朝晩の風にわずかな冷たさが混じりはじめ、日が落ちる時刻が少しずつ早まってまいりました。夏の名残の暑さは残っていても、空の高さや雲のかたちは、確かに次の季節へ移ろうとしています。暦の上では、このあたりから土の気が静かに動きはじめる時期と言われております。
不思議なもので、この季節になると「部屋を片づけたい」「家具の位置を変えたい」「いっそ引っ越したい」という気持ちが、ふと湧いてくる方が多いように感じます。私のところにも、この時期は住まいにまつわるご相談が増えてまいります。
そうしたお気持ちは、思いつきではないと私は考えております。住まいというのは、そこで暮らす方の波動をいちばん長く受け止めている場所です。眠っているあいだも、ぼんやり過ごしているあいだも、住まいは静かにあなたの状態を写し取っています。ですから、あなたの内側で何かが切り替わろうとするとき、住まいのほうが先に「もうここは合わなくなってきましたよ」と教えてくれることがあるのです。
住まいの空気を読ませていただくとき、私が最初に感じ取るのは、家全体の明るさや暗さではありません。空気が動いている場所と、止まっている場所の違いです。人の出入りが多い場所、風の通る場所は、たいてい軽やかな波動をしています。一方で、扉を開けなくなった収納の奥、家具の裏、しばらく座っていない椅子のまわりには、空気がとどまりやすいものです。そこは悪い場所というわけではなく、ただ流れが止まっているだけです。
ですから、大がかりなことをしなくても、空気は動きはじめます。窓を対角線上に二か所開けて、五分ほど風を通す。家具を十センチだけずらして、そこに溜まっていた埃を拭き取る。玄関に置きっぱなしになっていたものを、ひとつだけ片づける。この程度のことで、家の中の流れは変わっていきます。
模様替えを考えていらっしゃるなら、机や椅子など、あなたが長い時間を過ごす場所から手をつけてみてください。人は自分が座る位置の波動をいちばん強く受け取ります。向きを少し変えるだけでも、目に入る景色が変わり、心の向きもゆるやかに変わっていきます。
引っ越しを考えていらっしゃる場合は、少しだけ立ち止まってお伺いしたいことがあります。それは、いまの住まいから離れたいのか、それとも次に行きたい場所があるのか、というところです。どちらが良い悪いということではありません。ただ、離れたい気持ちが先にあるときは、物件そのものよりも、あなたが何から距離を置きたいのかを言葉にしておかれると、選ぶ基準が定まりやすくなります。
そして、いま暮らしている場所への感謝を、去るときに一度だけ伝えてみてください。声に出さなくてもかまいません。ここで過ごした時間に礼を言ってから離れると、次の住まいへ持ち込む空気が軽くなるように、私は感じております。
季節が変わるとき、住まいも一緒に呼吸を変えたがっているのかもしれません。焦らず、できるところから風を通してみてください。
もし住まいの空気やこれからの選択について整理したいことがございましたら、プロフィールページからお気軽にお声がけくださいませ。