仕事が増えているのに、なぜか納期直前になると一人の担当者へ作業が集中する。少人数の会社では、こうした仕事の偏りが見えにくいことがあります。
予定表では空いているように見えても、確認待ち、修正対応、細かな問い合わせが重なれば、新しい仕事へ使える時間は減っています。
2026年版の中小企業白書では、労働供給の制約が強まる中で、現状維持ではなく、生産性を高める取り組みが重要だと示されています。
AIは、誰が忙しいかを感覚で評価するためではなく、案件、期限、予定工数、実績工数を整理し、確認すべき偏りを早めに見つけるために使えます。
【最初から勤務時間の100%を埋めない】
一日8時間勤務だからといって、8時間すべてを案件作業へ割り当てることはできません。
社内連絡、朝礼、顧客からの問い合わせ、記録、突発対応などにも時間が必要です。予定を詰め込みすぎると、小さな修正一つで全体が遅れます。
まず、担当者ごとに実際に案件へ使える時間を決めます。会社の働き方に合わせ、余白を含めた現実的な数字にすることが大切です。
【1.残っている作業時間】
案件ごとに、完了まであと何時間必要かを記録します。
・作業全体の予定時間
・すでに使った時間
・残っている作業時間
・追加作業の有無
・見積範囲内かどうか
進捗率だけでは、「90%完了だが最後の確認に10時間必要」という状態を見落とすことがあります。
AIには、日報や作業記録から残り時間の候補を整理させます。ただし、完成までの時間は担当者が確認し、AIの推測だけで確定しません。
【2.期限までの稼働日数】
次に、納期まで何日あるかを確認します。
単純な日数ではなく、休日、出張、会議、別案件の予定を除いた「作業できる日数」で考えます。
納期まで10日あっても、実際に作業できる日が3日なら余裕はありません。顧客確認や素材待ちがある仕事は、回答を受けてから必要になる時間も残します。
AIには、期限が近い順だけでなく、「残作業時間に対して稼働日数が少ない案件」を抽出させます。
【3.担当者ごとの負荷率】
担当者の負荷率は、一定期間に割り当てた作業時間を、案件へ使える時間で割って確認します。
たとえば、今週案件へ使える時間が25時間で、割り当て済みの作業が30時間なら、負荷率は120%です。
100%を超えていても、本人の努力で何とかなると考えてはいけません。仕事の順番を変える、別の担当者へ移す、顧客へ日程を相談するなどの判断が必要です。
反対に、負荷率が低い人へ単純に仕事を移せるとは限りません。必要な技術、顧客との関係、承認権限も確認します。
【4.確認待ちの日数】
作業していない時間が、すべて担当者の遅れとは限りません。
・顧客からの資料待ち
・社内承認待ち
・見積の回答待ち
・外部業者の納品待ち
・担当者からの質問への回答待ち
こうした待ち時間を分けて記録します。
AIには、更新がない案件を一覧にし、「誰の何待ちか」「最後に連絡した日」「次に確認する日」を整理させます。
待ちの理由を残さなければ、担当者が抱えている案件として数え続けられ、実際の負荷を見誤ります。
【AIへ依頼する例】
四つの数字を揃えたら、次のように依頼できます。
「案件ごとに、残作業時間、期限までの稼働日数、担当者の負荷率、確認待ちの日数を整理してください。負荷率が高い担当者、期限内の完了が難しい可能性がある案件、3営業日以上動いていない案件を分けてください。理由が分からない場合は推測せず『要確認』と記載してください」
AIが出した警告は、担当者を評価する材料ではなく、仕事の割り振りを相談するきっかけとして使います。
【毎週確認する順番】
週に一度、次の順で確認します。
1.今週期限を迎える案件
2.負荷率が100%を超える担当者
3.確認待ちが続いている案件
4.追加作業で残時間が増えた案件
すべての案件を長時間会議で読み上げる必要はありません。AIに例外だけを抽出させ、人は優先順位と対応を決めます。
対応を決めたら、「誰が」「いつまでに」「何をするか」を案件へ戻します。報告書を作って終わりにしないことが重要です。
【注意したいこと】
予定工数や負荷率は、人の能力や努力を断定する数字ではありません。難しい案件、教育中の作業、顧客都合の変更など、数字だけでは分からない事情があります。
AIの結果を人事評価へ直接使わず、担当者へ状況を確認してください。
また、顧客名、契約内容、社員情報を外部のAIへ入力する場合は、保存設定、閲覧権限、社内ルールを確認します。最初は案件名を番号へ置き換えたデータで試すと安心です。
【今日からできる小さな一歩】
現在進行中の案件を三つ選び、「残っている作業時間」と「期限までに作業できる日数」を書いてみてください。
必要時間の方が大きい案件があれば、担当者が頑張る前に、作業の移動や納期の相談を始められます。
案件ごとの予定工数や担当者の負荷を見える形へ整理したい方には、公開中の「小規模な社内システムの仕様を整理します」で、自社に必要な管理項目と確認手順を一緒に設計しています。