Salesforce が、FY2026(2026会計年度)にソフトウェアエンジニアの新規採用をゼロにしました。
CEO・マーク・ベニオフの言葉を、そのまま引いておきます。
「AIエージェントがコードを書いてくれているから、追加で人を雇う必要がない」
同社の売上目標は””461億ドル””。
その開発力を、もはやエンジニアではなくAIコーディングツールが担っているといいます。
では代わりに何を増やしたか。
営業担当を 20%増やしました。
この数字を、少し静かに見てほしいのです
ものすごい話だと思います。
AIが「作る」を丸ごと引き受けた結果、人間に残ったのは「売る」でした。
ニュースとして読めば「エンジニアがAIに代替された」という恐怖の話になります。
でも私には、少し違う景色が見えています。
「売る」は、つまり「信頼を築く」ということです。
17年ほど外資系で法人営業をしていた私には、これが骨身にしみます。
商談を取るのに、何ヶ月もかかることがあります。
信頼が崩れるのは、一通のメールで足ります。
コードは正確に書けばいい。でも、信頼はそうではありません。
相手の言葉の裏にある感情を読んで、何を届ければ安心してもらえるかを考えて、
それでもなお「最後は私が責任を持つ」という姿勢を見せる。
AIは、謝れません。
背負えません。
「私が責任を取ります」とは言えません。
Salesforce が営業を増やしたのは、おそらく打算ではなく、事業の真理に従ったからだと思います。
「速さ」が武器でなくなった後に残るもの
AIが登場して以来、速さや量の競争は急速に意味を失っています。
10年かかった開発が13日で終わる、という話がすでに出ています。
(Salesforce は Claude Code を使い、231日分の工程を13日で完了させたと報告しています。)
でも、速さで差をつけられない世界になったとき、
人は何を見て「この会社に頼もう」と決めるのでしょうか。
私には、答えがあります。
顔です。声です。「この人なら」という感覚です。
それは、積み重ねでしか作れません。
一夜では生まれません。
そして、AIにはまだ、作れません。
## 騒がなくていい理由
この話を「エンジニアはもう終わり」と読む人がいれば、
「やっぱり人間にしかできないことがある」と安堵する人もいます。
どちらも、少しずれていると私は思います。
大切なのは、今この瞬間も変わり続けている地形の中で、
自分が何者でありたいかを、静かに確かめることではないでしょうか。
AIが速く走ってくれる。それはいいことです。
だからこそ、どこへ向かうかを決める人間の判断が、以前より重くなっています。
これが、私がいつも「凪」の言葉で表現しようとしていることです。
波は騒がしい。でも波の下の海は、動きません。
何が変わって、何が変わらないのか。
その静かな見極めを、手放したくないと思っています。
速くするのは、AI。決断するのは、あなた。