インターネットを利用していると、「VPN」という言葉を見かけることがあります。
特に、海外からWebサイトにアクセスするときや、フリーWi-Fiを利用するとき、会社のネットワークに外部から接続するときなどによく使われます。
ただ、VPNという名前は知っていても、
「VPNを使うと何が変わるのか」
「本当に安全になるのか」
「海外からのアクセスとして判定されることはあるのか」
と疑問に思う人も多いのではないでしょうか。
この記事では、VPNの基本的な仕組みやメリット、利用時の注意点について、できるだけわかりやすく解説します。
VPNとは
VPNは、Virtual Private Networkの略です。
日本語では「仮想専用ネットワーク」と呼ばれます。
簡単に説明すると、インターネット上に暗号化された専用の通信経路を作り、安全に通信するための仕組みです。
通常、インターネットを利用すると、パソコンやスマートフォンからWebサイトまで直接通信します。
VPNを利用した場合は、いったんVPNサーバーを経由してから、目的のWebサイトにアクセスします。
通信の流れは、次のようなイメージです。
通常の通信
利用者 → Webサイト
VPNを利用した通信
利用者 → VPNサーバー → Webサイト
このとき、利用者とVPNサーバーの間の通信が暗号化されます。
そのため、第三者から通信内容を盗み見られるリスクを減らすことができます。
VPNを使うとIPアドレスが変わる
VPNを利用すると、アクセス先のWebサイトには、利用者自身のIPアドレスではなく、VPNサーバーのIPアドレスが表示されます。
IPアドレスとは、インターネット上の住所のようなものです。
Webサイト側はIPアドレスをもとに、ある程度のアクセス元の国や地域を判定しています。
たとえば、日本にいる人がアメリカのVPNサーバーへ接続した場合、Webサイト側からはアメリカからアクセスしているように見えることがあります。
反対に、海外にいる人が日本のVPNサーバーへ接続すると、日本からアクセスしているように見える場合があります。
ただし、必ずVPNサーバーの設定どおりに判定されるとは限りません。
Webサイト側はIPアドレス以外にも、さまざまな情報を使ってアクセス元を判定している可能性があります。
VPNを利用する主なメリット
通信内容を暗号化できる
VPNの大きなメリットは、通信内容を暗号化できることです。
特に、カフェやホテル、空港などのフリーWi-Fiを利用するときに役立ちます。
フリーWi-Fiは便利ですが、管理状態によっては通信を盗み見られたり、不正なアクセスポイントに接続してしまったりするリスクがあります。
VPNを利用することで、通信内容を直接見られる危険性を軽減できます。
ただし、VPNを使えばすべての危険を防げるわけではありません。
不審なサイトを開いたり、ウイルスが含まれたファイルをダウンロードしたりする危険性までは防げません。
外出先から社内ネットワークに接続できる
企業では、外出先や自宅から社内システムに接続するためにVPNが使われることがあります。
社内のファイルサーバーや管理システムを、インターネット上にそのまま公開するのは危険です。
VPNを使って認証された利用者だけが接続できるようにすることで、安全性を高められます。
リモートワークが広がったことで、VPNを利用する企業も増えました。
IPアドレスを切り替えられる
VPNサーバーを経由すると、アクセス先にはVPNサーバーのIPアドレスが表示されます。
そのため、自分が利用している回線のIPアドレスを直接Webサイト側に見せずにアクセスできます。
国や地域ごとにVPNサーバーを選べるサービスもあります。
ただし、地域制限を回避する目的でVPNを利用すると、サービスの利用規約に違反する可能性があります。
利用する前に、対象サービスの規約を確認する必要があります。
VPNを使っていても海外アクセスと判定されることはある
VPNを利用していても、Webサイト側から海外アクセスと判定されることはあります。
主な原因として、次のようなものが考えられます。
接続しているVPNサーバーが海外にある
最もわかりやすい原因です。
VPNサーバーが海外に設置されている場合、Webサイト側には海外のIPアドレスとして認識されます。
VPNアプリで「自動接続」や「最速のサーバー」を選択していると、意図せず海外のサーバーへ接続されることもあります。
日本からのアクセスとして見せたい場合は、日本国内のVPNサーバーを明示的に選ぶ必要があります。
VPNのIPアドレス情報が正しく登録されていない
Webサイトは、IPアドレスの位置情報データベースを使ってアクセス元を判定しています。
しかし、このデータベースが常に正確とは限りません。
日本国内のVPNサーバーを利用していても、データベース上では海外のIPアドレスとして登録されている場合があります。
また、VPN事業者が新しく取得したIPアドレスでは、位置情報の更新が追いついていないこともあります。
ブラウザや端末の情報から判定されている
Webサイトによっては、IPアドレスだけでなく、次のような情報も参考にしている可能性があります。
ブラウザの言語設定
端末のタイムゾーン
GPSによる位置情報
Cookieに保存された情報
過去のログイン履歴
SIMカードや通信事業者の情報
そのため、日本のVPNサーバーへ接続していても、別の情報から海外にいると判断されることがあります。
VPNの接続が一時的に切れている
VPNは、通信状況によって一時的に切断されることがあります。
接続が切れた瞬間にWebサイトへアクセスすると、本来のIPアドレスが表示される可能性があります。
VPNサービスによっては、「キルスイッチ」という機能があります。
キルスイッチは、VPN接続が切れたときにインターネット通信自体を停止する機能です。
本来のIPアドレスが漏れることを防ぎたい場合は、キルスイッチを有効にしておくと安心です。
VPNを利用する際の注意点
通信速度が遅くなることがある
VPNを利用すると、通常よりも通信経路が長くなります。
さらに、通信の暗号化と復号処理も行われます。
そのため、通信速度が低下することがあります。
特に、物理的に遠い国のVPNサーバーへ接続すると、表示速度が遅くなりやすいです。
速度を重視する場合は、現在地に近いVPNサーバーを選ぶとよいでしょう。
一部のWebサイトにアクセスできないことがある
Webサイトによっては、VPNからのアクセスを制限している場合があります。
VPNのIPアドレスは、多くの利用者で共有されることがあります。
そのIPアドレスから不正アクセスや大量アクセスが行われると、Webサイト側でブロックされる可能性があります。
その結果、
このサイトにアクセスできません
アクセスが拒否されました
不審なアクセスとして検出されました
CAPTCHA認証が何度も表示される
といった状態になることがあります。
この場合は、VPNを一時的に切るか、別のVPNサーバーへ切り替えることで改善する可能性があります。
無料VPNにはリスクがある
無料で利用できるVPNサービスもありますが、安易に利用するのはおすすめできません。
VPN事業者は、利用者の通信を中継する立場にあります。
運営元が信頼できない場合、通信履歴を収集されたり、広告目的でデータを利用されたりする可能性があります。
無料VPNの中には、通信速度やデータ容量に大きな制限があるものもあります。
VPNを選ぶときは、料金だけでなく、運営会社やプライバシーポリシー、通信ログの取り扱いを確認することが重要です。
VPNを使えば完全に匿名になるわけではない
VPNを利用するとIPアドレスは隠せますが、完全に匿名になるわけではありません。
ログイン中のGoogleアカウントやSNSアカウント、Cookie、ブラウザの識別情報などから、同じ利用者であることを判別される可能性があります。
VPNはあくまで、通信経路を暗号化し、接続元のIPアドレスをVPNサーバーのものに置き換える仕組みです。
すべての個人情報や行動履歴を隠すものではありません。
VPNはどのような人に必要なのか
VPNは、次のような場面で利用する価値があります。
フリーWi-Fiを頻繁に利用する人
海外出張や海外旅行が多い人
リモートワークで社内ネットワークへ接続する人
外部にIPアドレスを直接見せたくない人
Webサイトの海外表示や地域ごとの表示を確認したい人
海外から日本のWebサイトへアクセスする必要がある人
一方、自宅の信頼できるWi-Fiだけを利用し、一般的なWebサイトを閲覧する程度であれば、必ずしもVPNが必要とは限りません。
現在は多くのWebサイトがHTTPSに対応しているため、ブラウザとWebサイト間の通信自体は暗号化されています。
VPNを契約する前に、自分が何を目的として利用するのかを明確にすることが重要です。
まとめ
VPNとは、インターネット上に暗号化された通信経路を作り、VPNサーバーを経由してWebサイトへアクセスする仕組みです。
VPNを利用することで、通信内容を保護したり、接続元のIPアドレスを変更したりできます。
一方で、VPNを使っていても、必ず希望する国からのアクセスとして判定されるとは限りません。
VPNサーバーの所在地やIPアドレスの登録情報、ブラウザの言語設定、端末の位置情報などによって、海外アクセスと判定される場合があります。
また、VPNは利用するだけですべての通信が安全になったり、完全に匿名になったりするものではありません。
VPNの仕組みと限界を理解したうえで、目的に合ったサービスを選ぶことが大切です。