AIに企画を考えてもらい、コピーを書いてもらい、ビジュアルをつくり、映像まで仕上げてもらう。
ここまでAIだけで進めたとき、ブランドの世界観は一貫したものになるのでしょうか。
今回は、ひとつの架空ブランドを想定し、企画・コピー・ビジュアル・映像までをAI中心で制作して検証しました。
結論から言うと、AIだけでも「統一感のある見た目」はつくれます。ただし、「そのブランドにしかない世界観」をつくるには、人の判断が必要でした。
今回の検証で制作したもの
検証では、最初にブランドの概要だけを決め、同じ条件をもとに各制作物を順番につくりました。
ブランドのコンセプトとターゲット
ブランドを表す短いコピー
色・質感・写真の方向性をまとめたビジュアル
SNSやWebで使うキービジュアル
ブランドムービーの構成と映像イメージ
制作の途中では、できるだけ人が細かく修正せず、AIが前の工程を引き継いだときに、どこまで一貫性を保てるかを見ました。
企画は速い。でも、ブランドの核は薄くなりやすい
企画段階では、ターゲット像、価値提案、コンセプト候補が短時間でそろいました。複数案を比較できるため、方向性を広げる作業にはとても向いています。
一方で、出てきた企画には「心地よい」「自分らしい」「日常を豊かにする」といった、さまざまなブランドで使える言葉も多く含まれていました。
内容として間違ってはいません。しかし、なぜこのブランドが存在するのか、誰のどんな経験から生まれたのかという固有の背景が弱いと、きれいにまとまるほど他社との差が見えにくくなります。
AIはブランドの形を整えるのは得意ですが、ブランドの原点そのものを持っているわけではありません。
コピーは整う。でも、言葉の温度がそろわない
企画をもとにコピーをつくると、コンセプトに合った短い言葉がいくつも生成されました。語尾や長さを指定すれば、一定のトーンに近づけることもできます。
ただ、キャッチコピー、商品説明、SNS投稿を並べると、少しずつ人格が違って見える部分がありました。
ある文章は静かで余白がある
別の文章は説明が多く、営業的に見える
短いコピーは抽象的で、具体的な価値が伝わりにくい
一つずつ読むと自然でも、ブランド全体で見ると、誰が話しているのかが曖昧になります。言葉の温度を合わせるには、残す表現と使わない表現を人が決める必要がありました。
ビジュアルは統一しやすい。けれど、似た世界観になりやすい
色、光、構図、素材感を細かく指定すると、AIはかなり高い精度で統一感のあるビジュアルをつくれます。
Web、SNS、広告用の画像を並べても、同じブランドのものとして見える状態にはできました。
しかし、ここでも課題がありました。
雰囲気は合っていても、商品やサービスの特徴が弱い
美しいが、どこかで見たことのある表現になる
媒体ごとに構図を変えると、世界観の核まで揺れる
映像に展開したとき、静止画の質感を保てない
ビジュアルの一貫性は、同じ色やテイストを繰り返すだけでは生まれません。何を見せ、何を見せないか。その選び方まで揃って、初めてブランドらしさになります。
映像までつなげると、世界観の弱点が見える
映像では、画の雰囲気だけでなく、時間の流れ、音、言葉、テンポが加わります。
静止画では成立していた世界観も、映像にすると急に説明的になったり、動きが強すぎたりして、ブランドの印象が変わることがありました。
たとえば「静けさ」を大切にするブランドなら、映像のカット数、カメラの動き、音の余白まで静かである必要があります。色だけを合わせても、世界観は揃いません。
ブランドの世界観は、見た目のルールではなく、すべての判断に共通する基準です。
検証して分かった、AIが得意なこと
今回の検証で、AIの強みがはっきりした部分もありました。
企画の選択肢を短時間で広げる
コンセプトを言葉や画像へ素早く展開する
色・構図・トーンの候補を比較する
一つの案からSNS、Web、映像の素材を増やす
修正の方向性を試し、判断材料をつくる
特に、まだ形のないアイデアを目に見える状態へ変える速さは、大きな力になります。クライアントとの認識合わせや、初期案の比較にも活かせます。
人が担うべきだったこと
一方で、一貫したブランドにするためには、人が次の判断を担う必要がありました。
ブランドが生まれた背景や原点を言葉にする
誰に、どんな感情を残したいかを決める
ブランドらしくない案を見分けて削る
コピー、ビジュアル、映像の違和感を横断して確認する
媒体が変わっても守るものと、変えてよいものを決める
これらは、何かを生成する作業ではありません。ブランドにとって何が正しいかを判断する作業です。
AIだけでブランドの世界観はつくれるのか
AIだけでも、整った企画や、統一感のあるコピー・ビジュアル・映像をつくることはできます。
ただし、それだけでは「雰囲気のよいブランド」で止まりやすく、「このブランドでなければならない理由」までは届きにくいと感じました。
ブランドの世界観は、色や写真のテイストだけではありません。
どんな考え方を大切にし、何を選び、何を選ばないのか。その判断が、企画、言葉、デザイン、映像のすべてに表れたものです。
AIは世界観を形にする力を持っています。しかし、その世界観に意味を与え、一貫させるのは人です。
AIにすべてを任せるのではなく、人がブランドの核と判断基準を持ち、AIを展開と検証に使う。
この役割分担ができれば、制作の速さとブランドらしさを両立できると思います。