絞り込み条件を変更する
検索条件を絞り込む
有料ブログの投稿方法はこちら

すべてのカテゴリ

1 件中 1 - 1 件表示
カバー画像

小説『飛将軍李広の感嘆』

 漢王朝の将軍である李広は大衆から愛されていた。特に漢王朝の権力から離れている人種ほど、かえって李広を素直に理解し敬愛し畏怖していたようだ。つまり、辺境に住まい、漢人たちから軽蔑《けいべつ》されている匈奴《きょうど》たちこそが敵方の憎い将軍であるはずの李広を最も尊重した。漢人の場合でも庶民や兵士の大半はこぞって李広を敬愛した。しかし、李広を正しく理解せず、信用せず、評価しない者も存在する。それが漢王朝の中心に君臨する皇帝だ。たった一人の人間の性格によって国家に所属する全ての人間の運命を決められてしまう。それが絶対権力者が存在する事による大き過ぎる弊害だろう。 元々、李広が仕えていたのは漢王朝の事実上の二代目[*1]たる文帝だった。文帝は若かりし頃の李広が狩場にて猛獣と大いに取っ組み合いをしたのを見て感嘆し、「残念だ。君は時を得なかった。もし君が高祖(初代皇帝劉邦《りゅうほう》)の時代に生まれていたら、一万戸の諸侯に成るのは簡単な事だったろうに」 と、感慨深く感想を述べた。しかし、後から思えば、その最大級の賛辞はむしろ李広の人生に差した暗い影を際立たせているようにも思える。もし、文帝がその後も李広の主君で在り続けたとしたら、李広はやがて国家を代表する大将軍になっていたかもしれない。だが、文帝も、その次の恵帝も、じきに崩御し、その後、新しく李広の主になったのは、派手な戦功ばかりを好む現在の皇帝だった。李広は若い頃から常に戦ばかりしてきたが、華々しい大合戦の将軍に成った訳では無く、また、不利な状況で戦う事も厭《いと》わなかったので、現在の皇帝のように、見栄えの良い大勝利をひどく好むが
0
1 件中 1 - 1
有料ブログの投稿方法はこちら