AIを活用した業務の自動化やフロー設計に携わっていると、さまざまな壁にぶつかります。
「業務を効率化したい」「DX化しなければとは思っている」。でも、何から手をつければいいのか分からない。そんな相談から始まり、一緒に業務を整理していくこともあります。
普段当たり前に行っている作業ほど、あらためて説明するのは難しいものです。「いつもこうしている」という作業の中には、担当者にしか分からない判断や、長年の経験から生まれた工夫が隠れていることもあります。
一つひとつ業務を棚卸ししていくうちに、「そもそも、この作業自体をなくしてもいいのでは?」という話になることも。
自動化の相談から始まったはずが、気づけば業務そのものを見直している。そんなことも珍しくありません。
ところが、今回は少し違いました。最初から「こうしたい」という希望が具体的だったのです。何を、どのような流れで処理したいのか。完成後のイメージも明確でした。その希望に沿って仕組みを構築したのですが、実際に運用してみると、思うように定着しませんでした。
そして結果的に、手作業に戻ることになりました。
今回は、この経験から気づいたことを、自分自身の振り返りとして残しておこうと思います。
「何をつくるか」が決まっていても
今回構築したのは、GAS(Google Apps Script)で開発した、日々の定型業務を自動化する仕組みです。
依頼時には、処理の流れや実現したい機能が具体的に整理されていました。しかし、実際に運用が始まると、想定していた手順と現場での進め方に、少しずつずれが生じてきました。
同じ作業でも、担当者によって扱い方が微妙に異なる。運用に変更があっても、その内容が関係者全員に共有されているとは限らない。
一つひとつは小さな違いでも、それが積み重なると、自動化の仕組みが想定どおりに動かなくなることがあります。その結果、確認や修正に手間がかかり、「それなら手作業で進めたほうが早い」という状態になってしまいました。
振り返ってみると、私は「つくりたいものが具体的に決まっていること」を、少し安心材料にしていたのかもしれません。何をつくるかは決まっていても、それを誰が、どのように使い続けるのか。そこまで共通認識ができていたわけではありませんでした。
自動化したあとの仕事を、すり合わせていなかった
もう一つ、事前に認識を合わせておきたかったことがあります。それは、自動化したあとに「人が何をするのか」ということです。
どこまでを自動で処理するのか。何を人が確認するのか。想定外のケースが発生したとき、誰が判断するのか。運用方法が変わった場合、誰がその変更を共有するのか。こうした点を、もっと具体的にすり合わせておく必要があったと感じています。
今回の仕組みも、作業担当者や最終確認を行う人の負担を減らすためにつくったものでした。ただ、自動化したからといって、人の確認や判断がすべて不要になるわけではありません。
むしろ、どこを人が確認するのかが明確になっていないと、自動化によって新たな確認作業が生まれてしまうこともあります。仕組みをつくることだけでなく、導入後にどう運用していくのか。その部分について、私からも、もう一歩踏み込んで確認できたのではないかと思っています。
いったん手作業で進める、という提案
そこで今回は、無理に自動化を続けるのではなく、いったん手作業で運用を確認しながら、段階的に自動化していく方法を提案しました。
まずは、実際の作業の流れを整理する。担当者による判断の違いや、例外が発生する場面を把握する。そのうえで、手順が安定している部分から少しずつ自動化していく。
一度つくった仕組みがあるだけに、手作業に戻ることは遠回りのようにも感じます。でも、業務の進め方が揃っていない状態で自動化を進めても、また同じ問題が起きるかもしれません。
それなら、一度立ち止まって運用を整理したほうが、結果的に使い続けられる仕組みに近づけるのではないか。今はそう考えています。
次は、使い始めたあとの話もしたい
今回の経験を通して、あらためて感じたことがあります。それは、希望どおりの機能をつくることと、その仕組みが現場に定着することは、必ずしも同じではないということです。
どれだけ便利な仕組みでも、実際に使う人の業務や、運用上のルールと合っていなければ、使い続けることは難しくなります。
次に自動化の相談を受けたときは、「何をつくりたいか」だけでなく、「つくったあと、どう使い続けるか」まで確認したいと思います。
誰が使うのか。誰が確認するのか。運用が変わったとき、どう対応するのか。
技術的に実現できるかだけでなく、日々の業務の中で無理なく運用できるか。そこまで含めて考えることが、業務改善につながるのだと思います。
今回提案した進め方が、実際にうまくいくかどうかは、まだこれからです。
ただ、希望どおりにつくった仕組みが、そのまま現場に定着するとは限らない。そのことを実感できたのは、自分にとって大きな学びでした。