紡ぐべき思い2

記事
小説

※(16) 過去に掲載したものを、改正して再投稿。

【短編集(シリーズ)より】





[本文]
12月



【街外れの高台にある展望公園】


頂上へと続く石畳の階段には、うっすらと雪が積もっている。

日も陰る夕暮れ
この季節には不釣り合いな薄着の少年が一人

膝を抱えベンチに座っていた。



その少年の傍らに
いつの間にか、一人の男が現れた。



黒いワークブーツにアーミーコート


ニット帽を目深に被った出で立ちの
その男が不意に、

どうして、家には帰らないのかな?

遠くに見下ろす街の方を見ながら
そう言った‥。

少年は、驚いた様子で男を見上げた。
男はまた、


少年を見るでもなく口をひらいた。




いつからここに?


少年は恐る恐る‥男に聞いてみた。


僕に…‥聞いてるの?



…。


おじさんは 僕がわかるの!


男は少し困った風に、額の辺りを二三度掻いた。


そして


孝輔君 だね?


そう言い
初めて少年の方を見た。


だれ? おじさんはだれなの!


君のお父さんの友達かな



瞳に一杯の涙を溜めた少年が
男のその一言で、せきを切った様に泣き出した。









日は沈み
公園に頼りなく点る街灯が二人を照らし


長く長く


男の影だけを白い雪に伸ばしていた





続く
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