『周囲が丸く収まるから医者になった』おおたわ史絵さん──医師を続けながら、語り・書く仕事でも活躍できた理由をチャートから読む

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少し前、YouTube動画で知りました。
おおたわ史絵さんのことです。内科医であり、テレビのコメンテーターとしてもご活躍されている方で、以前からお名前は存じ上げていましたが、実際にその話し方を聞いたのは初めてでした。

動画を観て最初に感じたのは、「言葉の選び方が丁寧だ」ということです。誰かが傷つく言い方をしない。誰かが嫌な気分になる表現をしない。話しながら、常に聞いている人への配慮が言葉の中に織り込まれているのです。これは、意識して毎回できることではありません。習慣というより、ものの考え方そのものが違うのではないかと感じました

そこで気づいたのが、彼女のメタ認知の高さです。

メタ認知とは、簡単にいうと「自分の思考や感情を、もう一段上から観察する力」のことです。「今、自分はこういう状態にある」「この状況で自分はこう感じている」と客観的に把握できる能力です。この力が高い人は、自分の言葉が相手にどう届くかを事前にシミュレーションしながら話すことができます。おおたわさんの言葉の選び方は、その能力の現れではないかと私は考えています。

「自分の希望より、誰かの希望を優先してしまう」


動画の中で、おおたわさんはこんなことを話していました。「自分が医者になったのは、自分が医者になることで周囲が丸く収まるからだった」と。

これを聞いたとき、少し胸が痛くなりました。

医者になりたかった、というよりも、医者になることで周りが平和になるから医者になった。つまり、自分の希望より、誰かの期待や周囲の空気を優先して、人生の大きな選択をした、ということです。自分の願いを後ろに置いてしまう人の語り方だと感じました。

けれど同時に、こうも思いました。それだけでは説明がつかない部分があると。

なぜなら、おおたわさんはその後ずっと医師を続けているからです。もし本当に向いていない職業であれば、どこかで限界が来るはずです。医療の現場は、適性なしに何十年も続けられる場所ではありません。さらに、テレビのコメンテーターとして言葉で伝える仕事をこなし、著作も複数出版されています。医師という一本の道だけでなく、いくつもの仕事を並行して持っている、いわゆる複業の方でもあるのです。

ひとつの仕事を惰性で続けているのではなく、性質の異なる複数の仕事を長く回し続けている。これは、最初の動機がどうであれ、おおたわさんご自身がもともとその役割に向いていたからではないかと、私は考えています。

「なぜその職業を選んだか」という入口の話と、「その職業を自分のものにできたか」という話は、別の話です。

著作を読んで、チャートを見たくなった


興味を持ったので、おおたわさんの著書『母を捨てるということ』を読みました。

壮絶な内容でした。幼少期から続いた、母親による虐待。母親の薬物依存と、それに長く苦しめられてきた日々。そこから逃れるまでの、長い道のり。これほどまでに過酷な幼少期があったのだと知ったとき、正直、言葉を失いました。

そして同時に、ホロスコープを読みたくなりました。

なぜかといえば、西洋占星術において、母親との関係は「月(Moon)」という天体で読むからです。月は、感情・内側の世界・幼少期の環境、そして母親のアーキタイプを示します。これほどの体験を背負った方の月は、いったいどんな状態に置かれているのだろうと、純粋に知りたくなったのです。

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出生時間が分からない、という壁

ここで、正直にお伝えしなければならないことがあります。

おおたわ史絵さんは1964年10月15日、東京都のお生まれです。けれど、出生時間が公開されていません。出生時間が分からないと、ASCやMC、各天体のハウス配置が出せないだけでなく、月の度数も確定できません。月は天体の中でも動きが速く、一日のうちにサインの中をかなり移動するからです。月にどんなアスペクト(角度)がかかっているのかも、そのままでは見極めきれません。

つまり、私がいちばん読みたかった「母との関係を示す月」こそ、いちばん確証を持って読めない部分だった、ということです。

これは皮肉なことのようですが、こういう読み方をする以上は避けられないことでもあります。だから今回は、月そのものを深追いすることはしません。読めないところは読めないままにして、出生時間が分からなくても確かに読めるところだけを、丁寧に拾っていきます。

それでも、母親をめぐる過酷な環境について、まったく手がかりがないわけではありません。

おおたわさんのチャートには、火星(獅子座)と海王星(蠍座)のスクエア(90度)があります。海王星は、幻想・流動・曖昧さを司る天体ですが、同時に薬物・依存・酔いのテーマとも深く結びつきます。火星との葛藤の角度は、行動しようとするエネルギーが、霧のような混乱や酔いによって阻まれやすいことを示します。母親の薬物依存という、家庭の中に漂い続けた酩酊と混乱──それは、この火星と海王星のスクエアが幼少期の環境に映り込んだ形として、ある意味で腑に落ちる読み方です。これは出生時間に左右されない角度なので、確証を持って読める部分です。

さらに、乙女座に金星・天王星・冥王星が重なる三惑星のコンジャンクションがあります。冥王星は、生き残り・深層心理の変容を司り、天王星は「突然性・断絶・逸脱」を加えます。そこに金星(愛・関係・価値観)が合わさると、愛や価値観の体験が、安定した温かいものではなく、激しく、不安定で、根本からの作り直しを強いるものになりやすい。幼少期に愛をめぐって味わった揺さぶりの大きさが、ここからもうかがえます。

母は月、父は太陽。そして幼少期の救い

著作には、母との関係は過酷だった一方で、父親との関係は良好だったとも書かれています。そして、ここがちょうど、出生時間が分からなくても確かに読めるところと重なります。

西洋占星術では、母親を月で読むのに対して、父親は太陽で読みます。月(母)は度数もアスペクトも確定できず読みにくいのですが、太陽(父)の位置と角度は、出生時間に関係なく確定して読めるのです。

おおたわさんの太陽は天秤座にあり、水星とぴたりと重なり、火星とセクスタイル、ドラゴンヘッドとトラインを結んでいます。注目したいのは、太陽に対して、葛藤を示すハードな角度(スクエアやオポジション)が一つもないことです。太陽は、やわらかく支え合う角度ばかりに囲まれています。

太陽が傷つけられていない、という配置は、「父親という存在が、葛藤の少ない、穏やかな支えとして働きやすい」という読み方ができます。著作にある「父との関係は良好だった」という記述と、ここはきれいに重なります。月(母)が激しく揺れる一方で、太陽(父)が静かに保たれている──このコントラストそのものが、彼女の幼少期の家庭の温度差を映しているように見えます。

そして、過酷な環境のなかで、彼女に救いがあったかどうか。読める範囲での推測になりますが、手がかりは二つあります。

一つは、今お話しした太陽(父)です。家庭の中に、葛藤の少ない太陽の支えが一つでも保たれていたことは、それ自体が避難場所になっていたのかもしれません。

もう一つは、風のサイン(天秤座・水瓶座・双子座)に渡るトラインの連なりです。太陽・水星・土星のそれぞれが、双子座のドラゴンヘッドと調和を結んでいます。双子座は、言葉・思考・情報のサインです。つまり彼女の魂が向かう先そのものが、「言葉」にあります。感情(月)を安心して出せない環境にあっても、思考し、観察し、言葉にするという回路は、彼女の中で自由に開いていた。
考えること、言葉にすることが、混乱の中で逃げ込める静かな避難場所になっていたのではないかと、私は感じています。冒頭で触れたメタ認知の高さも、根はここにあるのかもしれません。


出生時間が分からなくても、性格・適性・複業は読める

出生時間が不明でも、サインそのものや天体同士の角度は読めます。そしてそこから、おおたわさんの性格、医療従事者としての適性、複業をされている在り方が、はっきりと浮かび上がってきます。

まず、太陽と水星が天秤座のまったく同じ度数で重なっています。太陽は「その人そのもの」、水星は「思考と言葉」を示す天体です。この二つがぴたりと合わさるのは、「話すことが生きること」「言葉と自分が分かちがたい」という配置です。冒頭で触れた、丁寧な言葉選びやメタ認知の高さは、ここに天秤座の調和・配慮・対話志向が重なったものとして、とても自然に読めます。誰かが嫌な気分にならないように言葉を選ぶのは、天秤座のバランス感覚そのものです。

そして、この太陽・水星に火星(獅子座)がセクスタイル(60度)で協力しています。言葉に熱量と推進力が加わる配置です。考えたことを、ためらわずに表現や仕事として外へ出していける。コメンテーターとして言葉を届け、著作として形に残し、それでいて医療の現場にも立ち続ける──性質の違う複数の役割を同時に回せる瞬発力と持続力は、この火星の後押しと読めます。

医療従事者としての適性は、先ほどの乙女座三惑星にも表れています。乙女座は、分析・奉仕・精度を司るサインです。人の体や状態を細やかに観察し、正確に判断し、人のために尽くす。これは、医師という仕事にそのまま重なる資質です。愛や価値観の激しい揺さぶりを背負った同じ配置が、向きを変えれば「人を治し、支えるための精度」になる。私はそう読みます。

ここで、もう一歩だけ深く読んでみます。医師でありながら、言葉を仕事にしている──この二つを、彼女のチャートはどう支えているのか、ということです。

鍵になるのは、水星です。水星は「言葉・伝達」を司る天体であると同時に、双子座と乙女座という二つのサインの支配星でもあります。そして、おおたわさんのドラゴンヘッド(魂の向かう先)は双子座にあり、医療の資質を示した乙女座三惑星も乙女座にある。どちらも、水星が司る領域なのです。

しかもその水星自身が、太陽とぴたりと重なり、双子座のドラゴンヘッドとトラインを結び、火星のセクスタイルに後押しされている。チャートの中で、とても強く、生き生きと働いている天体です。

つまり、彼女を「言葉の人」にしている天体と、「医療の人」にしている天体は、根っこで同じ水星なのです。双子座の方向に伸びれば、コメンテーターとして語り、著作として書く仕事になる。乙女座の方向に伸びれば、人の体を観察し治す医療の仕事になる。医療従事者でありながら言葉を仕事にしていることは、性質の違う二足のわらじというより、一本の水星が二つの方向へ枝を伸ばした在り方として読めます。だからどちらも本物で、どちらも長く続くのではないかと、私は考えています。

さらに、土星・太陽・水星のそれぞれが、ドラゴンヘッド(魂の成長軸)とトラインの調和を結んでいます。土星は責任・規律、太陽は自己、水星は知性と言葉。その三つが、生まれ持った方向性とまっすぐ噛み合っているのです。知的に表現し、責任を引き受け、人に奉仕することが、本来進むべき道と一致している。「なぜ動機がどうあれ医者を続けられたのか」という問いの答えは、ここにあるのではないかと考えています。土星のトラインは時間をかけて実を結ぶ性質を持つので、長く積み重ねるほど確かな評価につながっていきやすい配置です。

入口は「周囲が丸く収まるから」だったかもしれません。けれど、その仕事を何十年も自分のものにできたのは、もともとこの資質を持って生まれていたからです。


試練は、使いこなすために与えられた


私のスタンスは、チャートを「運命の宣告」として読むのではなく、「その人の鋳型と課題」として読む、というものです。

おおたわさんのチャートにある火星と海王星のスクエアは、混乱や酔いの中で行動することへの葛藤として読めますが、同時に「霧の中をくぐり抜けながら自分の道を探し当てる力」へと転換されたとも読めます。乙女座に重なる金星・天王星・冥王星は、愛をめぐる激しい変容の課題であると同時に、「人を深く観察し、根本から支える精度」を育てた配置でもあります。

弱点ではなく、課題。呪いではなく、磨かれ途中の石。試練は、その天体を使いこなすために与えられたプロセスです。おおたわさんの言葉や仕事にある静けさは、これらの天体を長い年月をかけて使いこなしてきた結果かもしれないと、私は感じています。

今回のように、公開されている情報をもとに実在の方のチャートを読む場合、出生時間が分からないことも多く、読める範囲はどうしても限られます。月のように、いちばん知りたい天体ほど読めないこともあります。

それでも、サインや天体同士の角度からは、その人の性格、向いている仕事、いくつもの役割を持って生きる在り方まで、確かに読み取ることができます。「なぜこの人はこういう選択をしたのか」「なぜこの仕事を続けてこられたのか」が、星の配置から少しずつ見えてくるのです。

あなた自身のチャートの中にも、あなたに向いている仕事や、力が自然に流れる稼ぎ方の道筋が刻まれています。「自分はどんな仕事に向いているのか」「どういう働き方なら無理なく続けられるのか」を、星の配置から具体的に整理してみたいと感じていただけたなら、ぜひ「天職と稼ぎ方の構造をホロスコープで鑑定します」のサービスページと鑑定見本を覗いてみてください。出生時間が分からなくても読める部分から、あなたの仕事の地図を一緒に描いていけたらうれしいです。


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