人間関係が苦しくなると、私たちはつい「誰が悪いのか」を考えます。
「あの人の言い方が悪い」
「自分がもっと我慢すればよかった」
「私の考え方がおかしいのかもしれない」
原因を考えることは必要な場合もあります。
しかし、誰か一人を悪者にしても、心の苦しさが解消されないことがあります。
なぜなら、人間関係の悩みは、どちらか一人だけの問題ではなく、お互いの反応がつながって生まれている場合があるからです。
■苦しい関係には「循環」があります
たとえば、職場で上司の機嫌が悪いとします。
上司の表情が気になり、部下は必要以上に緊張する。
緊張して普段どおりに動けなくなると、上司はさらに細かく注意する。
強く注意されることで、部下はますます萎縮してしまう。
このように、
「強く言われるから萎縮する」
「萎縮しているから、さらに強く言われる」
という苦しい循環が生まれることがあります。
家族や夫婦の間でも同じです。
相手が黙るから、こちらは不安になって強く聞く。
強く聞かれるから、相手はますます黙ってしまう。
このようなときに、どちらか一人だけを変えようとしても、関係はなかなか動きません。
大切なのは、
「誰が悪いのか」ではなく、
「今、二人の間でどのような循環が起きているのか」
を見ることです。
■理解することは、我慢することではありません
相手の背景を理解することは、相手の言動を何でも許すことではありません。
傷つく言葉を受け続けたり、自分の気持ちを押し殺したりする必要もありません。
相手には相手の事情がある。
そして、自分には自分の気持ちがある。
その両方を大切にしながら、必要な境界線を引くことが大切です。
たとえば、
「あなたにも事情があることは分かっています。しかし、その言い方をされると私は苦しくなります」
「今すぐには答えられないので、少し考える時間をください」
「できるところまでは協力しますが、すべてを引き受けることはできません」
このように、相手を責めず、自分も粗末にしない伝え方があります。
しかし、悩みの中にいるときは、自分が本当は何を感じているのか、何を伝えたいのかが分からなくなることもあります。
■話すことで、心の中が整理されます
相談することは、誰かに正しい答えを決めてもらうことではありません。
安心できる相手に話すことで、頭の中に絡まっていた気持ちを、一つずつ整理していくことです。
話しているうちに、
「怒っていたと思っていたけれど、本当は悲しかった」
「仕事を辞めたいのではなく、安心して働きたかった」
「相手を責めたいのではなく、自分の気持ちを分かってほしかった」
そんな本当の思いに気づくことがあります。
自分の気持ちが見えてくると、次にどうしたいのかも少しずつ考えられるようになります。
■「何から話せばよいか分からない」でも大丈夫です
私は理美容専門学校の教員として、多くの学生や保護者と関わってきました。
また、心理カウンセラー・上級心理カウンセラーの資格を取得し、相手を一方的に判断するのではなく、その人の背景や関係の中で起きていることを理解する姿勢を大切にしています。
相談するときに、話をきれいにまとめる必要はありません。
「うまく説明できない」
「自分でも何に悩んでいるのか分からない」
「ただ、少し苦しい」
そのような状態からでも大丈夫です。
誰かを悪者にするためではなく、あなたの気持ちと、今起きている関係を一緒に整理します。
そして、あなたが自分の力で次の一歩を選べるように、小さな糸口を探していきます。
一人で抱え続けることに疲れたときは、誰かと一緒に整理してもいいのです。
話すことは、弱さではありません。
自分の心を大切にするための、一つの選択です。