ENOMARUAL 第17回:なぜ、無限に出会える時代にあの人が忘れられないのか?〜大帝国自壊と選択のパラドックス〜前編

ENOMARUAL 第17回:なぜ、無限に出会える時代にあの人が忘れられないのか?〜大帝国自壊と選択のパラドックス〜前編

記事
学び
スマホのマッチングアプリを開けば何百人もの異性が無限にスワイプでき、SNSを開けば何万ものフォロワーとつながる。

国境も距離も越えて誰とでも繋がれる現代のグローバル社会は、一見すると「最も自由で豊かな選択肢にあふれた楽園」のように思えます。

しかし、その一方で、どれだけ出会いを重ねても「誰とも深く結びつけない」「人間関係が広がりすぎてエネルギーが完全に枯渇している」という底知れぬ疲弊感や孤独感に襲われていませんか?

この「無限の選択肢があるはずなのに、なぜか心が満たされず、広すぎる世界の中で疲弊していく」という息苦しさは、あなたの意志が弱いからでも、わがままなせいでもありません。

すべては「構造と脳のバグ(システムエラー)」によって引き起こされています。

1.マケドニアの漁夫の利とアレクサンドロス大王
前回のペロポネソス戦争で、アテネとスパルタは互いに国力をすり潰し、ボロボロになって自滅していきました。しかし、歴史の歯車はそこで止まりません。

その消耗戦からわずか150年ほどの間におきたのが、歴史上最もダイナミックなパワーシフト、アレクサンドロス大王による東方遠征とヘレニズム世界の誕生です。

ギリシャの南半分で内戦に明け暮れている間に、北方の田舎町だったマケドニアがメキメキと力をつけました。その若き王アレクサンドロス大王は、父の遺志を継ぎ、かつてギリシャを脅かした超大国・アケメネス朝ペルシャへ逆襲に打って出ます。

紀元前333年の「イッソスの戦い」、同331年の「ガウガメラの戦い」で圧倒的な機動力を武器にペルシャ軍を粉砕。ギリシャからエジプト、そして遠くインダス川にまで至る、空前の大帝国をあっという間に築き上げました。

2.マップの激変と「ポリス(都市国家)」の消滅
この征服劇によって、世界地図は一変しました。それまで人々が暮らしていた「アテネ市民」「スパルタ市民」といった顔の見える小さな共同体(ポリス)は跡形もなく溶け去り、広大な異文化がごちゃ混ぜになった巨大な匿名社会――いわゆる「ヘレニズム世界」が誕生しました。

国境の壁が消え、どこへでも行ける自由が手に入った一方で、人々は自分の拠り所を失い、広大すぎる世界の中でポツンと取り残されるような新しい不安に直面することになりました。

3.巨大帝国の崩壊
地中海からアジアまでを飲み込んだ巨大帝国は、しかし長くは続きませんでした。アレクサンドロス大王がわずか32歳で急死した瞬間、広大な領土を統治するためのシステムやルールがなかった帝国は、一瞬でセレウコス朝シリアやプトレマイオス朝などへとバラバラに分裂し、自壊していきました。

なぜ、これほど圧倒的なカリスマが築いた巨大帝国は、一瞬で崩壊してしまったのでしょうか?

その謎を解く鍵が、私たちの「脳の物理的限界」に隠されています。次回の経済学・脳科学編で、その正体を暴いていきます。

※歴史の雑学:
ギリシャ人にとっての「ポリス(都市国家)」は、単なる行政区画ではありませんでした。アテネ人、スパルタ人としての帰属意識こそが、個人のアイデンティティのすべてであり、究極の安心感(拠り所)でした。

しかし、アレクサンドロスの東方遠征によって、数多のポリスは独立を奪われ、巨大なマケドニア帝国(およびその後のディアドコイ王国)の「地方の一都市」に強制的に格下げされました。
これにより、人々は「自分はどこの何者なのか」というアイデンティティの土台を突然奪われました。

異文化の「ごちゃ混ぜ(るつぼ化)」
アレクサンドロスが帝国を広げたことで、ギリシャ文化とペルシャ、エジプトなどの異文化が強制的にミックスされました(ヘレニズム文化)。
それまで「自分たちのルール(常識)」で成り立っていた狭いコミュニティに、全く言葉や価値観の違う人や情報が流れ込み、「何が正解で、自分はどこを基準に生きればいいのか分からない」というカオス(混沌)が生じました。

「世界市民(コスモポリテス)」という名の孤独
国境の壁が薄れ、商人は遠くペルシャやインド方面まで貿易に行けるようになった一方で、それは「狭くて温かい村社会の保護」が消滅したことの裏返しでもありました。
人々は、守ってくれる小さな共同体から切り離され、広大で冷徹な「帝国・市場」という荒野に、一人の「個人」として放り出されました。

これはまさに現代に置き換えると…
「村社会(会社や地縁・血縁)の縛りが強かった時代から、インターネットとグローバル化によって無限の選択肢と個人主義の時代に放り出された現代人」と全く同じ構造です。
日本だけでなく、移民政策が何をもたらしているのか、これはライブで世界中の問題になっていますよね。


#世界史 #アレクサンドロス大王 #ペロポネソス戦争 #ヘレニズム #構造改革
サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す