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友達価格〈掌編小説・現代物・日常〉(1930文字)

「もういい時間だ。このまま昼飯にしよう」仕事先からの帰社の途中、そう声をかけると三人の部下達の視線が一斉に集まった。「俺の奢りだ」途端に顔が輝く三人を見ながら俺は先週の事を思い返す。大学時代の友人から連絡があったのはちょうど先週の事。互いに忙しく、年に数度季節の挨拶ぐらいはしていたが、どちらも仕事で何をしているのかとの話まではしておらず、友人が会社を辞めていた事もこの時に初めて聞いた。どうやら脱サラをして、飲食店を始めたそうだ。そしてその開店日は来週から・・・・・つまり今日からなのだが、初日に閑古鳥が鳴いてるのも格好が付かないからと、俺に連絡をよこしたらしい。『友達価格で安くするから来てくれよ!』そう言う友人に内心ため息をついたが、その場は了承の返事のみで終えた。教えられた場所に行くと、開店初日の客入りは悪くないようだ。わざわざ俺が客として来なくても問題ないほど。初めての経営で、心配しすぎなのだろう。この友人はもともと異様に心配性な所があるのだ。それゆえに妙な所で躓く事もあり、先週の彼の言葉にその不安がよぎった為に、今回仕事ついでと称して来てしまったのだが。「ご友人、宣伝はしっかりされてたみたいですね」「立地も良いですし」「お店の外観も素敵」道すがら友人の店だと伝えたからかそんな部下達の言葉に苦笑しつつも、軽く頷いた。店に入るなり俺に気づいた友人は嬉しそうな表情を見せたが、客の対応に追われていたらしく申し訳なさそうにする。俺はそんな彼に軽く手を振って応えた。「価格も適正・・・かな」メニュー表を見ながらおそらく無意識に呟いた部下の一人に「昼、食いに来ただけだぞ」ハッとして、部下は
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