~当たり前になった便利さは、誰にとっても当たり前ではない~
最近、ある知人の書類作成を手伝う機会がありました。
AIを使って申請書の内容を整理し、必要な項目を確認しながら、書類を作成していく作業です。
私は普段からAIを使っていますので、資料を読み込ませて、分からないところを質問し、回答を確認しながら作業を進めることに、特に難しさを感じていませんでした。
ところが、作業を終えた後になって、ふと気づいたことがありました。
**私は、書類の作り方は手伝ったけれど、AIを使った仕事の進め方そのものを、きちんと教えていなかったのではないか。**
## AIに全部任せようとしていませんか?
AIを使い始めたばかりの方は、資料を渡して「これを完成させてください」と頼むことがあると思います。
もちろん、それでうまくいく場合もあります。
しかし、必要な情報が不足していたり、会社として判断しなければならない項目があったりすると、AIだけでは完成できません。
結果として、空欄が残ったり、期待していたものと違う書類が出来上がったりします。
そこで「AIではできない」と思ってしまう。
でも、少し使い方を変えるだけで、状況は違ってきます。
例えば、こんなふうに頼んでみるのです。
「この書類を完成させたいので、必要なことを一項目ずつ質問してください。私が答えるので、内容を整理していってください」
これだけでも、作業の進め方は大きく変わります。
分からないことは「分からない」と答えればいい。
数字が必要なら、何を調べればよいのか聞けばいい。
計算が必要なら、AIに計算してもらい、結果を確認すればいい。
**AIに完成品を一度に作らせるのではなく、AIと一緒に一つずつ完成させていく。**
それだけのことなのです。
## 私にとっては、もう当たり前だった
振り返ってみると、私は以前からこうした使い方をしていました。
会社のパソコンでAIを使えない環境でも、手元のiPhoneでAIに質問していました。
例えば、ある資料を調べる必要があったとき。
まず公的な資料を調べてもらう。
「何が書いてある?」
「その中で、今回必要なのはどの部分?」
「では、この仕組みについて詳しく教えて」
そうやって質問を重ねながら、必要な情報を絞り込んでいきます。
別の画面で元の資料を確認しながら、AIの回答と照らし合わせることもあります。
最後に何を採用するかは、自分で判断します。
最近では、キーボードで入力する代わりに音声で質問することも増えました。
疑問に思ったことを、そのまま口にすればいい。
AIが内容を文字にして、回答してくれる。
いつの間にか、これが私の日常になっていました。
だからこそ、気づかなかったのです。
**自分にとって当たり前の操作が、初めて使う人にとっては、当たり前ではないことに。**
## 難しいテクニックばかり教えようとしていた
私はこれまで、AIを使ううえで大切なこととして、いろいろな方法を紹介してきました。
「一度に全部作らせない」
「作業をブロック単位に分ける」
「完成したものを一つずつ積み上げていく」
「判断基準やルールを残して、次の作業に引き継ぐ」
どれも、実際にAIを使いながら学んできたことです。
さらに、AIとのやり取りが行き詰まったときには、質問の仕方を変えたり、選択肢を提示したりするルールも考えてきました。
ところが、その一方で、もっと基本的なことを伝え忘れていました。
**「分からなければ、AIに聞けばいい」**
そして、
**「何を答えればよいか分からなければ、AIの方から質問してもらえばいい」**
ということです。
以前の私は、「AIに質問させる」というプロンプトを見て、そんな大げさな指示が必要なのかと思ったこともありました。
でも、今なら少し違う見方ができます。
目的がはっきりしているなら、AIに必要事項を質問してもらうのは、とても合理的な方法です。
書類のどこを埋めればよいのか分からない人でも、質問に一つずつ答えることならできるかもしれません。
つまり、AIの使い方を覚える前に、**AIに仕事の進め方を手伝ってもらうこと自体を知ってもらう必要があった**のです。
## AIの使い方ではなく、AIとの仕事の進め方
今回、私が知人に伝えたかったのは、特別なプロンプトではありません。
書類をAIに読み込ませる。
未記入項目を確認してもらう。
必要なことを一項目ずつ質問してもらう。
それに答えながら、内容を整理していく。
数字があれば計算や検算を手伝ってもらい、最後は元の資料と照合する。
これだけです。
すべてをAIに任せるわけではありません。
情報を提供し、判断するのは人間です。
でも、人間が一人で調べて、考えて、入力して、確認する必要はなくなります。
AIと役割を分ければいいのです。
## 使い慣れた人ほど、最初の一歩を忘れない
今回の経験は、私自身にとって反省の機会になりました。
便利な道具を使い慣れると、最初に何が分からなかったのかを忘れてしまいます。
そして、知らず知らずのうちに、使い慣れた人を基準に説明してしまう。
これはAIに限った話ではないのかもしれません。
ただ、AIの場合は特に、その差が大きいように感じます。
同じAIを使っていても、完成品を待つ人と、対話を重ねながら仕事を進める人では、得られる結果が変わってきます。
だからこそ、これからAIの使い方を伝えるときには、難しいテクニックより先に、もっと基本的なことから始めたいと思います。
**分からないことは、聞けばいい。**
**何から始めればよいか分からなければ、それも聞けばいい。**
**一度で完成させようとせず、一緒に考えながら進めればいい。**
私自身が当たり前にやっていたこと。
それこそが、最初に伝えるべきことだったのだと思います。
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**GAOS 技術参謀室**
AIを使うことそのものではなく、AIと一緒に何ができるのか。
これからも、実際の経験を通して考えていきたいと思います。