人の記憶は曖昧で、メモは確実

人の記憶は曖昧で、メモは確実

記事
コラム
金曜の17時40分

週報のフォーマットを開いて、最初の欄で止まります。今週、何をしたか。
すぐには出てきません。カレンダーを月曜まで遡り、チャットの自分の発言を追いかけ、タスク管理の完了欄を眺めて、ようやく3行が埋まります。
かかった時間は25分でした。

作業そのものは、もう終わっています。終わった仕事を思い出すためだけに、金曜の25分を毎週払っているわけです。

■ 書く時間ではなく、思い出す時間を払っている

週報がしんどいのは文章を書くのが苦手だからではなく、やったことは覚えているつもりでも、いざ欄を前にすると出てこないもので、特に、細かい対応の積み重ねだった週ほど何ひとつ浮かんできません。そういう週にかぎって「特になし」とは書けないので絞り出すように埋めるのですが、この絞り出す作業が、週の終わりにいちばん気力を使う仕事になっている人は多いはずです。

週報の様式は、5年前から変わっていません。しかも、読まれているかどうかが分かりません。コメントが返ってくることは、ほとんどない。それでも出さないと催促が来るので読まれていないとも言い切れず、宛先の見えない書類を、毎週25分かけて書き続けていることになります。何年も続いていて、誰も止めません。止める権限のある人は、その25分を払っていないからです。

「今週、自分は何もしていないのでは」。金曜の夕方にこの気分になったことのある方には、この記事は届くと思います。


■ 記録は全部残っているのに、記憶から書いている

理由ははっきりしていて、順序が逆になっていることです。

思い出す作業をしているとき、私たちは記憶のほうを探していますが、その週の記録は、3か所ほどに散らばったまま、全部どこかに残っています。会議はカレンダーに件名つきで並んでいますし、依頼と回答はチャットに残り、完了したタスクには日付が付いていて、材料は最初からそろっています。記録が手元にあるのに記憶から書き始めるので、思い出せない週は書けない、という状態になっていました。


■ カレンダーとチャットを、整形せずに貼る

やることは単純で、記録を集めて、そのまま貼ります。整形も並べ替えもしません。見出しを付けたり、時系列に並べ直したりする必要もない。カレンダーの1週間分、チャットで自分の発言を検索した結果、完了したタスクの一覧。この3つをコピーするところまでで、2分ほどです。

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以下は、私の今週の作業記録です。
カレンダーの予定、完了したタスク、チャットでの自分の発言が、
順不同で混ざっています。これを週報の下書きにしてください。

まとめ方
・「進んだこと」「止まっていること」「来週やること」の3つに分ける
・1項目は1行で、作業名と、どこまで進んだかを書く
・同じ案件の記録は、1行にまとめる
・上司への相談が要ると読み取れる箇所は、行末に(相談)と付ける

書かないこと
・記録に出てこない成果、所感、意気込み
・記録にない数字や日付

今週の記録
(ここに貼り付ける)
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この形を、いまお使いの週報の様式へ寄せて組み立てる出品も出しています。実際の様式と、記録がどこに残っているかを伺えたら、貼るだけで下書きが出る入力シート、コピー元を書いた手順書、上司へそのまま出せるサンプルをそろえます。1件10,000円です。様式の確認にかかるやりとりも、この中に含みます。

効くのは、最後の(相談)でした。週報を書いていると、困っていることは書きにくくなります。愚痴に見えるのが嫌だからです。ところが記録から機械的に拾わせると、判断を待っている案件が、感情の乗らない一行として並びます。私の週報はこれで、報告する紙から相談を切り出す紙に変わり、上司からの返信も、そこにだけ付くようになりました。

私の場合は25分が7分になりましたが、作業の種類や、記録をどれだけ残しているかで変わるはずなので、来週の1回で、貼り始めてから下書きが出るまでを測ってみてください。

ただ、7分になったことより大きい変化があって、金曜の夕方に「自分は今週なにをしていたんだろう」と考え込む時間が、まるごと消えたことです。記録を貼ると、やったことは意外とあります。忘れていただけでした。


■ 記録に残らない仕事だけは、自分で3行足す

出てこないものもあります。電話と、立ち話と、席まで来た相談です。

このあたりは記録に残らないので下書きが出たあとに自分で足しますが、私は3行と決めていて、それ以上は思い出そうとしません。思い出す作業に戻ってしまえば、せっかく手放した元の25分に、そのまま近づいていくからです。完全な週報より、7分で出る週報のほうを選びました。

所感の欄がある職場では、そこも自分で書きます。今週の手応えや来週の不安は記録に残らないので、ここをAIに埋めさせると、当たりさわりのない文が並んで、読む側にもすぐ見抜かれます。


■ 「止まっていること」を出すのは、こわい

3つに分けると、進みの悪かった週は「止まっていること」ばかりが並びます。

正直に言えば、これを出すのはこわい。何もしていない週に見えるのではないか、と考えて、私も最初は書き直そうとしました。それでも出したのは、止まっている案件が並んでいる紙のほうが助けは早く来ると分かったからで、私の場合は、翌週の月曜に上司から2件の判断が返ってきました。隠していたときは、翌々週まで動いていません。

週報や日報の型を社内の様式へ寄せる仕事も、10,000円で受けています。もしあなたが週報を受け取る側なら、次の1本にひとつだけ返信してみてください。「(相談)と付いている行、いつ話しましょうか」と。

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