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希望に満ちた朝に

今、空港バスで空港に向かっている。 行きはすごくテンションが上がっているのに、帰りはいつもこうだ。 日常生活という狭い世界に引き戻される感覚。 特に帰りの空港バスの中では、そんな感覚がピークを迎える。 これほど、日常生活から離れた所まできて、結局は何も変わっていない自分に気が付くからだろうか? 場所が変わったとしても、結局人生がひっくり返るようなことはめったに起こらない。 そのことに気づいて愕然とする。 そう、たとえ場所が変わったとしても、自分から逃れることはできないのだ。 「自分から逃れる」と言うと少し言葉が過ぎるかもしれない。 言い換えると、自分の生き方はそう簡単には変えられないということだ。 もし、場所が変わったとしても、新しい場所で相変わらず前の場所の自分として生き続ける。 ここにある男がいる。 これから男はある経験をする。まさに人生がひっくり返るような出来事だ。 いや、先を急ぐのはやめよう。 ゆっくりとこの男の話を進めてみよう。 男は道を歩いている。昼休みに近くのコンビニに弁当を買いに行こうとしている。 今日はどの弁当にしようかと考えているときが、男にとっては日常の激務の中での唯一の楽しみだ。 最近は忙しい日々が続いていたから、「自分へのご褒美」としてすこし高いタラコ弁当にしようかと考えている。 そんな比較的、気楽な時間を男は過ごしていた。 場所は都会だ。男の周りには幾多のビルが屹立している。 男はとある工事中のビルに差し掛かった。 ビルの中では作業員が忙しく動き回っている。納期が近づいていて、追い込み時期に入っていたのだ。 だが、工事現場の周りはすべて仮囲いの鉄板で
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