大雨や地震が起きたとき、会社では安否確認、設備の点検、顧客への連絡、データの保全などを同時に進める必要があります。
平常時は分かっているつもりでも、緊急時には情報がチャット、電話、紙の名簿、担当者の記憶へ分かれ、「何を確認済みか」が見えにくくなります。
2026年5月から、気象庁は大雨、河川氾濫、土砂災害、高潮に関する防災気象情報を5段階の警戒レベルに対応させました。情報を見た人が、とるべき行動を判断しやすくするための変更です。
中小企業でも、AIを「避難を決める人」の代わりにするのではなく、必要な情報を集め、未確認の項目を見つける総務担当として使えます。
【AIへ渡す前に確認表を作る】
災害が起きてからAIへ自由に質問しても、会社固有の連絡先や設備、優先業務が整理されていなければ、一般的な回答しか返せません。
平常時に、次の5項目を一枚の確認表へまとめます。
・社員の安全
・建物と設備
・通信と電源
・業務データ
・顧客と取引先への連絡
個人の電話番号などは必要な人だけが見られる場所に保存し、AIへ渡す情報も必要最小限にします。
【1.社員の安全】
最初に確認するのは、人の安全です。
・出勤中か、在宅か、移動中か
・本人と家族の安全に問題がないか
・会社へ移動できる状態か
・支援が必要な人がいないか
・安否が未確認の人は誰か
AIには回答を一覧へ整理し、未回答の人を示してもらいます。ただし、避難するか、出勤するかの判断は、公的な防災情報と会社の責任者が行います。
安否確認の文章は短くし、「安全」「支援が必要」「返信できない」のように回答方法を決めておくと集計しやすくなります。
【2.建物と設備】
次に、事務所や店舗、工場の状態を確認します。
・建物へ安全に入れるか
・浸水、破損、火災の危険がないか
・仕事に必要な機械を使えるか
・車両や在庫に被害がないか
・立入禁止にすべき場所がないか
写真をAIへ渡しても、構造上の安全を正確に判断できるとは限りません。危険が疑われる場所へ確認のために入らず、消防、自治体、専門業者などの指示に従います。
AIは、現場から届いた報告を「使用可能」「停止」「未確認」に分ける用途に限定します。
【3.通信と電源】
業務を続けられるかは、電気と通信の状態に左右されます。
・停電していないか
・インターネットへ接続できるか
・会社の電話を受けられるか
・社員が連絡に使う手段は何か
・予備電源や充電手段が使えるか
普段使うチャットが利用できない場合に備え、電話、SMS、別の連絡手段など、第二候補を決めておきます。
AIには「連絡が取れない人」と「連絡手段そのものが使えない地域」を分けて整理させます。
【4.業務データ】
中小企業庁のBCP指針では、中核事業に必要な情報の複製を作り、同じ災害で被災しない場所へ保存する重要性が示されています。
確認する項目は次のとおりです。
・顧客や案件の情報を開けるか
・見積書や請求書を確認できるか
・直近のバックアップ日時はいつか
・別の場所から復元できるか
・復元を確認する担当者は誰か
バックアップが存在しても、復元できなければ業務には使えません。平常時にテスト用データを戻し、復元手順と必要時間を確認します。
AIへパスワード、認証コード、秘密鍵を入力してはいけません。
【5.顧客と取引先への連絡】
社員と設備の状況が分かったら、顧客や取引先へ伝える内容を整理します。
・営業を続けるか休止するか
・予定どおり納品できるか
・問い合わせを受けられるか
・再開見込みをいつ更新するか
・どの媒体で案内するか
AIには、確認済みの事実だけを使って案内文の下書きを作らせます。
「本日中に復旧します」など、確認できない見込みを断定しないよう指示します。WebサイトやSNSへの公開、顧客への送信は、責任者が内容を確認してから行います。
【AIへの依頼文の例】
確認情報が集まったら、次のように依頼できます。
「以下の災害確認情報を、社員の安全、建物と設備、通信と電源、業務データ、顧客連絡の5項目へ整理してください。確認済み、問題あり、未確認を分け、推測で補わないでください。最後に、次に誰が何を確認するかを一覧にしてください」
AIの役割は、危険を判断することではありません。情報の重複、未確認、担当者の不明を見つけ、人が次の行動を決めやすくすることです。
【平常時に一度試す】
災害時に初めて使う仕組みは、想定どおり動かない場合があります。
架空の状況で、確認表への入力、AIによる整理、責任者への報告までを一度試します。古い連絡先、見られないファイル、担当者が決まっていない項目が見つかったら、その場で更新します。
【今日からできる小さな一歩】
社員の安全、設備、通信、データ、顧客連絡の5行を表へ作り、それぞれの確認担当者を一人ずつ書いてみてください。
担当者が決まっていない項目があれば、そこから災害時の業務整理を始められます。
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