ワイ「私は採用の仕事をしています。」
助手「知ってるよ。」
ワイ「特に大学生とのやりとりが多いんですけど。」
助手「ジェネレーションギャップでも感じるの?」
ワイ「まったく感じません。彼らの話題に合わせることができますので。」
助手「そう思ってるのは自分だけかもよ。」
ワイ「そうかもと思う瞬間はあるので、可能な限り最新の情報を知るように努力していますよ。」
助手「この前、電話している姿を見てビックリしたんだけど。」
ワイ「何にビックリしたんですか?」
助手「電話しながらパソコンのキーボード打って何か調べてなかった?」
ワイ「あぁ、それは学生が話してくれたことで分からないことがあったからです。」
助手「そうなの!?なんか調べながら相手の会話に合わせられてたじゃん。」
ワイ「基本は会話と同時進行で調べますから。大体の話には合わせられます。」
助手「よくやるわ。」
ワイ「会話の目的は相手から情報を引き出すことですから。こっちが何も分かってないと会話を広げられないじゃないですか。」
助手「それはそうだね。」
ワイ「だから会話をうまく引き伸ばしつつ、調べる時間を確保しながら会話が断絶しないように最大限の注意を払っています。」
助手「電話のとき映画の話とかもしてたよね。」
ワイ「まったく見たことないタイトルだったので速攻ネットで検索しながら、『その映画の見所は何?』とか『オススメしたいポイントを教えて』と質問を投げつつ、ネットの公式ページや口コミをざっくり頭に入れていきます。」
助手「そうやって話のベクトル合わせてたんだ。」
ワイ「自分が興味のあることや好きなものの話だと、コミュニケーションが苦手な学生も会話が増えるものです。」
助手「それを狙ってるんだね。」
ワイ「なぜなら会話を通して相手を知らなければ、相手の良さ・武器・強みを知ることはできませんから。」
助手「それでうまくいくんだ。」
ワイ「しかし、たまにまったく通用しないタイプの学生もいます。」
助手「そんな時はどうするの?」
ワイ「私がこれまで会得してきた数々の技を繰り出します。」
助手「ほう。」
ワイ「全ての技を繰り出して成功する場合もありますが、打つ手なしの状態になった時はひどく消耗します。」
助手「完敗だね。乾杯してあげよう。」
ワイ「そんな時は自分の力不足を悔やむとともに、その学生の将来を案じてしまいます。」
助手「心を開かないから?」
ワイ「心を閉ざすことは今の立ち位置から動かないことと同じ。いわば成長・発見の機会を失っているように思うのです。」
助手「それは一方的な見方じゃない?」
ワイ「そうかもしれませんが、そのコミュ力不足を補って余りあるほどの才能があるのか?ということです。」
助手「どいうこと?」
ワイ「結局、人間社会で生きていく上で一定のコミュ力は必要となります。それがないなら自分一人の力で生きていけるだけの天才的能力が求められます。」
助手「アナタのコミュ力は比較的高そうだけど、他の能力は並だもんね。」
ワイ「ひどい。」
助手「事実を言ったまでよ。」
ワイ「私もプライベートだと喋りませんからね。黙ってる方が楽なので。」
助手「どうやって切り替えてるのよ?」
ワイ「仕事は仕事と割り切ってるだけですよ。本質と違う自分を演出するのも楽しいもんですよ。」
助手「そうなん?」
ワイ「そのシーン、その相手にとってベストなスタイルは何か?と考えればどんなタイプにもなることはできますよ。」
助手「自分中心で考えるんじゃなくて相手ありきなのね。」
ワイ「その思考がコミュニケーションのあるべき姿でしょうね。」