神様のお仕事日誌

神様のお仕事日誌

記事
学び

その願い、届いてはいるけどね?

「あーあ、まただよ、また来たよ」

フカフカの白い雲の上、神様はあぐらをかいて、
手にした巻物から目を離した。

巻物には、地上から届く数多の願い事が、
まるで蛍のように光り輝いている。

しかし、神様の表情は、どこか疲れているように見える。

今日の担当は、日本列島、特に東の某都市エリアだ。
膨大な願いの光の中から、特定の光がひときわ強く瞬いた。

「んー?……ああ、またケンタか」

ケンタは、つい先週、神様がちょっとばかりひいきして、
プレゼンを大成功させてやったばかりのサラリーマンだ。

プレゼン前には、
「神様!どうか、どうかこのプレゼンを
 成功させてください!娘のためにも!」と
それはそれは熱烈に祈っていた。

そのケンタの熱意に心を動かされた神様も
「ふむ、親孝行なやつめ」と、つい力を貸してしまったのだ。

神様、再びケンタの願いを聞く

「で、今回は何だ?」

巻物をくるりと広げると、
ケンタの光が放つ今日の願いが浮かび上がった。

『神様!どうか、どうか宝くじが当たりますように!
 ビッグチャンスをください!娘のためにも!』

神様は思わず、巻物を膝の上に落とした。

「えー、あいつまた神頼みしてるよ。
 この前お願いをかなえてやったばかりだろ」

隣の雲でうたた寝していた、
もう少し若い見習い神様が目を覚ました。

「どうしたんですか、神様。そんなにため息ばかりついて」

「いやね、ケンタだよ、ケンタ。この前プレゼン助けてやったばっかりなのに、今度は宝くじだってさ。しかもまた『娘のためにも!』だって。もうちょっと自分で頑張ろうとしないのかね、人間ってやつは」

見習い神様は、クスクスと笑う。

「でも、それも人間らしいところじゃないですか。
 自分の力だけじゃどうにもならないって感じる時、
 誰かに頼りたくなるんですよ」

「そりゃそうだがねぇ…」神様は腕を組み、考え込む。

「だいたい、宝くじってのは、あれは『夢を買う』って行為そのものに意味があるんだよ。それが当たっちまったら、夢じゃなくなるだろ?
それに、そんなに簡単に大金が手に入ったら、ケンタの努力する楽しみがなくなってしまうじゃないか」

神様は、ケンタの魂が持つ「成長の光」をそっと覗いた。
確かに、プレゼンを成功させて自信をつけたケンタの光は、
以前よりも少し強く輝いている。

神様が見る人間の本質

しかし、今回の宝くじの願いは、その光を大きくするよりも、
むしろ「ラクしたい」という、少しばかり怠惰な影を伴っているようだった。

「よし、決めた!」神様はパン!と手を叩いた。

「今回は、願いを直接叶えるのはやめる。
 代わりに、ちょっとした『気づき』を贈ってやるか

見習い神様は首を傾げた。「気づき、ですか?」

「うむ。ケンタよ、お前はプレゼンで成功を掴んだ。
 その自信と、娘を思う気持ちがあるなら、宝くじなんかに頼らなくても、
 自分の力で『ビッグチャンス』を生み出せるはずだ」

神様は、巻物からケンタの光に向かって、そっと「偶然」の風を吹かせた。
それは、普段ならケンタが通り過ぎてしまうような、
小さな、しかし重要な出会いを運ぶ風だった。

ケンタの日常に吹く変化の兆し

その日、ケンタはいつものように宝くじ売り場に向かっていた。
すると、駅前の広場で、偶然にも以前のプレゼンで
共演した友人にばったり会った。

友人は、ケンタのプレゼンでの活躍を褒め称え、
新しいビジネスのアイデアについて熱く語り始めた。

それは、ケンタがこれまで全く考えていなかった分野だが、
自分の企画力と娘のために頑張る熱意が活かせそうな、
まさに「ビッグチャンス」の匂いがする話だった。

ケンタは、友人の話に引き込まれ、
宝くじ売り場を素通りして、喫茶店へと向かっていった。

変化するケンタの心

雲の上で、神様は満足そうに小さく頷いた。

「ほら見ろ。人間ってのは、自分で道を見つける力が一番なんだ。
 我々の仕事は、ただ願いを叶えるだけじゃない。
『自分の中に答えがある』ってことを、思い出させてやるのが仕事なんだよ」

神様は、また巻物を広げ、次なる願いの光に目を向けた。
今度は、失くしたスマホを探す少年の光だ。

「よし、これにはちょっとばかりヒントをやるか。
 あのソファの下に隠したんだな、まったく…」

神様のお仕事は、今日も続く。願いは常に届いている。
ただ、それをどう料理するかは、
神様とほんの少しのひらめき次第なのだ。
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す