました。
結局、どちらが優れているという話ではなくて、
何をしたいかによって、道具を持ち替える
というところに落ち着いています。
最初の1年は、本当に「置いていた」
Etsyを始めた頃を振り返ると、商品を「販売していた」というより、かなりの期間、ただ「置いていた」に近かったと思います。
まずは出してみないと分からない。
そんな気持ちで、Tシャツやスウェットを中心に商品を並べていました。
当時は、今ほどAIでモックアップをつくることもできませんでした。
背景を自然につくることも難しかった。
だから、
「これ以上どう見せればいいんだろう」
と思っても、できること自体が少なかったのです。
商品をPrintifyのモックアップに載せ、そのまま出品する。
最初の頃は、それで十分だと思っていました。
でも、Printifyのモックアップをそのまま使っていると、当然ですが、ほかのショップと同じモデルが何度も出てきます。
最近は、それをなるべく消すようにしています。
S・M・Lのサイズ表示ひとつとっても、それぞれ別のモデルに着てもらい、サイズ表記を加える。
Printifyの商品であることは変わらなくても、
Printifyのカタログをそのまま並べた店には見えないようにする。
今いちばん変わったところを挙げるなら、間違いなくモックアップです。
「何を描くか」から「誰が持つか」へ
商品そのものについても、考え方が変わってきました。
最初は、
「この絵はバッグにしたら面白そう」
というところから考えていました。
作品のインパクトが先にあったんです。
ところが今は、
「この絵は、どんな服装に合うだろう」
と考えることが増えました。
たとえば、強い絵だからバッグにすれば成立する、とは限らない。
カンディンスキーの絵をバッグにしたら面白いかもしれない。
でも実際に持つ人はいるだろうか。
服に合わせやすいだろうか。
そう考える。
つまり、
絵が強いかどうかではなく、その商品を実際に使う人が見えるかどうか
を見るようになってきました。
バッグをつくるようになったことも、その変化にかなり影響しています。
もともと私はTシャツやスウェットを中心につくっていました。
ところが以前、日本の別のプラットフォームで販売していたモナリザのエコバッグに、雑誌から掲載の問い合わせが来たことがありました。
最終的にその商品自体の掲載には至りませんでしたが、別につくっていたロートレックのバッグは実際に掲載していただきました。
そこから、
「バッグという商品もあるな」
と意識するようになりました。
Printifyを見ると、バッグにもいろいろな種類がある。
そこで商品をつくり始めました。
実際、バッグはTシャツのようにサイズを選ぶ必要がありません。
買う側からすると、その分ハードルが低い。
「絵をどの商品に載せるか」という選択だけでも、売れ方は変わる。
これは、商品を出してみないと分からなかったことでした。
リスティングは、接客でもある
最近は、Etsyのリスティングも「商品情報を並べる場所」ではなく、少し接客に近いものとして考えるようになりました。
Etsyでは複数の画像を掲載できます。
だから私は、できるだけ多く載せます。
商品の正面。
使用イメージ。
サイズ。
ディテール。
そこまでは、どのショップでもある程度やっています。
でも最近、最後をサイズ表だけで終わらせるのが少しもったいない気がしてきました。
そこでバッグの商品では、最後の画像を、壁にいくつかバッグが掛かっているビジュアルにして、そこに短いメッセージを入れるようにしました。
たとえば、
「名画は壁に飾るだけじゃなく、持ち歩こう」
というような言葉です。
情報を伝えて終わるのではなく、最後にもう一度、
「この商品を持つって、こういうことかもしれない」
という印象を残す。
リアル店舗なら、最後にスタッフが一言添えるようなものかもしれません。
画面越しのECでも、できる接客はある。
そんなふうに考えています。
値段も、見せ方の一部
価格についても、同じです。
私は以前、ラグジュアリー系のセレクトショップで店長をしていました。
同じような商品でも、
どこで、
どう見せられ、
どんな空間に置かれているかで、
買う人も、受け取られる価格も変わる。
それは現場でかなり見てきました。
私のEtsyのバッグは、同じPrintifyの商品を使っているほかのショップより、少し高めに設定しています。
それは、なんとなく高くしているわけではありません。
その価格にするなら、
「その値段に見えるようにする」
必要があると思っているからです。
モックアップ。
画像の順番。
世界観。
コピー。
商品ページ全体。
そこまで含めて価格です。
逆に言えば、価格だけを上げても、見え方が追いつかなければ成立しない。
これはリアル店舗でもECでも、あまり変わらないところなのかもしれません。
広告を止めたら、売れ始めた
Etsyは、この2年間かなり試行錯誤しました。
広告も出しました。
夏のあいだ、しばらく広告を出していた時期があります。
でも、なかなか売れない。
「もうやめるわ」
と思って広告を止めたら、そのあとに売れ始めました。
3月頃にも、広告を出していないのに、1か月で7個ほど売れたことがあります。
これがいまだによく分かりません。
Etsyは、こういうことがある。
ただ、ひとつ気づいていることがあります。
私のショップは、訪問者数そのものはそれほど多くありません。
それでも、来た人が買ってくれる割合は悪くない。
だとすると、
たくさんの人を集めることより、
本当に探している人が来たときに、ちゃんと商品をプレゼンできているか
のほうが、今の私のショップでは重要なのかもしれません。
もちろん、まだ仮説です。
でも、2年間やってきて、そういう見方をするようになりました。
先日、4日間で2件の注文が入りました。
久しぶりの注文だったので、ものすごく嬉しかった。
「よかった」
というのが、まず最初の感情でした。
夏は動きが鈍い感覚もあったので、なおさらです。
同時に、
何度も何度もモックアップをつくり直してきたことが、少し報われた感じもありました。
商品そのものを変えなくても、見せ方は変えられる。
そして見せ方を変えるためには、何度も試すしかない。
その積み重ねが、少しずつ形になってきたのだと思います。
だから、EC商品ページの診断を始めました
こうした経験から、最近ココナラとランサーズで、EC商品ページの見せ方を診断するサービスを始めました。
2年前には、まさか自分がそんなサービスを出すとは思っていませんでした。
ただ、Etsyを運用する中で、本当にたくさん試しました。
モックアップを変える。
タイトルを変える。
商品説明を変える。
タグを変える。
商品カテゴリーを広げる。
価格を考える。
広告を出す。
広告を止める。
他のショップを見る。
売れている店を見る。
売れていない店を見る。
そうしているうちに、
「ああ、ここがもったいない」
というところが、以前よりずっと見えるようになりました。
売れているショップは、やっぱりよく考えています。
逆に、商品自体は悪くないのに、
「見せ方だけでもっと変わるのにな」
と思うショップもあります。
私が今回のサービスでお手伝いしたいのは、どちらかというと後者です。
すでに世界観が完成していて、商品ページも非常に洗練されている人ではありません。
「どう見せればいいのか、そもそも分からない」
という人。
昔の私みたいな人です。
私自身、アパレルで店長になった頃から、最初からVMDが分かっていたわけではありません。
売り場を見て、
直して、
また見て、
先輩やお客様の反応を見て。
そうしているうちに、
「店って、こうやって見えるんだ」
という感覚が少しずつ育っていきました。
見せ方は、センスだけの話ではありません。
見る場所が分かるようになると、少しずつ感覚も変わります。
Etsyを2年続けてきて、昔アパレルで覚えたその感覚が、意外なところで戻ってきました。
AIで画像がつくれる。
文章もつくれる。
商品も以前より簡単に出せる。
だからこそ、最後に残るのは、
何を見せるか。
誰に見せるか。
どう見せるか。
なのかもしれません。
最近は、そんなことを考えながら、また商品ページをつくっています。