第一部|祈りの空気 第一話

第一部|祈りの空気 第一話

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第一部|祈りの空気 
第一話|大御神様、今日もありがとうございます

「大御神様、お父様、お母様、今日も美味しいご飯をありがとうございます。いただきます。」と毎日毎日食事の度に唱えていると、「いただきます」の意味は理解できなくても、体が何かを覚えた。
そんな私は、「大御神様」が誰のことなのかも知らずに、何を於いても真っ先に感謝する対象として、心の深いところに染み渡らせた。
そして、この祈りは唱えられることがなくなった今でも、食事の時に簡単になった「いただきます」と共にある。

私が通っていた幼稚園は、伊勢神宮の外宮にくっ付いて建っていた。そしてお散歩コースは外宮の中だった。貯木場の門は、幼稚園の前にあって、そこからいつも歩き始めた。貯木場の池に浮いている丸太を因幡の白兎みたいにポンポンっと軽快に飛んで向こう側まで行ってみたいなっていっつも思ってた。
そこの幼稚園では、いつも神様が中心にあった。講堂みたいなお部屋には立派な神棚があって、年長さんには神棚のお仕事の当番があって、いつかその仕事をする日を心待ちに憧れの眼差しで見つめていた。
そして、お弁当の時間には、「いただきます」の代わりに、「大御神様、お父様、お母様、今日も美味しいご飯をありがとうございます。いただきます。」と手を合わせてみんなで唱えた。

大御神様のお庭を歩いて、大御神様にありがとうと言って、そのあとは何もかも忘れたように走り回る。
私にとって祈ることは、特別なことではなかったし、祈っているとも思ってなかった。それは、ご飯を食べることや、外で遊ぶことと同じように、そこにあって、それらと何も変わらなかった。
だから私は、「大御神様」が誰なのかを知ろうとも思わなかったし、知らなくてもよかったんだと思う。

それでも、あの言葉だけは忘れなかったのは、なんでなんだろうと思う。

天羽 詞鏡
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