武蔵御嶽神社と鉄と(パワースポット漫遊記３)

　私の出身地は東京の西多摩郡です。

この地域は、昔は埼玉県の秩父と文化圏がほぼ同じだったようです。今でも食文化や方言といったものに多くの共通性がみられるのですが、その中に、この地域特有の信仰である「オオカミ信仰」があります。

　大口真神というオオカミの神様が秩父の三峰神社と青梅の武蔵御嶽神社にそれぞれ祀られております。オオカミは稲を食い荒らすネズミを捕ることから農業の神として崇められています。

　三峰神社も御嶽神社も「ヤマトタケルの道案内をしたオオカミ」が神として祀られていること、役小角の修行場であったこと、が共通しております。修験道の場として、この二つを結ぶ何かがあったのでしょう。

　修験道は元々、鉄が産出する場所を探索するための修行から始まったという説があります。また、桧原村から秋川流域にかけて、古代は製鉄が行われていたらしい、とか、渡来系の人々が林業を行うためにやってきて住み着いたといった話もあります。

　日本の製鉄は、水辺に生える水生植物の茎を覆うように水に含まれる鉄分が少しずつ付着していって作られる「高師小僧」と呼ばれる鉄を材料としたものから、渡来系の技術者によって伝えられた砂鉄を使った製鉄へと移行していったのですが、鉄は農業の道具を作るのに役立ち、また林業においても斧のような刃物が必要ですから、古代の日本においては、鉄を得るということは宝を得るに等しいものであったようです。

　鉄に関わる神様といえば、須佐之男命です。スサノオ、のスサは鉄を意味しており、アメノムラクモノツルギ（鉄器）をヤマタノオロチ（川）から取り出す、というところからも製鉄を暗示しています。ちなみに五行陰陽では、金生水といって金は水にパワーを与える関係になりますが、砂鉄は川から見つかるので、現実でも水と金属には関連があるのです。

　三兄弟のはみ出し者のスサノオ、その子孫であり多くの兄弟から疎まれいじめられた大国主命（オオナムチ）、父である天皇によって各地を征伐するという名目で遠ざけられていたヤマトタケル、この三柱の神様は親兄弟から遠ざけられていること、鉄に関係する事が共通しており、オオナムチは御嶽神社の御祭神でもあります。オオナムチがなぜ製鉄に関係するかというと、オオナ＝大穴＝タタラ場なのです。

　ヤマトタケルを案内したオオカミとは、あるいは鉄の在りかを案内する山岳の民か修験者の原型のような人物だったのかもしれません。

と、長々と鉄の話を書いてしまいましたが、これはかなり私の想像も含んだものですので、皆様は、鉄の事など考えず、武蔵御嶽神社の清浄な空気を素直に吸い込んでいただければ、と思います。

　それでは簡単に参拝までの道のりを書いていきましょう。

　JR青梅線、御嶽駅で降り、目の前の道路を渡ったすぐ先にバス停があります。１時間ぐらい歩いて御岳山まで行くこともできますが、平均的な体力の方にはバス利用をお勧めします。終点で降り、しばらく上るとケーブルカーの滝本駅がありますので、そこからはケーブルカーで上りましょう。PASMO等が利用できます。

　ケーブル駅を降りてから２５分の山道を、鳥の声を聴いたり植物を観察したりしながら歩き、お土産物屋兼お食事処が数件並ぶ場所を抜け、脇に手水場がある鳥居から拝殿まで続く長い階段を登り切れば武蔵御嶽神社の本殿が見えてきます。私などはこの時点ですっかり息が上がってしまいますので、些細な悩みとか欲などは吹っ飛び、まっさらな気持ちで参拝できます。そもそも、神社でお参りする際は、自分の名前と住所を伝え、ご挨拶に来ましたという気持ちで参拝するのが良いので、息が上がっているくらいが余計な事を考えずにすみますので、ちょうどよいかもしません。なお、階段を上るのは無理そう、という場合は女坂がありますので、そちらを上ってください。

参道はこんな感じです。

この向かいには宝物殿があり、ニホンオオカミの剥製も展示されています。

神社の裏手には、太占祭を行う場所や、大岳山にある奥の院を遠くから拝める場所（見えませんが）、大口真神様が祀られている社や、様々な神様が祀られている社などがある広い場所があります。とても清々しい気分になれる場所で、私はパワーをいただくというよりは、リニューアルしていただいているような気持ちになれるのですが、これは個人的な感覚なので、他の方はまた違った感想を持たれるかもしれません。

　新たな気持ちで頑張りたい、という時に、武蔵御嶽神社にお参りするのはいかがでしょうか。

　今回は、異なる時期に撮影した写真を組み合わせております。トップの写真に写っている花はレンゲショウマで、御嶽山では７月下旬から８月下旬にかけて花を咲かせているのを見られます。