「あの人の説明はなぜかわかりやすい」「あの人の提案はなぜか説得力がある」と感じたことはありませんか。
その差の多くは、頭のよさや知識量ではなく、「抽象と具体をうまく行き来できるかどうか」にあります。この記事では、抽象と具体とは何か、そしてそれを使いこなすとどう変わるのかを、できるだけわかりやすく解説します。
そもそも「抽象」と「具体」って何?
まず言葉の意味から整理しましょう。
抽象とは、物事の本質やパターンを取り出して、シンプルにまとめたものです。「果物」「乗り物」「コミュニケーション」などがその例です。細かい違いを省いて、共通する特徴だけを残したイメージです。
具体とは、実際に目に見えたり手で触れたりできる、個別の事実や出来事のことです。「りんご」「自転車」「昨日友人に送ったLINE」などがその例です。
つまり、こういう関係になっています。
抽象:「乗り物」
具体:「赤い自転車」「東京発の新幹線」「隣の家のバイク」
抽象は「まとめたもの」、具体は「実際のもの」と覚えておけば十分です。
なぜ「抽象と具体」が大事なのか
抽象だけでは話がふわふわしてて伝わらない。具体だけでは話が散らばってしまい、何が言いたいのかわからない。
頭がいいと言われる人は、この2つを自在に行き来することができます。それが「わかりやすさ」「説得力」「応用力」の正体です。
抽象と具体、それぞれ「だけ」だとどうなるか
抽象だけの人(ふわっとした人)
「大切なのはコミュニケーションです」「本質を見極めることが重要です」「組織としてのシナジーを高めましょう」
…なんとなくわかった気はするけど、では明日から何をすればいいのかわからない。こういう言葉は、具体がないと相手の頭に何も残りません。
具体だけの人(話が長い人)
「先週の会議でAさんがこう言って、そのあとBさんがこう返して、それで僕はこう思ったんですけど、そういえば以前も似たようなことがあって…」
たくさんの情報は出てくるけど、「で、結局何が言いたいの?」となってしまう。具体だけだと、話に軸がなくなります。
抽象と具体を行き来できる人
「コミュニケーションが大切です(抽象)。たとえば、会議で発言しやすい雰囲気を作るために、意見を否定する前に必ず一度受け止める言葉を使うようにしています(具体)。」
これが、わかりやすくて説得力のある話し方です。
頭がいい人がやっている3つの使い方
1. 具体から抽象を取り出す(パターンを見つける力)
頭がいい人は、バラバラな出来事の中から「共通するパターン」を見つけることが得意です。
たとえば、「あの飲食店は失敗した」「あの服屋も閉まった」「あのカフェも半年でなくなった」という3つの具体的な出来事から、「駅から遠い立地のお店は続きにくい」という法則(抽象)を取り出せる。
これができると、初めて見る状況でも「これは以前のあのパターンと同じだ」と判断できるようになります。経験から学ぶ力とは、まさにこの「具体→抽象」の変換力です。
2. 抽象から具体に落とす(アイデアを実行に変える力)
反対に、抽象的なアイデアや概念を、実際に動ける「具体的なアクション」に変換する力も重要です。
たとえば、「チームの心理的安全性を高めよう」という抽象的な目標があったとき、「では具体的に何をするか?」と問いを立てられるかどうか。「毎朝5分、雑談タイムを設ける」「ミスを責めるのではなく、改善策を一緒に考える」といった具体に落とせて初めて、実行できます。
アイデアが豊富なのに行動に移せない人は、たいていこの「抽象→具体」の変換が苦手なことが多いです。
3. 抽象レベルを相手に合わせる(伝える力)
頭がいい人は、相手や場面に応じて、話す抽象度のレベルを自在に調整します。
子どもに話すときは具体を多く使い、専門家と話すときは抽象レベルを上げる。経営者に提案するときは大きな方向性(抽象)から入り、現場担当者と話すときは手順(具体)から入る。
相手が「難しい」と感じるとき、それは多くの場合「抽象レベルが合っていない」ことが原因です。
日常で試せる、シンプルな練習法
「つまり?」と「たとえば?」を口癖にする
何か考えたり話したりするとき、この2つの問いを意識するだけで、抽象と具体を行き来する力が自然と鍛えられます。
「つまり?」は、具体的な出来事や情報を抽象に変える問いです。「たとえば?」は、抽象的な考えを具体に落とす問いです。
たとえば、会議で誰かが「改善が必要です」と言ったとき、「つまり、何が問題ということですか?」「たとえば、どんな場面で困っていますか?」と聞くだけで、議論が一気に具体的になります。
まとめ
抽象と具体は、難しい概念ではありません。「まとめる力」と「例に落とす力」の2つです。
頭がいい人は、この2つを状況に応じて使い分けています。「つまり何?」と問うて本質をつかみ、「たとえば?」と問うて現実に結びつける。この往復運動こそが、思考力・伝達力・応用力の正体です。
今日から「つまり?」と「たとえば?」の2つを意識するだけで、考え方も話し方も少しずつ変わっていきます。ぜひ試してみてください。