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小説『仮面の意義』

【字数:約五千六百】 *** 三国志の時代から三百年経った今、中国大陸は再び三国鼎立《ていりつ》の時代へ突入している。北には斉《せい》、西には周《しゅう》、南には梁《りょう》ないし陳《ちん》。構図としても三国時代と概《おおむ》ね同じだ。そのうち、斉と周はかつて北方を支配していた魏の国が分裂して成立した国だ。斉の前身となる東魏の国は地方の大豪族であった爾朱栄《じしゅえい》の元部下たる高歓《こうかん》が支配し、周の前身となる西魏の国は武仙鎮の指導者である宇文泰《うぶんたい》が支配し、この二国が大いに争って竜虎相搏《あいう》つのを、南にある梁《りょう》の国が文雅《ぶんが》な時代を謳歌《おうか》しつつ、眠れる虎狼の如く侵攻の機会を伺《うかが》っていた。 そして、高歓が病死した年、東魏の国にて、豪勇暴戻《ぼうれい》の猛将たる侯景《こうけい》が、高歓の後を継いだ息子に従うのを良しとせず、梁の国へ寝返ってしまった。梁の武帝はこれを好機と見たようで、侯景と共に東魏と戦う事にしたが、梁の軍隊は東魏の敵では無く、各地にて敗北を重ね、侯景もまたわずか八百人の残党と共に梁へ逃亡してきた。こうして、敗軍の将となった侯景の立場は甚《はなは》だ悪くなった。なぜなら、梁は東魏との戦争に大敗した後に和睦《わぼく》する事を決定したので、東魏への手土産《てみやげ》として裏切者の侯景を殺してしまうかもしれないからだ。「ええい、このまま東魏の国へ売り渡されるくらいならば」 そう思ったのか、侯景は人生二度目の大博打《ばくち》を決行した。つまり、僅《わず》か千人あまりの兵士のみで寿春《じゅしゅん》の街から一挙に南下して梁の
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