製造現場では、日々さまざまな情報を扱います。
生産実績、工程進捗、完了予定日、納期、在庫、仕掛品、図面、作業指示など、管理する情報は少なくありません。
こうした業務について、次のような問題が発生していないでしょうか。
・複数のシステム,Excelへ同じ情報を何度も入力している
・毎日の集計作業や会議資料作成に時間がかかる
・担当者によって入力方法や判断基準が違う
・進捗や完了予定日をすぐ確認できない
・Excelやマクロが特定の担当者に依存している
このような問題があると、「Excelを修正したい」「マクロで自動化したい」「新しいシステムを導入したい」と考えたくなります。
しかし、自動化する前に現在の業務を整理しておかないと、不要な作業まで自動化したり、入力方法の違いによって正しく集計できなかったりする可能性があります。
今回は、製造現場の業務を自動化する前に確認したい5つのことを紹介します。
1.その業務の目的は明確になっているか
最初に確認したいのは、「何のためにその業務を行っているのか」です。
例えば、進捗管理の目的には、次のようなものが考えられます。
・納期に間に合うか確認する
・優先して作業する案件を決める
・作業が止まっている工程を把握する
・顧客からの問い合わせに回答する
・生産会議で当日の作業内容を決める
目的が曖昧なままでは、必要な情報と不要な情報を区別できません。
長年使用している管理表には、「以前から入力しているから」という理由だけで残っている項目もあります。
自動化を検討する前に、管理表の各項目が、誰のどのような判断に使われているのかを確認する必要があります。
2.入力する項目と表記方法は統一されているか
同じ情報でも、担当者や部署によって入力方法が異なる場合があります。
例えば、同じ品番について、次のような表記が混在することがあります。
・KM-120-A
・KM120A
・km-120-a
・KM-120-A 再製作
人が内容を確認する場合は、同じ品番だと判断できるかもしれません。
しかし、Excelの関数やプログラムで集計すると、別の品番として扱われる可能性があります。
また、品番欄に「再製作」「至急」「材料待ち」などの情報が入力されていると、品番と注記を分けて管理できません。
自動化する前に、次のようなルールを整理する必要があります。
・必ず入力する項目
・使用する正式な表記
・数量や時間の単位
・自由記述欄へ入力する内容
・選択式にする項目
・入力してはいけない内容
入力方法が統一されていない状態で集計を自動化しても、正しい結果を安定して得ることは困難です。
3.誰が、いつ入力するか決まっているか
入力項目だけでなく、入力する担当者とタイミングも重要です。
例えば、前日の生産実績を翌朝の会議で使用する場合、会議直前まで入力されなければ、集計担当者は確認や修正に時間を取られます。
一方で、作業者が作業終了後に入力するのか、班長がまとめて入力するのかによっても、必要な運用は変わります。
確認する内容の例は次のとおりです。
・誰が入力するか
・どの時点で入力するか
・入力の締め時間はいつか
・入力内容を誰が確認するか
・入力されていない場合に誰へ連絡するか
・誤りを見つけた場合に誰が修正するか
システムを導入しても、入力する担当者や期限が決まっていなければ、必要な情報は揃いません。
入力画面を作ることと、情報が正しく登録されることは別の問題として考える必要があります。
4.例外が発生したときの処理は決まっているか
製造現場では、通常の作業手順だけでは処理できない状況が発生します。
例えば、次のようなケースです。
・作業を途中で中断した
・一部の数量だけ完成した
・不良が発生して再製作になった
・使用予定の加工機を変更した
・外注工程で作業が止まった
・入力済みの実績数量に誤りがあった
・同じ実績を二重に入力した
通常の流れだけを想定して自動化すると、こうした例外を処理できなくなります。
その結果、現場がシステムを使わず、別のExcelや紙へ記録し始めることも考えられます。
自動化する前に、どのような例外が発生しているかを現場へ確認し、処理方法を決めておくことが重要です。
すべての例外を最初から自動処理する必要はありません。
頻度の低い例外については、担当者が内容を確認して処理する方法も選択肢になります。
5.自動化する作業と人が判断する作業を分けているか
すべての作業が自動化に適しているわけではありません。
自動化に向いているのは、一定のルールで繰り返す作業です。
例えば、次のような作業です。
・複数ファイルのデータを結合する
・製番や品番ごとに数量を集計する
・入力漏れや重複候補を表示する
・納期が近い案件を抽出する
・定型の会議資料を作成する
・進捗を一覧に表示する
一方で、次のような作業には、人による判断が必要になる場合があります。
・どの案件を優先して製作するか
・予定変更による影響をどう判断するか
・設備や担当者の状況を踏まえて工程を変更するか
・例外案件をどのように処理するか
人が判断する部分まで無理に自動化すると、複雑な仕組みになり、修正や保守が難しくなります。
定型処理は自動化し、状況に応じた判断は人が行うなど、それぞれの役割を整理することが大切です。
自動化より先に業務を整理する
製造現場の業務改善では、必ずしもシステム開発が最初の対応になるとは限りません。
業務手順や運用ルールを見直すだけで、改善できる問題もあります。
例えば、次のような改善です。
・入力する項目を統一する
・正式なファイルと保存場所を決める
・入力担当者と締め時間を決める
・不要な転記や管理項目を廃止する
・工程状態の意味を統一する
・例外発生時の連絡方法を決める
こうした内容を整理したうえで、自動化に適した範囲を切り分けると、必要な機能が明確になります。
また、Excelで対応できること、小規模なツールが必要なこと、個別の業務システムを検討すべきことも判断しやすくなります。
まとめ
製造現場の業務を自動化する前に、次の5点を確認することが重要です。
1.業務の目的は明確になっているか
2.入力項目と表記方法は統一されているか
3.入力する担当者とタイミングは決まっているか
4.例外発生時の処理は決まっているか
5.自動化する作業と人が判断する作業を分けているか
現在の業務を整理せずに自動化すると、不要な作業や曖昧なルールを残したまま、仕組みだけが複雑になる可能性があります。
まず現場の作業方法と情報の流れを確認し、運用改善で対応することと、自動化することを分けることが、継続して使える仕組みづくりにつながります。
業務を改善したいと思っていても、日々の作業を続けながら、問題点や原因を客観的に整理するのは簡単ではありません。
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