「これ、kintoneでできますか?」
kintoneの担当になると、社内で必ずこう聞かれます。そして答えに困ります。設定画面をひととおり探して、それらしい項目が見つからない。じゃあカスタマイズか、と思って調べると、いきなり見積もりが数万円になる。
でも、その2つのあいだには、まだいくつも道があります。
kintoneで「やりたいこと」を実現する方法は、全部で5種類です。
お金をかけずにできる
1. 標準機能の設定でできる
2. 無料のプラグインを入れる
3. 自分でカスタマイズを書く(JavaScript)
お金がかかる
4. 有料のプラグインを入れる
5. カスタマイズを依頼する
数万円という見積もりは、いちばん下の「カスタマイズを依頼する」の話です。上の3つで済むことが、そこで見積もられている——ということは珍しくありません。
とはいえ、上にあるほうが得だとは限りません。それぞれに一長一短があります。無料でも、自分で書けば時間はかかるし、動かなくなった時は自分で直すことになります。お金を払えば、速く確実に終わることもある。大事なのは、5つを並べて見比べてから決めることです。
この記事では、その見比べ方を「標準機能 → プラグイン → カスタマイズ」の順に書いていきます。
第1ステップ:標準機能でできること・できないこと
「設定だけでできること」の輪郭を先に知っておくと、探す場所が絞れます。
できること
・四則演算・合計・端数処理(計算フィールド)
・条件によって表示する文字を変える(計算式のIF関数)
・決まった日に1回通知する(リマインダーの条件通知)
・承認フロー(プロセス管理)
・誰がどのアプリ・レコード・欄を見られるかの制御(アクセス権)
・他のアプリから値をコピーしてくる(ルックアップ)
できないこと
・条件によって色を変える(いわゆる条件付き書式)。設定画面に項目そのものがありません
・条件付きの集計(Excelでいう SUMIF・COUNTIF に相当するもの)。使える関数は11個で、この中にありません
・気づくまで繰り返し通知する。リマインダーは条件を満たしたときに一度送られたら、その後は繰り返しません
・決まった時刻をきっかけに、外部のサービスへ自動で送る。kintoneから外部へ自動送信する仕組み(Webhook)はありますが、そのきっかけに選べるのはレコードの追加・編集・削除といった操作だけで、「毎朝7時」のような時刻は選べません
ここで大事なのは、できないことの多くが「よくある要望」という点です。「期限を過ぎた案件を赤くしたい」「未対応のまま3日経ったら毎朝知らせてほしい」——どちらも自然な要望ですが、標準設定にその項目はありません。
「探し方が悪いのかも」と何時間も設定画面をさまよう前に、そもそも無いと分かっているだけで時間が浮きます。
そして、次のステップへ進む前にひとつだけ確認してください。プラグインもJavaScriptカスタマイズも、使えるのはスタンダードコース以上で、ライトコースでは利用できません。上の5つのうち、1番以外は選択肢に入らないということです。
自分の会社がどちらのコースかは、cybozu.com共通管理を開くと最初に表示される「契約状況」の画面で確認できます。開くには管理者権限が必要なので、権限がなければ社内のkintone管理者に聞くのがいちばん早いです。ここが分かっていないと、この先の話が全部空振りになります。
第2ステップ:無料プラグインで埋まる穴
kintoneには、有志や企業が公開しているプラグインがあります。アプリの設定画面から読み込むだけで機能が増えるもので、JavaScriptを1行も書かずに済みます。
無料のものだけでも、現場でよく名前が挙がる配布元が2つあります。どちらも配布元のサイトで公開されていて、「kintone プラグイン TIS」「kintone プラグイン Ribbit」のように配布元の名前と一緒に検索すると見つかります。
TIS(合同会社ぱんだ商会) — 約108種類
数の多さが特徴です。標準の穴を1つずつ埋めていく実務寄りの作りで、たとえばこんなものがあります。
・ルックアップの動的絞り込み(他の欄の値で参照先を絞る)
・テーブル内の行の自動追加、行のコピー、テーブル内での計算
・一覧画面をExcelのように直接編集する
・ガントチャート、勤務シフト表・出勤簿
・条件分岐処理(条件ごとに自動入力・更新・通知を振り分ける。条件に応じて色や書式を変えることもできます)
・レコードの重複チェック、削除レコードの復元
Ribbit(konomi.app) — 33種類
こちらは数を絞って、見た目と操作感を作り込んでいます。サイボウズ公認のkintoneエバンジェリストが個人で運営しており、プラグインのコードをすべてGitHubで公開しているのが特徴です。社内でセキュリティを説明する必要があるとき、これは効きます。
・一覧の高速検索・絞り込み
・ガントチャート(ドラッグで操作できる)、カンバンボード、カレンダー表示
・アプリ同士を関連付けずに他アプリの値を参照する/同じアプリの中の値を参照する
・入力チェック(標準では書けない複雑な条件)
・Excel(xlsx)出力、添付ファイルの一括ダウンロード
先ほど「標準ではできない」と書いた条件による色付けも、このステップで解決します。サイボウズ自身が「条件書式プラグイン」を無料で公開していて、一覧画面と詳細画面で、値に応じて文字色・背景色・文字サイズを変えられます。ただしこれは開発サンプルという位置づけで、正式なサポートの対象外です。使うなら、その前提を承知したうえでになります。
第2ステップの注意点:プラグインの落とし穴
「無料だからとりあえず入れる」はおすすめしません。実際に提案するときは、必ずこの3つを先に確認します。
1. TISは未登録だとメッセージが出ます
TISのプラグインは無料で使えますが、利用申請をしていない場合、1アプリにつき1日1回、ランダムなタイミングで利用申請の案内メッセージが画面に表示されます。
黙って導入すると「聞いていない」になります。年7,500円(税込・1ドメイン)の利用申請プランで表示は消えます。無料と言い切らず、この年額までセットで伝えるべきところです。
なお「TIS」は屋号で、システム開発大手のTIS株式会社とは別の会社です。名前だけで判断すると社内説明で食い違います。
2. サポートの範囲が配布元ごとに違います
無料プラグインは基本的に自己責任です。TISの場合、問い合わせ対応やトラブル時のサポートは年50,000円の別プランになります。Ribbitは個人運営で、コードが公開されている代わりに保証があるわけではありません。
「困ったとき誰に聞けるのか」を導入前に決めておかないと、動かなくなった時に詰みます。
3. kintone本体のアップデートへの追随は配布元任せです
kintoneは画面の作り替えが継続的に進んでいます。プラグインがそれに追いつくかどうかは、こちらではコントロールできません。基幹に近い業務に置くなら、この点を織り込んでおく必要があります。
第3ステップ:それでもカスタマイズが必要になるとき
ここまで確認して、まだ残るものがあります。そこが本当のカスタマイズの領域です。たとえば——
・自社独自の計算ロジック(複数の条件が絡む料金計算、社内規程に沿った端数処理)
・入力内容に応じて画面の見え方を細かく変える(「その他」を選んだときだけ理由の入力欄を出す、など)
・既存の業務システムや外部サービスとの、決まった形での連携(会計ソフトへ自動で転記する、など)
・プラグインでは届かない、業務固有の入力チェック(自社の型番ルールに合っているかを判定する、など)
このとき知っておくとよい制約が1つあります。JavaScriptのカスタマイズは、ブラウザで画面を開いたときにしか動きません。誰も開いていない朝7時に、勝手に動いて通知を送る、といったことはできません。決まった時刻に動かす必要があるなら、kintoneの外に仕組みを置く設計になります。
「毎朝自動で知らせたい」という要望がカスタマイズで解決すると思われがちなのは、ここが知られていないからです。
プラグインは継続課金、カスタマイズは初期費用
最後に、見落とされやすい話をひとつ。
ここまで紹介した108種・33種は無料ですが、配布元には有料の上位版もあります。そして有料版とカスタマイズでは、お金の出方が違います。
・プラグイン(有料版)は継続課金です。たとえばRibbitの上位版5つをまとめたバンドルは、年額プランで月額換算11,000円(年132,000円一括)です
・カスタマイズは基本的に初期費用です。一度作れば、追加の月額はかかりません
短期で見ればプラグインが安く、長く使うほど差が縮まる、あるいは逆転することがあります。一方で、保守やアップデート追随の手間まで含めるとプラグインのほうが安く済む場面もあります。
どちらが正しいかは業務によって変わります。大事なのは、初期費用と継続費用を並べて、比べたうえで選ぶことです。ここを比べずに決めると、あとから「思っていたのと違う」になります。
多くの要望は、3まで行かない
「これ、kintoneでできますか?」に答えるときの順番です。
1. 標準機能の設定でできないか — できないことの輪郭を知っておくと、探す時間が減ります
2. 無料プラグインで足りないか — お知らせ表示・サポート範囲・アップデート追随の3点を先に確認します
3. それでも残る分だけカスタマイズ — 費用の出方(初期か継続か)を並べて選びます
この順番で確認すれば、多くの要望は3まで行きません。そして3まで行ったものは、行くだけの理由があるものです。
私はこの切り分けそのものをサービスとして出品しています。「やりたいこと」をお聞きして、標準機能で済むのか、無料プラグインで足りるのか、カスタマイズが必要なのかを調べて、報告書としてお渡しします。プラグインで済む場合は、該当するプラグイン名をお伝えします。