【はじめに】料金表を並べただけの比較表は、会議で使われない
競合調査というと、まず思い浮かぶのは料金表の横並びです。
自社と競合3〜5社の月額料金を一覧にして、「うちは真ん中くらいか」で終わる。ところが、その比較表が実際の意思決定、つまり価格を変えるのか、対象顧客をずらすのか、機能に投資するのか、といった判断に使われることは、あまり多くありません。
理由は単純で、料金は「結果」であって「理由」ではないからです。
競合が安いなら、その裏には対象顧客の違い、提供範囲の絞り方、サポートの薄さなど、必ず構造があります。
比較リサーチの価値は、料金の数字そのものではなく、その構造を読み解くための「観点」をどう設計するかにかかっています。
本記事では、当ラボが競合比較リサーチで実践している観点の決め方を、発注する側の視点で整理します。
■ 観点は「自社の意思決定に必要な問い」から逆算する
観点を決める出発点は、競合の情報項目を網羅することではありません。
「この調査の結果を見て、自社は次に何を決めるのか」という問いです。
たとえば、「来期、自社サービスの料金を改定すべきか」を決めたいなら、必要な観点は競合の料金水準そのものより、「競合は料金の安さを何で吸収しているのか」に寄ります。
逆に「新規参入すべき市場かどうか」を決めたいなら、競合の対象顧客と提供範囲の空白が重要になります。
問いが先にないまま項目だけを増やすと、情報量の多い、しかし何も決められないレポートができあがります。
当ラボでは、調査の前に「どの問いに答えるための比較か」を相談の中で確認し、観点をその問いに沿って設計しています。
観点とは、表の列の名前であると同時に、調査の設計図そのものです。
【比較する相手の選び方にも注意が要る】
観点の前に、もう1つ決めることがあります。比較の相手、つまり対象社の選び方です。
同業の直接競合だけを並べると、「業界内での位置」は分かりますが、「顧客が他に何へ逃げているか」は見えてきません。
実務では、対象社を次の3層で考えることが多くあります。
第1に、同じ市場で正面からぶつかる直接競合。
第2に、顧客の課題を別の方法で解いている代替手段(別の業態や、自前で対応する内製も含みます)。
第3に、現時点では小さいものの、伸び方次第で競合になる新興の事業者です。
どの層まで含めるかは、やはり最初の問いに依存します。
価格改定の判断なら直接競合が中心で十分ですが、市場参入の判断では代替手段まで含めないと、空白に見えた市場が実は埋まっている、という見落としが起きます。
▲ 観点の例:よく使う6つの切り口
問いの立て方は事業によって異なりますが、多くの比較で土台になる観点は、大きく次の6つです。
・料金体系:月額か買い切りか、初期費用の有無、プランの階段の刻み方、無料枠や試用期間の設計。「いくらか」だけでなく「どう払わせるか」を見ることで、競合がどの顧客層を取りにいっているかが見えてきます
・対象顧客:業種、規模、個人か法人か。同じ料金でも、相手が違えば競合度はまったく変わります
・機能・提供範囲:何を含み、何を含まないか。範囲の「狭さ」は弱みとは限らず、絞ることで価格や品質を成立させている場合があります
・導入・運用の手間:契約から利用開始までの手順、設定や学習のコスト、移行支援の有無。顧客が乗り換えをためらう理由は、価格より手間にあることも少なくありません
・サポート:対応時間、窓口の種類、回答速度の公表の有無、FAQやマニュアルの充実度。継続率に直結する観点です
・実績の見せ方:導入社数、事例の具体性、評価や受賞の提示方法。「何を証拠として見せているか」は、その会社がどの層に信頼されたいかを示します
大事なのは、この6つをすべて埋めることではありません。
自社の問いに直結する観点を選び、優先順位を付けることです。観点が多すぎる表は、かえって読み手の判断を鈍らせます。
【比較表の「出典リスト」は、読み手の検証装置】
観点が決まれば、次は各セルをどう埋めるかです。
ここで当ラボが徹底しているのは、すべての記載に根拠となる出典(公式サイトや公式資料のURL)と確認日を付けることです。
競合情報は移ろいやすいものです。料金改定、プランの統廃合、キャンペーンの終了。先月の比較表が、今月はもう古いということが起こります。
出典と確認日があれば、読み手は「いつの時点の、どこを見ての記載か」を確かめながら表を読むことができ、重要な判断の前に該当箇所だけ再確認することもできます。
出典のない比較表は検証のしようがないため、会議の俎上に載せた瞬間に「これ、本当か」で止まってしまいます。
もう1つ、読み方の注意点があります。比較表で「公式情報に記載がない」項目の扱いです。
当ラボでは、公開情報で確認できない観点は、推測で埋めず「公式情報では未確認」と明記しています。
一見すると情報の欠落に見えますが、実はこの「書かれていないこと」自体が示唆を持つ場合があります。
たとえばサポートの回答速度を同業のどこも公表していないなら、それは業界として前面に出していない論点であり、自社が公表すれば差別化の材料になり得る、といった読み方ができるからです。
【まとめ】
競合比較リサーチの成否は、集めた情報の量ではなく、観点の設計で決まります。
まず「自社は次に何を決めるのか」という問いを立てること。問いに直結する観点を選び、優先順位を付けること。各セルの記載には出典と確認日を付け、検証できる形にすること。確認できないものは未確認と明記し、「書かれていないこと」も読み解くこと。この4点です。
料金表の横並びから一歩進んだ比較が必要なときは、観点の立て方から見直してみてください。
なお、当ラボではココナラで「競合3〜5社の比較リサーチレポートを作成します」というサービスを出品しています(15,000円〜)。
調査の前に観点のすり合わせを行い、比較表には出典リストを添付する進め方を標準としています。
観点の設計から相談したい場合も、まずは見積り相談でお声がけください。