霊視鑑定師・遼真の怪異記録

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 【怪異記録01】三回叩く部屋


普段は電話占いを通じて、復縁や相手の気持ち、これからの恋愛の行方など、恋愛相談を中心に霊視鑑定を行っている。

ただ、20年以上この仕事に携わっていると、ときには恋愛とはまったく関係のない、奇妙な相談を受けることもある。

亡くなった人の声が聞こえる。

誰もいない部屋で、人の気配がする。

そして、霊的なものよりも、生きている人間のほうが恐ろしいと感じたこともあった。

中には、何年経っても忘れられない出来事がある。

これから少しずつ、そんな私が経験してきた不可思議な出来事を、ここに書き残していこうと思う。

最初にお話しするのは、ある女性からの除霊依頼がきっかけで訪れた、一軒の家での出来事だ。

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以前、ある女性から除霊の相談を受けたことがある。

50代くらいの女性だった。

半年前にご主人を亡くしてから、毎晩二階の寝室で奇妙な音がするという。

決まって夜の11時半頃。

誰もいないはずの寝室の扉を、内側から三回叩く音がするらしい。

最初は家鳴りだと思っていたそうだ。

ところが、ある晩、扉の向こうから声が聞こえた。

「開けてくれ」

亡くなったご主人の声だったという。

女性はすっかり怯えていた。

どうしても一度、家を見てほしいというので、後日伺うことにした。

古い二階建ての一軒家だった。

玄関に入ったとき、特に嫌な気配は感じなかった。

こういう仕事を長くしていると、依頼された内容と実際の状況が食い違うことも珍しくない。

だから私は、最初から霊の仕業だと決めつけることはしない。

女性に案内されて二階へ上がった。

廊下の突き当たりに、問題の寝室があった。

そこで少し引っかかることがあった。

扉に、後から取り付けたような金具があったのだ。

外側から施錠できる、簡単な掛け金だった。

「これはいつ付けたんですか?」

「主人が亡くなってからです」

「どうして?」

「夜中に出てこられると困るので」

妙な答えだった。

亡くなった人間が出てくるのを防ぐために、物理的な鍵を掛ける。

怖さのあまり、そういう行動を取る人もいるのかもしれない。

ただ、扉の下には、何かを何度も出し入れしたような擦れた跡があった。

そして、かすかに生活臭がした。

私は女性に尋ねた。

「ご主人は、病院で亡くなられたんですか?」

「いいえ、自宅です」

「こちらの寝室で?」

「はい」

「そのとき、お医者さんは?」

女性は答えなかった。

代わりに、少し不機嫌そうな顔をして言った。

「先生、除霊をお願いしているんです。そんなこと、関係ありますか?」

私はそれ以上聞かなかった。

それから一階の居間で、もう少し詳しく話を伺った。

女性は何度も時計を気にしていた。

11時20分を過ぎた頃、急に落ち着きがなくなった。

「もうすぐです」

そう言って、女性は階段を見つめた。

11時半。

二階から音がした。

コン。

コン。

コン。

確かに三回だった。

そして、しばらくすると、男の声が聞こえた。

「……頼むよ」

ひどく弱々しい声だった。

女性は私の顔を見た。

「ね? 主人でしょう?」

私は返事をしなかった。

あの声は、少なくとも私には、霊の声には聞こえなかった。

もう一度、二階へ上がろうとしたときだった。

女性が私の腕を掴んだ。

「開けないでください」

驚くほど強い力だった。

「どうしてですか?」

女性はしばらく黙っていた。

それから、ぽつりと言った。

「やっと静かになってきたんです」

私は、それ以上の鑑定を続けることができなかった。

帰り支度を始めると、女性は何も言わずに玄関まで見送ってくれた。

靴を履いていると、背後から声を掛けられた。

「先生、一つだけお願いがあるんですけど」

「何でしょう?」

「主人に、もう死んでいるんだって、先生からも言っていただけませんか?」

私は思わず振り返った。

女性は、困ったように笑っていた。

そして、こう続けた。

「私が何度説明しても、あの人、まだ生きているって言い張るんです」
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