会社で当たり前にしてきた仕事を、副業の価値へ変える考え方

会社で当たり前にしてきた仕事を、副業の価値へ変える考え方

記事
マネー・副業
「これくらい、誰でもできますよ」

会社の仕事について、誰かに褒められたとき、つい、そう返してしまったことはありませんか。

長年やってきた仕事は、いつの間にか「当たり前」になります。当たり前になった仕事は、自分にとっての難しさをほとんど感じさせないぶん、価値があるとも思えなくなっていきます。

僕自身、GASやAIを使った業務改善について、同僚から「便利ですね」と言われても、長い間「これくらい、ちょっと調べればできることですよ」と答えていました。自分にとって当たり前だったからです。

この記事では、会社で当たり前にしてきた仕事を、副業の価値として見えるようにするための考え方を書きます。

この記事で扱う範囲

今日扱うのは、これまでの仕事内容を一覧にする棚卸しの作業そのものではありません。当たり前になった仕事の価値を、自分の目で見えるようにするための「考え方」です。

以前の記事で扱った「経験の棚卸し」が、事実を幅広く集める作業だとすれば、今日紹介する3つの問いかけは、集めた事実の中から、特に価値の高いものを深掘りするための道具です。棚卸しで広く洗い出したあと、この問いかけを使ってさらに掘り下げると、見え方がより具体的になります。

多くの人は、自分の仕事を当たり前だと感じたまま、副業の材料を探そうとします。しかし、当たり前だと感じている限り、そこに価値があるとは気づけません。まず、なぜ当たり前になった仕事ほど価値が見えなくなるのかを整理し、次にその壁を崩すための3つの問いかけを紹介します。

なぜ当たり前になった仕事ほど、価値が見えなくなるのか

これは、専門性が高まるほど起きやすい現象です。心理学では「熟練の呪い」と呼ばれることがあります。

何かに熟練するほど、その作業にかかる負荷は小さくなっていきます。負荷が小さいということは、本人にとっては「たいしたことをしていない」という感覚につながります。しかし、その負荷の小ささこそが、実は長年の積み重ねの証拠なのです。

初めてその仕事に取り組む人にとって、あなたが今、無意識にやっていることは、決して簡単なことではありません。ところが、熟練した本人には、その差がまったく見えなくなってしまいます。自分にとって簡単なことは、他人にとっても簡単だと錯覚してしまうのです。

この錯覚は、ベテランの職人にもよく見られます。長年の経験を持つ職人が、若手に技術を教えようとしても、「見て覚えろ」としか言えないことがあります。これは意地悪をしているのではなく、本人にとってその技術が、あまりに自然な動作になっていて、言葉で説明する必要すら感じなくなっているからです。会社員の仕事にも、同じことが起きています。

僕自身、GASやAIを使った業務効率化を、長い間「ちょっとした工夫」程度にしか捉えていませんでした。実際には、試行錯誤を重ねて身につけた実務の勘のようなものが、そこには含まれていたのですが、当たり前になりすぎていて、自分では気づけなかったのです。

当たり前を崩す3つの問いかけ

当たり前になった仕事の価値を見えるようにするために、次の3つの問いかけを使ってみてください。

1つ目は、「もしこれが急にできなくなったら、誰が困るか」という問いかけです。

自分がいなくなったら、何が回らなくなるか。休んだときに、代わりに誰かがやろうとして、うまくいかなかったことはないか。この視点で考えると、自分では意識していなかった役割の重要性が見えてきます。困る人がいるということは、そこに価値があるという何よりの証拠です。

実際に、長期の休暇を取ったときのことを思い出してみてください。休み明けに「あの件、どうなっていますか」と何度も聞かれたなら、それはあなたが担っていた役割の大きさを示すサインです。逆に、何も聞かれずに済んだ仕事は、それほど代えのきかない役割ではなかったということかもしれません。この振り返りだけでも、自分の役割の輪郭がはっきりしてきます。

2つ目は、「初めてこの仕事をする人と、今の自分の差は何か」という問いかけです。

新入社員や、その分野の初心者を思い浮かべてみてください。同じ作業を頼んだとき、どこでつまずきそうか、どんな失敗をしそうか。その差の部分こそが、あなたが積み重ねてきた経験です。差が大きいほど、それは商品として価値のある経験だと言えます。

実際に、新人の指導を担当した経験がある人なら、思い出しやすいはずです。自分が当たり前にやっていることを、新人がなぜかできない。その「なぜか」の部分に、言語化されていないノウハウが隠れています。逆に、指導した経験がない場合は、初めてこの仕事を頼まれたときの自分を思い出してみるのも一つの方法です。

3つ目は、「これを人に説明するとしたら、どこでつまずくか」という問いかけです。

実際に誰かに教えようとすると、うまく言葉にできない部分に出会うことがあります。「感覚でやっている」「なんとなく分かる」としか言えない部分です。この、言葉にしづらい部分にこそ、他人が簡単には真似できないノウハウが隠れています。言葉にできれば、それはそのままコンテンツや商品の核になります。

言葉にしづらい部分ほど、実は価値が高い傾向があります。誰もが簡単に言葉にできることは、すでに世の中にたくさんの説明が存在しています。逆に、言葉にしづらいということは、まだ他の誰も、うまく言語化できていない可能性があるということです。詰まる部分ほど、時間をかけて言葉にする価値があります。

僕自身、この3つの問いかけを自分に当てはめてみると、「困る人がいる」「差がある」「言葉にしづらい部分がある」ということに、あらためて気づかされました。当たり前だと思っていた仕事の中に、思っていた以上の積み重ねがあったのです。

問いかけで見つかったものを、副業の言葉に変える

3つの問いかけで見えてきたものは、そのままでは、まだ「自分の中にある感覚」の段階です。これを副業の言葉に変えるには、具体的な場面とセットで書き出す作業が必要になります。

「困る人がいる」と感じた場面を、実際にどんな出来事だったか、具体的に思い出してください。「差がある」と感じた部分は、初心者が実際にどんなミスをしていたかを、具体的に書き出してください。「言葉にしづらい」と感じた部分は、無理にでも一度、文章にしてみることが大切です。文章にする過程で、感覚だったものが、少しずつ言葉として扱えるものに変わっていきます。

この作業は、一度で完璧に仕上げようとしなくて構いません。最初はぎこちない言葉でも、何度か書き直しているうちに、少しずつ自分の実感に近い表現が見つかっていきます。感覚を言葉に変える作業には、多少の時間がかかるものだと思って取り組んでください。

当たり前を崩す問いかけシート
・もしこの仕事が急にできなくなったら、誰が困るか
・初めてこの仕事をする人と、今の自分の差はどこにあるか
・人に説明しようとすると、どこで言葉に詰まるか
・その詰まる部分を、無理にでも一文で言葉にすると何と言えるか

今日は、3つの問いかけのうち1つだけで構いません。自分の仕事を思い浮かべながら、答えを書き出してみてください。当たり前だと思っていたことの中に、思っていた以上の価値が見えてくるはずです。

まとめ

会社で当たり前にしてきた仕事ほど、本人にとっては価値が見えにくくなります。これは怠けているからではなく、熟練するほど負荷が小さくなるという、自然な現象です。

「もし急にできなくなったら誰が困るか」「初心者との差はどこにあるか」「人に説明するとどこで詰まるか」。この3つの問いかけを使うことで、当たり前になった仕事の中に埋もれている価値を、自分の目で見えるようにすることができます。

ただ、自分一人でこの問いかけに答えていると、どうしても謙遜が入り込み、正確に評価しきれないこともあると思います。そんなときは、客観的な視点を借りるのも一つの方法です。

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