「ここの表現だけ少し直してほしいんですが」
「それは追加修正になるので、3万円追加です」
ホームページを公開した直後、こんなやり取りになった経験はありませんか。「これくらいなら含まれているだろう」と思っていた作業が、いざ追加請求されて驚いた、という声は本当に多いです。
私のもとにも、「修正を依頼したら毎回追加料金を請求され、結果的に当初予算の1.5倍になってしまった」というご相談が定期的に届きます。そしてそのほぼすべてが、契約前に「修正」の定義をすり合わせていなかったことから生じています。
この記事では、現役のWeb制作者として、「修正は別途料金」と言われてモヤモヤした経験を取り除くために、契約前に確認しておくべき5つのポイントを解説します。具体的な質問例と、見積書・契約書に明記させるべき文言まで含めて、そのまま使える形でまとめています。
なぜ「修正は別途料金」トラブルが後を絶たないのか
原因はただ一つ。「修正」という言葉の定義が、依頼者と制作者で全く違うからです。
依頼者から見れば、「修正」とは「サイトをより良くするための調整」です。文字を少し変える、画像を差し替える、色を調整する——全部「修正」と認識されています。
一方、制作者から見れば、「修正」の範囲はわずかで、それ以外はすべて「追加作業」です。とくに以下はグレーゾーンになりやすい項目です。
- 文章の差し替えと、文章の追加は別もの
- 画像の差し替えと、レイアウトごとの変更は別もの
- 色の微調整と、デザインテイストの変更は別もの
- 誘導動線の調整と、新しいボタンの追加は別もの
この意識ギャップを埋めるのは、契約後ではとても難しいです。契約前に、同じ言葉を同じ意味で使える状態を作ることが、トラブル予防の趣旨です。
契約前に確認すべき5項目
1. 「修正」と「追加作業」の境界線
最も重要で、最も見落とされる項目です。
その作業は「修正」か「追加」か——この判断基準を契約前に文書で残すことが、すべての出発点になります。
聞くべき質問例:
- このサイトで「修正」とされるのは、具体的にどんな作業ですか?
- 逆に、どんな作業は「追加」としてカウントされますか?
- グレーゾーンな例を3つくらい教えていただけますか?
この3つを明確に説明できる制作者は、誠実さの点で信頼できます。逆に「これくらいはたいてい含まれています」とあいまいに答えるなら、表を作って明文化させる交渉をしましょう。
見積書・契約書に明記させるべき文言例:
以下は修正範囲に含まれる:
- 既存テキストの言い回し・文言修正
- 既存画像の同サイズでの差し替え
- フォントサイズ・色の軽微な調整
以下は追加作業とする:
- セクションの追加・削除・順番入れ替え
- 新規画像の作成・画像サイズの変更
- タイトル・見出しのデザイン表現の変更
ここまで明文化しておけば、「それは修正です」「いや、追加作業です」の水掛け論は起きません。
2. 修正回数の上限と「1回」の定義
「デザイン修正は2回まで無料」——見積書でよく見る表現です。しかし、**「1回」とは何を指すのか**を明確にしておかないと、ここもトラブルの種になります。
聞くべき質問例:
- 修正依頼をメールでまとめて送った場合、内容が複数件あっても「1回」ですか?
- 1回提出した後に、追加で修正を思いついたら、それは別カウントになりますか?
- 3回目以降の修正単価はいくらですか?
済んだ作業の「巻き戻し」を追加で請求されるケースもあるため、ここも事前に確認しておきたい点です。
見積書に明記させるべき文言例:
・修正・チェックは各工程(デザイン・コーディング)でそれぞれ2回までとする
・1回の修正とは、依頼者から提示された内容をまとめて反映した状態を指す
・レビュー提出後の追加修正依頼は、次回の修正カウントとする
・3回目以降の修正は、1回あたり××,○○円(税込)とする
3. 修正を依頼できる「期限」
サイト公開後、いつまで修正を無料で依頼できるのか。ここも見落としがちです。
多くの見積書には「公開後1週間以内は無料修正」「検収期間内のみ対応」などと記されています。信じられないスピードで期間が終わり、その後に何か修正を依頼しようとしたら「公開後の修正はすべて有償です」と言われる——これもよくあるパターンです。
聞くべき質問例:
- 公開後、いつまで無料修正を依頼できますか?
- 検収期間と修正期限は同じですか、別ですか?
- 公開後に見つかった不具合(例:スマホでレイアウトが崩れていた等)の修正は、期限外でも無料で対応されますか?
3つ目は特に重要です。「依頼者に起因しない不具合」は、期限を超えても無料で修正されるのが「契約不適合責任」の考え方です。これを契約書に明記してもらえるかどうか、交渉の検証点になります。
4. 公開後の「軽微な修正」の目安
公開後もサイトは生き物です。文字の差し替え、価格表の更新、お知らせの追加——こうした「軽微な修正」は適宜発生します。ここをどう見積るかで、公開後1年間のコストは大きく変わります。
聞くべき質問例:
- 公開後の軽微な修正は、月何回まで、何分以上から請求対象になりますか?
- 保守契約を結んだ場合、その月額に何が含まれますか?
- 保守契約を結ばない場合、スポットで依頼したときの単価はいくらですか?
- 修正を依頼してから反映されるまでの標準リードタイムはどれくらいですか?
見積書に明記させるべき文言例:
・保守プランA(月額××,○○円):軽微な修正月5件まで、平均リードタイム3営業日
・保守契約外のスポット依頼:30分未満××,○○円、30分以上は××,○○円加算
・スポット依頼は受付より××営業日以内に反映予定を応答
「月5,000円で保守します」だけでは不十分です。「何が、どれだけ、どのスピードでやってもらえるのか」を文書で明確にしましょう。
5. 修正の「依頼方法」と「指示の粒度」
見落とされがちだが重要なのが、「どうやって修正を依頼するか」という運用ルールです。ここが曖昧だと、「言った」「言わない」「伝わっていない」というコミュニケーション上のトラブルが頻発します。
聞くべき質問例:
- 修正依頼は、どのツール(メール・チャット・専用シート等)で受付してもらえますか?
- 修正依頼をする際、指示の粒度としてどこまで明確に伝える必要がありますか?
- 「もう少しいい感じに」という抽象的な依頼は受けてもらえますか?
シート・Googleドキュメント、あるいは専用の進捗管理ツールなど、**言った・言わないを防ぐ記録が残るツール**を提案してくれる制作者は、プロジェクト管理の意識が高いと言えます。
「修正は別途料金」と言われがちな典型ケース
参考までに、実際に「含まれていると思っていた」依頼と、制作者から見て「別途作業」と見なされやすい例をいくつかあげます。
- トップのキャッチコピーを「もう少しキャッチーに」と依頼
→ コピーライティングの読み替えとされ、ライティング費として請求されるケース
- 公開直前に「やっぱりロゴを変えたい」と相談
→ デザインの根幹部分の変更として追加費用が発生
- スマホで見たときの表示を「もう少し詰めて」と依頼
→ レスポンシブの再調整とされ、コーディング作業費として請求
- 「ボタンの色を赤から青に」と依頼したら、
→ デザインシステム全体の調整とされ、複数ページ分の作業としてカウント
これらは、制作者の主張が間違っているわけではありません。たしかにそれなりの手間がかかる作業です。**問題は、依頼者が「軽い修正」だと思っていたことと、その追加料金の金額を事前に何も聞いていなかったこと**。このギャップを契約前に埋めておくのが、トラブル予防の要です。
セルフチェックリスト
⬜︎ 見積書に「修正範囲」と「追加作業範囲」が表やリストで区別されている
⬜︎ 修正回数の上限と、「1回」の定義が明文化されている
⬜︎ 3回目以降の修正単価があらかじめ提示されている
⬜︎ 公開後の無料修正期限と、その適用範囲が記載されている
⬜︎ 「依頼者に起因しない不具合」の対応ルールが記載されている
⬜︎ 保守契約の内訳(スコープ・スピード・件数上限)が明記されている
⬜︎ スポット依頼の単価とリードタイムが提示されている
⬜︎ 修正依頼の専用ツール・受付フォーマットが決められている
8項目中、3つ以上「いいえ」があるなら、契約前にその明文化を提案しておくことをお勧めします。
こんなとき、制作者さんも見るところを見ています
逆の視点もお伝えしておきます。制作者側も、依頼者が以下のようなコミュニケーションをとるかを見ています。
- 修正依頼をまとめて送ってくれるか、思いついたときに都度バラバラ送ってくるか
- 「もう少しいい感じに」という抽象依頼だけで、具体例を提示してくれないか
- 公開直前になってから、コンセプトを根底から見直したい依頼をしてくるか
つまり、修正トラブルを避けるのは、依頼者と制作者の双方の課題です。契約前の話し合いで、この双方の動き方を整えておけば、プロジェクトは驚くほどスムーズに進みます。
おわりに:「修正表」を作っておくだけで、人間関係もお金も守れる
「修正は別途料金です」と言われてモヤモヤするのは、金額そのものより、「事前に説明がなかった」という不信感です。逆に言えば、同じ追加料金でも、事前にちゃんと説明されていれば、依頼者も納得して支払えます。
この記事で紹介した5つの項目を、見積書・契約書に「修正表」として記載してもらうだけで、プロジェクト中の迷いややり取りのもつれは大幅に減ります。わずかな手間で、双方が安心して進められるプロジェクトになります。
もし「すでに制作会社と契約したが、修正の話がモヤモヤしたままだ」「これから発注するので、修正表の雛型がほしい」という方は、サービスページよりお気軽にご相談ください。
現役のフロントエンドエンジニアとして、依頼者としての見方も、制作者としての見方も、双方の視点で整理してお伝えします。
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