アメリカの兵士を父として育った若き男は、子供の頃から考え続けてきた問いがあった。
この宇宙の果てにはなにがあるのだろうかと。
天文学の科学者となった今もその問いかけ続けていた。
男の両親以外に家族はなく、人間関係もあえて避けて生活していた。
そんなある日、仕事帰りに夜空をみあげると、透明感のある光に包まれた円盤がみえた。
その円盤から光が放射されると、男は円盤に瞬間移動していた。
円盤のなかは、なめらかな金属ではない、プラスチックのような部屋だった。
呆然と立ち尽くしていると、どこからか突然、ふたりの人間があらわれた。
どこの国の服装ではない、金髪で目の色はエメラルドグリーン。
男性か女性かはわからない中性的な顔立ちをしている。
男は異星人の存在を信じていたので、恐れることなく話しかけた。
「あなた方はほかの惑星から来たのですね?」
「いいえ、ほかの惑星からも来ている者がいるが、この地球の海底や地下にも私たちの基地がある。あなたは元々は我々の仲間であったが、あなたが乗船していた円盤が雷に打たれて落下し、あなたはまだ生まれたばかりであったが、地球の者に発見されて、今日まで地球人として生活していたのだよ。我々全員は故郷の星に帰ることになったので、迎えに来たのだ」
男の脳裏には、毎年、何万人の人たちが突然、消失しているというニュースが浮かんだ。
「そのとおり。監視カメラでも撮影されているが、突然、姿を消しているのは、我々の仲間たちであり、地球人に知られないよう、突然、姿を消して、海底や地下基地に移動しているのだよ」
「私の考えてることがわかるようだな。それにしてもなぜ、みんなで帰ることにしたのだ?」
ふたりの異星人たちは微笑み、そして頷いた。
「それは知らないほうがいいだろう」
「それはともかく、故郷の星に帰るまでに、いちどでいい、宇宙の果てに行ってみたいのだよ」
異星人のひとりは、少し困惑したような表情をみせ、「あなたも長く地球で生活したせいか、好奇心が旺盛すぎるようだ。だが、そうした人間的な感性や考え方も我々の社会にとって、発展をもたらすものかもしれない。あなたに超光速の小型機を貸し与えよう。その小型機で宇宙の果ての近くまで行ってみるがいい。ただし、光がみえてきたら小型機をUターンさせて帰還してほしい。光の向こう側にある世界との境界線は禁断の壁があり、決して犯してはならない領域なのだから」
「あなたたちは、光の向こう側の世界のことを知っているようだね」
「知っているがこれも知らないほうがいい。知ってしまうと私たち生物すべての存在の意味が空しいものとなってしまうからね」
男はかたく約束し、宇宙の果てを目指した。
光を超える光速のため、飛行というよりも、瞬間移動のようだ。
そして、彼らか彼女らか知らない者が話していた神々しい光がみえてきた。
だが、男は約束を守らず、光を突き抜けようとした瞬間、小型機は分子レベルまでに散り散りとなり、霧のように掻き消えてしまった。
「やれやれ、またしてもまだ増築中の宇宙の壁に衝突してきた者がいた。その者の仲間たちに、あれほど宇宙は有限で、制作途上だと教え諭しておいたのに。また最初から創りなおさなきゃな」
宇宙を創っていた人間型の存在が呆れて愚痴をこぼした。