怖い話公開 題名:熱

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小説
これは小学4年生、夏休みの出来事。
お盆を過ぎた、ある日のことだった。
朝起きると体が重い。熱を測ると38度。
病院で診てもらったところ、夏バテで風邪を併発したのだろうということだった。
暫くは処方箋の薬を飲んで様子を見ることに。
しかし。
二日、三日経っても熱は下がらず、治る気配を見せなかった。
むしろ、ますます容体は悪化していく。
今考えれば、あの時はかなり不自然な容体だったと思う。
とにかく両方の意味であつ(暑・熱)かった。
クーラーを十分すぎるほどに利かせているにも拘らず、なぜか部屋が物凄く暑く感じられたのだ。まるで炎天下のなかにいるかのように。
そして体があまりにも熱い。とにかく熱い。炎で焼き尽くされるかのような感覚だった。
結局、熱が収まらないまま時間だけが過ぎていく。
夏休み最終日。
熱が下がることはなく、布団に横になりながら天井を見つめる俺。
すると父が部屋に入ってきた。
父:「熱のとこ悪いが、少し話がある。」
そう言って話始める父。
父:「おまえ、カブトムシの世話はしっかりやってたのか?」
父は、俺が当時飼っていたカブトムシのことを言及し始めた。
俺:「そういえば・・・」
俺は思い出す。
夏休み始め、何匹か捕まえてケースに入れたっきり世話をしていなかったことを。
父曰く、玄関脇に放置されたケースの中、カブトムシは無残にも全て死んでいたそうだ。俺を訪ねる前、父がそれを発見。死骸を庭に埋めてきたのだという。
もちろんこの後、父にこっぴどく叱られたのは言うまでもない。
そうして翌日。俺の体は完全に回復した。
原因不明の熱は、虫篭の中、熱に焼かれて死んでいったカブトムシの怨念によるものなのだろうか。
確かな根拠はない。
しかし、この出来事を機に俺が生き物を大切にするようになったことは事実であり、その点で見れば俺の人生のターニングポイントになった出来事だったと、振り返って思う。

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