タフピッチ銅(C1100など)をろう付する際、加熱時間が長くなると「リン」に起因する粒界割れが発生するリスクが高まります
この現象のメカニズムと注意点は以下の通りです。
(1)粒界割れのメカニズム
タフピッチ銅には、微量の酸素が酸化銅(Cu₂O)の形で含まれています。
ろう材にリンが含まれている場合、以下の反応が起こります。
① リンの拡散:
高温状態でろう材中のリンが銅内部の結晶粒界へ拡散・侵入します。
② 蒸気の生成:
360℃以上でリンが結晶粒界の亜酸化銅Cu2Oに出会うと反応を起こし十酸化四リンの蒸気を生じます。
反応式:4P + 10Cu2O → P4O10 + 20Cu
③ 内部圧力とクラック:
結晶粒界で生成された十酸化四リンの蒸気は銅粒内に拡散できないため、結晶粒界に閉じ込められます。
高圧の十酸化四リンP4O10によって結晶粒界が押し広げられ、膨れ(ボイド)や微細なクラック(粒界割れ)が生じます。
(2)加熱時間が与える影響
加熱時間が長くなればなるほど、以下の要因により割れが深刻化します。
①リンの侵入深さの増大:加熱時間に比例してリンがより深く内部の結晶粒界まで拡散し、結晶粒界に膨れ(ボイド)や微細なクラック(粒界割れ)が生じる範囲が深くなります。
②ボイドよびクラックの連結:加熱時間に比例してボイドよび微細クラックの連結が進むため、結晶粒界の割れが増えて長くなります。
このため、ろう材近傍のタフピッチ銅で強度の低下と延性の低下(脆化)が生じます。
(3)対策
①母材の変更:
リン脱酸銅(C1201、C1220)または無酸素銅(C1020)を使います。空調・冷凍配管で脱酸銅管が使われるのはこのためです。
②ろう材の変更:
銀ろう(BAg系)とフラックスの組み合わせにします。
③条件の管理:
加熱は短時間・低温で行い、ろう材の過剰供給を避け、すきま(0.05〜0.2mm程度)を適正に保ちます