こんにちは、Yuta Kuwamuraです。法人営業を9年経験したあと、いまは企業向けに生成AIの研修と導入支援をしています。
「全員分のアカウントを用意した。でも、使っているのはいつもの2〜3人だけ」
導入支援の相談で、よく聞く声です。
最初の数週間は、試しに触ってみる人がいます。ただ、ひと月もするとほとんど誰も開かなくなる。そうしたご相談も少なくありません。
社員のやる気やITの得意・不得意の問題に見えます。ですが話を聞いていくと、原因はもっと手前にあることが多いです。使われない会社に共通する3つのことを、順にお伝えします。
① 「何に使うか」が業務単位で決まっていない
こうなっている会社の様子
「自由に使っていいよ」「業務効率化に活用して」とだけ伝えて配っている状態です。
言われた側は、何を頼めばいいのか分かりません。雑談のような質問を試して、「ふーん」で終わります。
「効率化に使う」は方針であって、使い道ではありません。毎日の仕事のどの場面で開くのかが決まっていないと、忙しい日ほど後回しになります。
最初の一手
部署ごとに、AIに任せてみる業務を1つだけ決めてください。
ポイントは「業務の名前」で決めることです。
・営業:商談メモから、お礼メールの下書きを作る
・事務:届いた問い合わせメールへの返信案を作る
・共通:会議のメモを「決まったこと」と「次にやること」に整理する
例えば、お礼メールを毎回ゼロから書いて15分かかっているとします。下書きをAIに作らせて手直しする形にすると、5分ほどに縮められる場合があります。実際に何分になるか、一度測ってみてください。
1つ決まると、「あの作業のときに開く」というきっかけができます。ほかの業務に広げるのは、そのあとで十分です。
部署で決めるのが難しければ、自分の担当業務で1つ決めるだけでも構いません。
② 練習が「プロンプトの書き方」止まりになっている
こうなっている会社の様子
研修や社内勉強会はやった。内容は、プロンプト(AIへの指示文)の書き方のコツ。「役割を与える」「条件を箇条書きにする」といったものです。
その場では皆うなずきます。でも翌日、自分の席に戻ると、何に当てはめればいいのか分からない。
例題が「旅行プランを考えて」「キャッチコピーを作って」のような、自分の仕事と関係のないものだと、特にこうなりがちです。
書き方を覚えても、「自分の業務に置き換える」という一歩が残ったままなのです。
最初の一手
練習の題材を、参加している人自身の仕事に替えてください。
例えば、先週実際に書いた見積の送付メールや、手元にある議事録のメモを持ち寄ります。それをその場でAIに手伝わせてみます。お客様の名前などは伏せ、社内で入力してよいと決めた範囲の資料で行ってください(理由は次の③で書きます)。
うまくいった指示文は、そのままチームで共有します。
「この作業のときは、この文を貼って使う」というひな形が1つあると、指示文を毎回ゼロから考えずに済み、使う人が増えやすくなります。
③ 入力してよい情報のルールがない
こうなっている会社の様子
ルールがないと、社内の反応は2つに分かれます。
1つは、「情報漏えいが怖いから、使わないでおこう」と手を止めてしまう人。もう1つは、気にせず顧客名や金額をそのまま入れてしまう人です。
前者は、使われない原因になります。後者は、会社にとってのリスクになります。
そして後者が見つかると、管理する側は「やっぱり使用禁止」に傾きがちです。どちらに転んでも、使われない状態に戻ってしまいます。
最初の一手
最初は短いルールで構いません。例えば次の3行です。
・顧客名・個人名・電話番号などは入れない(「A社」「Bさん」に置き換える)
・社外秘の資料や、外部に出せない情報はそのまま貼り付けない
・迷ったら、入れる前に担当者に聞く(相談先を1人決めておく)
あわせて、会社で使っているサービスやプランについて、入力内容がAIの学習に使われるか、設定で変えられるかを確認しておくと安心です。
設定や仕様はサービスやプランによって違い、変わることもあります。各サービスの公式の説明で確かめてください。
「ここまでなら使っていい」が分かると、入力してよいか迷って手が止まっていた人も動きやすくなります。
ルールは使わせないためのものではなく、安心して使うためのものです。
まとめ
3つの共通点に対する最初の一手を並べると、次のとおりです。
1. 何に使うかを、業務の名前で1つ決める
2. 自分の仕事を題材に練習し、うまくいった指示文を共有する
3. 入力してよい情報を、短いルールで示す
3つとも、社員のやる気や向き不向きの問題ではなく、会社側の「決め事」の問題です。どれも新しいツールを買い足す話ではなく、明日から手をつけられることです。
全部を一度にやる必要もありません。自社でいちばん引っかかっていそうなものを1つ選んで、そこから始めてみてください。
自社の場合の始め方を知りたい方へ
とはいえ、どの業務から始めるのがよいかは、業種や人数、今の仕事の進め方によって変わります。
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