(1)問題
次の文章を読んで、要旨を一〇〇字以内、あなたの意見を四〇〇字以内で書きなさい。
① もう三十年近く前ですが、『西部警察』という刑事ドラマがありました。石原裕次郎をはじめ人気スターが大勢出ていましたし、最近もリバイバルで続編やコマーシャルが放映されていましたので、ご存じの方も多いでしょう。
② 私も当時このドラマが好きでよく見ていましたが、何度か視聴しているうちに、番組が始まって五分も経てば、だれが犯人で、だれが味方なのか、すぐにわかるようになってきた。
③ その判断材料となったのは、登場人物が運転していた「車」です。
④ 番組のスポンサーに某自動車メーカーがついていて、そのメーカーのものではない車に乗っている人物は絶対に悪者で、スポンサーの車に乗っていたら絶対によい人物だと決まっていたのです。
⑤ この番組を見つづけている視聴者は、知らず知らずのうちに「このメーカーの車に乗っている人はよい人物」と刷り込まれることになっただろうと思います。
⑥ これと同様に、最近のテレビ業界では「プロダクト・プレイスメント」と呼ばれる広告手法がはやっています。『西部警察』の車のように、番組内でさりげなくスポンサーの商品を映し出し、視聴者には宣伝広告だと気づかせずに商品の性能や特徴をアピールするというものです。
⑦ 最近、テレビ番組をハードディスクレコーダーに録画して、早送りしながら番組を見る人がふえてきました。当然のことながら、番組と番組のあいだのコマーシャルがスキップされることになります。
⑧ スポンサーにとっては、高額な費用をかけて制作したコマーシャルが見られないわけですから、たまったものではありません。そのためプロダクト・プレイスメントのほうが従来のCMよりも効率がよく、確実に商品の情報を消費者に伝えられると認識され、どんどんとふえる傾向にあるのです。
⑨ しかし、この手法には危険な側面があります。見る人にコマーシャルであるとはっきりと明示せずに一定の価値観を埋め込んでいく広告の手法は、まぎれもなく「洗脳」と同一原理に則った行為だからです。
⑩ おそらく番組の制作者もスポンサーもそこまで意図してはいないと思いますが、脳科学的な観点から考えれば、プロダクト・プレイスメントという広告手法は「洗脳そのもの」といっても過言ではないでしょう。
⑪ 現代の日本人は、受け手も送り手も気づいていない、こうした「テレビによる洗脳」に子どものころからずっとさらされつづけています。
⑫ CMに映し出される魅力的な商品、芸能人たちが着ている華麗なフアツション、番組に出てくる著名人が住んでいる高級マンション、有名店のシェフが調理する豪勢な料理……。毎日、何時間にもわたってテレビはそうしたものを映し出し、「こういうモノを手に入れましょう」「こういう生活をしましょう」と、視聴者の欲望をかきたてようとしています。
⑬ よく考えてみてください。
⑭ はたしてそれらの商品は、ほんとうにあなた自身が欲しいと思っているものですか?(苫米地英人『テレビは見てはいけない』による)
(2)解答例
要旨
プロダクト・プレイスメントを用いたテレビ広告がふえる傾向にあるが、これは洗脳と同一の手法だから危険である。日本人は子どもの頃から洗脳にさらされ続けている。商品は自身が欲しているものか考える必要がある。(100字)
意見
CMには芸能人やモデルなどのタレントを起用している。そのタレントの好感度を商品に重ね合わせることで、視聴者は初めその商品自体に興味がなくてもつい買ってしまう。その商品にまつわりついたイメージや物語に惹かれて視聴者は消費行動に移る。
テレビの洗脳とは、このようなイメージを人々に喚起させ、物語の世界に引き込むことでモノを売る手法である。現代の消費社会にあっては、あらゆるモノは市場に溢れ、家庭には必要なモノはほとんど揃っている。こうしたなか、売り手は人々の容姿や人間関係の欠落感を煽って、これを埋めさせるために洗脳する。これを買えば、あなたの精神的な餓えを補うことができる、というように。
欠落感は誰しも少なからず持っている。洗脳から免れることは難しい。商品を買う前に少し時間を置いて、「その商品は本当にいま必要か」「別の物で代用できるのではないか」と自分に問うてみることが必要となる。(399字)
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