140.「銃の音、聞いたことあるんか?」…拳銃を懐に忍ばせた“支離滅裂”な訪問者〜
「銃の音、聞いたことあるんか?」…拳銃を懐に忍ばせた“支離滅裂”な訪問者〜実録・ボディーガード体験談
規制の厳しい日本にも少なからず存在する「銃」。拳銃が絡む事件は海外よりも少ないとはいえ、日本でも決して絵空事ではありません。今回は、ボディーガード歴27年のMさんによる、国内ではまれな拳銃と対峙(たいじ)した際の体験談をご紹介します。(個人情報保護の観点から、会話の内容などに一部アレンジを加えています)
「会いに行くから待ってろ」…元暴力団員からの電話
今から15年ほど前、ある会社経営者を警護していたときの出来事です。業種は言えませんが、依頼人の会社は相当やんちゃな人材も受け入れており、元受刑者や薬物の使用歴がある人もいました。ただし、社長本人は反社会的勢力と縁のない人です。
当時は、その業界全体に前科や逮捕歴を持つ従業員が多く、関係者ばかりか、顧客とのトラブルも絶えなかったそうです。社長は自社だけでなく業界の健全化を目指していたため、疎ましく思う者も少なくありませんでした。実際、警護依頼の数カ月前から複数の脅迫を受けており、周囲の勧めで取りあえず2週間、ボディーガードを雇うことにしたのです。しかし社長自身は、警護を必要と感じていないようでした。
警護は私1人、時間は平日の午前8時から午後6時の間です。しかし、警護した2週間の間にトラブルは起きず、最終日に社長は「頼んで損したな」と笑っていました。これは警護の“あるある”です。付加価値を伝えられなかった警護側にも責任はありますが、危険なトラブルが起こらないと、「損」と感じる依頼人は少なくありません。とにかく、このときは何
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