ムーン&スペンサーの色彩調和論とは?「美度」まで分かりやすく解説

ムーン&スペンサーの色彩調和論とは?「美度」まで分かりやすく解説

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デザイン・イラスト
前回は、オストワルトの色彩調和論について学びました。

オストワルトは、

「調和は秩序に等しい」

という考え方を示していました。

では、「美しい配色」をもっと客観的に判断することはできないのでしょうか?

今回取り上げるのが、ムーン&スペンサー(Moon & Spencer)の色彩調和論です。

色の組み合わせを「なんとなくきれい」で終わらせず、色同士の関係から調和・不調和を考え、さらに配色の美しさを数値で表そうとしたところが興味深い理論です。

ムーン&スペンサーとは?

ムーンとスペンサーは、1940年代に色彩調和について研究したアメリカの研究者です。

彼らは、マンセル表色系をもとに色同士の関係を考え、色相・明度・彩度それぞれの差によって、調和する組み合わせと不調和になる組み合わせを分類しました。

ポイントになるのが、

「色同士がどれくらい離れているか」

という考え方です。

色が近ければ必ず調和する、遠ければ必ず不調和になる、という単純なものではありません。

その「差」によって、調和する領域不調和になりやすい領域が存在すると考えました。

「調和」と「不調和」の領域

ムーン&スペンサーは、色同士の差を大きく、

同一(Identity)
類似(Similarity)
対比(Contrast)

という調和する関係と、その間に存在する**曖昧な関係(Ambiguity)**に分けて考えました。

ここが重要なポイントです。

① 同一(Identity)

色同士の差がほとんどない関係です。

非常に近い色なので、自然なまとまりが生まれやすくなります。

例えば、

「ほぼ同じ明るさの青」
「わずかに違うグレー」

など。

変化は小さいものの、統一感をつくりやすい配色です。

② 類似(Similarity)

ある程度の違いはあるものの、互いに似ている関係です。

例えば、

青と青緑
明るい青と少し暗い青

など。

適度な変化がありながら共通性もあるので、まとまりを保ちやすくなります。

Webデザインでも、メインカラーと少し明るい・暗い色を組み合わせることがありますね。

③ 対比(Contrast)

色同士の差が大きい関係です。

「そんなに違ったら不調和になるのでは?」と思いますが、ムーン&スペンサーでは、十分に差が大きいものは、逆にはっきりした関係となり調和し得ると考えます。

例えば明るい色と暗い色など、明確な違いがあることでメリハリが生まれます。

注意したい「曖昧な領域」

ここがムーン&スペンサーの理論で面白いところです。

少し違うけれど、似ているとも言い切れない。
でも、対比と呼べるほど違いも大きくない。

このような中途半端な差を、調和しにくい曖昧(Ambiguity)な領域として考えました。

つまり、

差が小さい → 同一として調和
適度な差 → 類似として調和
中途半端な差 → 曖昧で不調和
十分な差 → 対比として調和

という考え方です。

「似せるならきちんと似せる。違わせるならはっきり違わせる。」

デザインとして考えてみても、なんとなく納得できる部分がありますね。

色相・明度・彩度それぞれで考える

ムーン&スペンサーでは、この関係を単に「赤と青」のような色相だけで考えるわけではありません。

マンセル表色系の、

色相(Hue)
明度(Value)
彩度(Chroma)

それぞれについて、色同士の差を考えます。

つまり、

「色相は似ているけれど、明度には大きな差がある」

といったように、色の三属性それぞれから配色の関係を見ることができます。

色彩検定1級らしくなってきましたね。

配色の「面積」も重要

さらにムーン&スペンサーは、色の組み合わせだけでなく、それぞれの色が占める面積も考慮しました。

例えば同じ赤と青を使っていても、

赤50%:青50%

と、

赤10%:青90%

では、全体から受ける印象が違います。

配色は「何色と何色を使うか」だけではなく、どのくらいの量で使うかも重要ということですね。

これはWebデザインにもかなり関係があります。

背景色、メインカラー、アクセントカラーを全部同じ面積で使うのではなく、役割に応じて使用量を変えるのも、配色を整えるポイントです。

「美度」とは?

そしてムーン&スペンサーの色彩調和論で、特に覚えておきたいのが**美度(Aesthetic Measure)**です。

これは簡単にいうと、

「その配色がどの程度、美的価値を持つのか」

を数値として評価しようとする考え方です。

代表的に、

M = O / C

という式で表されます。

M(Aesthetic Measure)= 美度
O(Order)= 秩序の要素
C(Complexity)= 複雑さの要素

つまり、

秩序が大きく、必要以上に複雑でない配色ほど、美度が高くなる

という考え方です。

たくさんの色を無秩序に使えばいいわけではなく、色同士に関係性やルールがあり、適度に整理されていることが「美しさ」につながると考えたのですね。

美しい配色を「数字」で考えようとした

ここが個人的にも面白いポイントです。

私たちは普段、

「この配色かわいい!」
「こっちの方がおしゃれ!」

と感覚的に判断します。

しかしムーン&スペンサーは、そうした美しさをできるだけ客観的・定量的に説明しようとしたわけです。

もちろん、実際のデザインの美しさを一つの計算式だけで完全に決められるわけではありません。

それでも、

「なぜこの配色はまとまって見えるのか?」

を理論的に考えるきっかけになります。

オストワルトとの違いは?

前回学んだ内容と比べると覚えやすくなります。

オストワルト

→ 「調和は秩序に等しい」
→ 自身の表色系の規則的な関係から調和を考える

ムーン&スペンサー

→ マンセル表色系をもとに考える
→ 色同士の差から調和・不調和の領域を考える
→ 面積も考慮する
→ 「美度」によって美しさを定量化しようとした

同じ「色彩調和論」でも、アプローチが違うのが面白いですね。

Webデザインに置き換えて考えてみる

例えばWebサイトで、

白い背景
+濃い緑のメインカラー
+明るい緑
+ゴールドのアクセント

を使用するとします。

このとき、

「緑なら何色でも追加してOK」

ではなく、

色同士にどんな差があるのか?
似せるところは統一されているか?
対比させる部分は十分な差があるか?
アクセントカラーを使いすぎていないか?

と考えてみる。

ムーン&スペンサーの理論をそのままWeb制作のルールとして使う必要はありませんが、配色を感覚だけではなく「色同士の関係」として見る視点はデザインにも役立ちそうです。

まとめ

今回は、ムーン&スペンサーの色彩調和論について学びました。

試験勉強として覚えておきたいポイントは、

マンセル表色系をもとにした色彩調和論

そして調和する関係として、

同一(Identity)
類似(Similarity)
対比(Contrast)

その間には、調和しにくい曖昧(Ambiguity)な領域があること。

さらに、

色の面積も考慮する

そして、

美度(Aesthetic Measure)

という考え方を用いて、配色の美しさを定量的に捉えようとしたことです。

美度の基本式は、

M = O / C

M=美度
O=秩序
C=複雑さ

と覚えておきたいですね。

前回のオストワルトと今回のムーン&スペンサー。

どちらも「美しい配色には何らかの秩序がある」と考えているところに共通点があります。

色彩検定1級では覚えることも多いですが、こうして**「昔の研究者たちは、色の美しさをどう説明しようとしたんだろう?」**という視点で見てみると、少し面白く感じられそうです。
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