「売上が伸びた理由を知りたい」「今月どこに時間がかかっているか見たい」。こうした質問に、AIが社内データを使って答える仕組みが増えています。
2026年9月10日、OpenAIは、許可された社内データを調べ、分析やダッシュボード作成を支援する新しい機能を発表しました。技術は便利になっていますが、AIにつなぐ前に欠かせない作業があります。それは、会社の中で「数字の意味」を揃えることです。
同じ「売上」でも、受注した金額、納品した金額、請求した金額、入金された金額では意味が違います。定義が曖昧なままでは、AIが計算できても経営判断に使える答えにはなりません。
【1.数字の名前と計算方法を揃える】
最初に、よく見る数字を5つほど選びます。売上、粗利、案件数、問い合わせ数、作業時間などです。
それぞれについて、次の3点を一行で決めます。
・何を数えるか
・いつの時点で計上するか
・何を除外するか
たとえば「月間売上」を請求書発行額とするなら、見積金額や未請求の受注額は含めません。税込か税抜かも揃えます。
部署ごとに別の計算方法を使っている場合は、どちらが正しいかを急いで決めるより、まず違いを見えるようにすることが大切です。
【2.元になるデータを一つ決める】
同じ顧客名や案件金額が、Excel、請求システム、営業管理表に重複していることがあります。数字が違うとき、AIはどれを正しい情報として扱うべきか判断できません。
項目ごとに「この情報はここを見る」という元データを決めます。
・請求金額は請求書一覧
・入金状況は会計データ
・案件の進捗は案件管理表
・作業時間は日報
すべてを一つのシステムへ移す必要はありません。最初は、参照先を一枚の表にまとめるだけでも十分です。
【3.更新日と担当者を残す】
AIの分析結果が合わない原因は、古いデータが混ざっていることもあります。
表には、最終更新日と更新担当者の列を追加します。「誰が悪いか」を探すためではなく、確認先を明確にするためです。
毎日更新する数字と、月末に確定する数字も分けます。速報値と確定値が混在しないよう、状態を表示しておくと安心です。
【4.見られる範囲を必要最小限にする】
AIと社内データをつなぐときは、便利さだけでなく権限を確認します。
営業担当が売上状況を見るために、給与や人事評価まで参照できる必要はありません。部署や役割ごとに、閲覧できる表、行、列を必要な範囲へ絞ります。
個人情報や契約情報を含む場合は、利用するサービスの保存設定や管理機能を確認し、最初は匿名化したテストデータで試してください。
【AIへ最初に聞く質問】
準備ができたら、いきなり複雑な予測をさせるのではなく、確認しやすい質問から始めます。
・前月と比べて変化が大きい数字はどれか
・未入力や重複している行はあるか
・集計結果と元データの合計は一致するか
・結論に使ったデータと計算方法は何か
AIには、答えだけでなく根拠にした項目と計算方法も示してもらいます。最後は担当者が元データと照合します。
【今日からできる小さな一歩】
まず、毎月の会議で使う数字を一つ選び、紙や表に次の4行を書いてみてください。
・数字の名前
・計算方法
・元データ
・更新担当者
この4行が決まると、AIを導入する前でも集計のずれを減らせます。AI分析は、整理されたデータをさらに活用する段階で力を発揮します。
自社の数字や業務データをAIで活用できる形へ整理したい方には、公開中の「中小企業のAI顧問として1ヶ月伴走します」で、対象業務の選定から運用ルールづくりまで一緒に進めています。