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「マンハッタン1999」…西55丁目の恋愛小説③

第三話「THE PENINSULA」 東京。1999年、8月。   彩乃とはそれから月に何度か定期的に何度かファックスでやり取りをしたり、国際電話で話をするようになった。僕は東京のバーで真夜中しこたま酔っては、携帯電話から彼女に電話した。でも時差の関係で、彼女はいつも起き抜けか、もう仕事に出ていて不在で、彼女はにとってはさぞかし迷惑な電話だったに違いない。  結局その夏、僕は彩乃に会いにニューヨークには行けなかった。 仕事がずれ込んでレコーディングの日程が重なり、忙しくなったこともあった。またニューヨークの英語学校が夏休みに入ることもあり、急遽、ケイスケを東京に呼んで本格的にデモテープを録ることになり、レコード会社のスタッフも参加して僕たちは結局一週間、当時、山梨県の小淵沢にあった高原の滞在型のリゾートスタジオで合宿作業をした。 ケイスケは、彼女からメッセージカードとプレゼントを持参して日本に帰ってきた。それは、ふたりでソーホーを歩いたときに、ソーホーのプリンスとグリーンの角のイタリアンカジュアルの店、REPLAYでさんざん悩んだ末に買うのをやめた夏のシャツだった。鮮やかなブルーのストライプのシャツはまるでふたりでトマトやスイートバジルを買って歩いた5月のマンハッタンの空のような鮮やかな空色だった。カードにはこう書いてあった。 「あれから、やっぱりこのシャツは絶対、亮平さんが夏に着るべきだと思い買い置きしておきましたが、夏に来ないなんて、うそつき!  でも、私も今年の夏はなぜか仕事が大忙し、このまま秋まで忙しそうで、さびしくしているヒマもないかもしれません。 本当に会いたい。早
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 「マンハッタン1999」 ・・・西55丁目の恋愛小説①

 この物語はまだ携帯電話やインターネットやEメールがオフィスや家庭に普及する直前で、コロナもテロリストもトランプもいなかった今から約20数年前のニューヨーク・マンハッタンを舞台にした、どこにでもありそうだけれど誰もが主人公になれそうなありふれた恋愛小説である。 東京在住の音楽ディレクターの堤亮平は仕事で定期的にニューヨークに通ううちに、偶然、旅行代理店の通訳ガイドとしてマンハッタンの55丁目に暮らす藤堂綾乃と知り合い、恋に落ちる。 その恋の舞台になる1999年から2000年のミレニアムに変わる頃の活気あふれるマンハッタンのレストランやホテル、料理、街の場面などが当時のありのままのリアルな情景と実名描写で詳細に表現されている。しかし、やがて2001年同時多発テロが発生、ふたりの心は離れ離れになってしまうのだが・・・。第一話「JFK」 この物語は僕がニューヨークで彼女と出会ってから約2年あまりのできごとと、それから後の時間の経過をつづったものである。その間には2001年の9月11日の同時多発テロが起きている。ある意味で、ワールドトレードセンターがまだロワーマンハッタンで美しいシルエットを誇っていた日まで、ニューヨークの物価もいまほど狂乱しておらず、ホテルもレストランも安くて、秘密にしておきたいようないいところがたくさんあって、街角にはこれから僕が書くような、名もない小さな恋の花がいくつも咲いていた。 物語に出てくるほとんどのホテルも、レストランやカフェも今は名前が変わったり、なくなったり、まったく別な店に変わってしまっている。  だからこそ、これはそんな90年代の終わり、素敵だった
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