治療につながるスキンケアを考える

記事
コラム
今回は、治療につながるスキンケアを考える、主に犬のスキンケアの概念に
ついてです。

【目次】
・スキンケアとは?
〜皮膚疾患の治療〜
〜ヒトのアトピー性皮膚炎〜
〜獣医学領域ではどうか?〜
〜保湿成分〜
〜犬の低刺激保湿性シャンプー、皮膚疾患治療への可能性〜
〜感想〜

スキンケアとは?
「健康で美しい肌を保つために肌の手入れをする事、皮膚についた汗やホコリなどの汚れを落として無用な刺激を減らし(清潔のスキンケア)、角質層の油分と水分を補うことによってこれらの刺激に対する防御のある潤い肌を保つこと(乾燥のスキンケア)」
〜皮膚疾患の治療〜
・食事療法:除去食、栄養療法
・理学療法:動物の場合あまり積極的でない
・外科療法
・薬物療法:全身療法、外用療法(人の場合、塗布する薬が処方される)
      動物の場合、薬物療法が主体的になる。
この中に「スキンケア」をどうやって取り入れるかが大事だそうです。少しでも『治療の負担を減らす、予防療法になれるか』がポイント。

〜ヒトのアトピー性皮膚炎〜
人の皮膚疾患として、アトピー性皮膚炎が例に挙げられました。アトピー性皮膚炎とは、増悪と軽快を繰り返す掻痒のある湿疹を主病変とする疾患で、患者の多くは、「アトピー素因」を持つと定義されている。アトピー体質であるということです。しかし、未だに根本因子の発見には至っていないのが現状です。

アトピー性皮膚炎に対して保湿の重要性は今も昔も変わりません。

両親がアトピー素因を持つ赤ちゃんに対して、積極的な保湿をすることでアトピーが予防できる可能性が報告されています。
『ヒトのアトピー性皮膚炎のガイドラインでは保湿は重要な位置づけ』として認識されています。外用保湿剤は、トップレベルのエビデンスレベルとされています。

保湿剤の効果
・低下した角質水分含有量の改善が期待できる。
・皮膚バリア機能の回復維持が期待できる。
〜獣医学領域ではどうか?〜
ヒトとは方法論が違うようです。ヒトと違い、犬の体の表面は毛で覆われているため、「毛のケア=グルーミング」を考える必要があります。毛は皮膚へのバリア機能として働きます。そのため、犬では外用保湿剤としてスポットオン剤やスプレーをよく使用します。

さらに忘れてはいけないのは、シャンプー療法です。シャンプー療法は、比較的簡単に皮膚の表面に薬剤を届けられる事ができるためかなり有用です。治療を考えていく上で、舐性行動(体を舐める事)の回避が重要なため外用保湿剤よりシャンプー療法が好まれます。犬は、何かを塗られる事で非常に気にしてしまうからです。シャンプー剤として、犬の表皮は人に比較して薄く、皮脂が少ないため、低刺激、高保湿性が望ましいとされています。

〜保湿成分〜

・閉鎖性ー皮膚が溜め込んだ水分を逃さないようにする。シャンプーの後に水分が皮膚に残っている時に実施すると効果的。植物性オイル、動物性オイル。
・吸湿性ー皮膚がある程度乾燥した状態でも効果が期待できる。プロピレングリコール、グリセリン、ヘパリン類似物質、セラミドが代表的。
〜犬の低刺激保湿性シャンプー、皮膚疾患治療への可能性〜
◯犬アトピー性皮膚炎:先天性素因を背景とした慢性掻痒性疾患が主症状で、ヒトと違うのは痒みを繰り返す事です。最初に掻爬痕を残し、その後、感染を引き起こします。人は年齢とともに改善する事が多いが、犬の場合は改善する可能性が少ない事が特徴的です。つまり付き合っていく病気です。犬アトピー性皮膚炎のスキンケアは、ガイドラインでは推奨度Cです。ぬるま湯を使った週1回の低刺激シャンプーによる洗浄が望ましいとされています。犬アトピー性皮膚炎の症状が改善しても繰り返さないためにもスキンケアは大事な位置づけになります。

◯多汗症:アポクリン汗腺からの過剰な発汗が主な原因です。犬は通常、汗をかきませんが、脂っぽい汗が背中を中心に認められるようになります。犬の場合、ベタつく汗が毛がべったりとよれてくる見た目です。多汗症自体はよくわかっていないが、若齢時からヨーキーによく認められる。アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの犬でも観察されます。多汗症も痒みが強い病態です。多汗症のスキンケアは頻回(1−2日毎)に低刺激、高保湿性シャンプーを行う事が望ましいとされています。

◯ドライスキン:犬脱毛症(毛周期停止)が多く認められます。皮膚の乾燥、二次的な膿皮症を防ぐために保湿性シャンプーを用いたスキンケアを用います。ダックス、パピヨンなどが代表的。シャンプー前の沐浴(長くて15分)をして低刺激性シャンプーを使用します。シャンプー後、すぐに保湿剤を使うことによって高い保湿効果が得られます。保湿効果により洗浄頻度を調節する。

◯乾性脂漏:ダックス、キャバリア、シュナウザーが多い。若い年齢からフケが出てくる事が特徴的です。週1−2回の洗浄頻度で必要に応じて保湿剤の併用を行います。原則としてドライスキンと同じ治療。鱗屑が多い場合、過剰な角質除去を狙って硫黄・サリチル酸系洗浄剤で洗う事が望ましいとされています。これらのシャンプー剤は脱脂作用が少ないの刺激が少ないとされています。

スキンケアを症状に合わせて実施する事で薬物療法を減らす事が期待できます。

〜感想〜
やはり、診察をしていると乾性脂漏の犬を多く見かけます。大抵の場合、痒みがある程度あり、皮膚に傷がついています。多くは、痒いという主訴で来院されます。スキンケア商品は、多くの製薬会社さんから出ていて成分も様々です。用途に合わせて使っていく事で効果はかなり期待できると思われます。積極的に勧めていきたいですね。
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