私たちって、付き合ってる、のかな?

私たちって、付き合ってる、のかな?

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コラム
帰り道の空は、
昨日より少しだけ青かった。

凪と悠真は、
並んで歩いている。

会話は、途切れ途切れ。
でも、それで困らない沈黙。

——前は、沈黙が怖かった。

今は、
沈黙の中に、相手がいる。

それだけで、足が進む。

信号待ちで、
二人は立ち止まる。

人の流れに、
一瞬、離れそうになる。

凪は、
無意識に、歩幅をゆるめた。

悠真も、同時に。

二人の影が、
また、同じ長さに並ぶ。

「ね」

凪が、小さく言う。

「私たちって」
「付き合ってる、のかな?」

言った瞬間、
少しだけ後悔する。

名前をつけた途端、
壊れてしまう気がして。

悠真は、驚いた顔をしてから、
すぐに視線を逸らす。

「……どうだろ」

一拍。

「でも」
「一緒に帰って」
「一緒に悩んで」
「一緒に進もうとしてる」

凪は、うなずく。

「それって」

「恋だと思う」

昨日より、
少しだけはっきりした声。

凪の胸が、
静かに鳴る。

「……じゃあ」

言葉を探す。

「急がなくていいよね」

悠真は、歩き出しながら言う。

「うん」
「急がなくていい」

「触れなくても」
「確かめられること、あるし」

その言葉に、
凪は、少しだけ笑う。

横断歩道を渡る。

手は、触れない。
でも、距離は、離れない。

——それで、十分だった。

家の近くで、
別れ道に差しかかる。

「また明日」

「うん、また明日」

それだけの約束。

でも、
凪は知っている。

“また明日”と言える関係は、
簡単じゃない。

振り返ると、
悠真も、少しだけ振り返っていた。

目が合って、
どちらともなく、会釈する。

凪は、胸に手を当てる。

——触れなくても、
——ちゃんと、ここにある。

恋は、
大きな言葉じゃなくて、
小さな確認の積み重ね。

そうやって、
静かに育っていくものなんだと、
凪は思った。
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