「……いくらあったら、安心なんだろうなぁ。」
はじめに
こんにちは!Sou です。
IT 企業で働くかたわら、相談者のお悩みに合わせた本を処方するサービス「処方選書カルテ」を副業として運営中です。
冒頭のひとり言に、心当たりはないでしょうか。
この連載は、よくあるお悩みに、実際に運営しているサービスと同じプロセスで本気のカルテを書く「公開処方箋」です。
相談者は架空、プロセスは本物。あなたの悩みと重なったら、このカルテはあなたのものです(詳しい建て付けは第 1 回をどうぞ)。
今回のご相談
連載 3 回目の相談者は、ヒナタさん(30 代・食品メーカーの営業企画)です。
※ 架空の相談者であり、実在の人物ではありません
去年娘が生まれてから、教育費や住宅、老後と、将来のお金がずっと不安です。夜にスマホで老後資金の記事を読んでは、余計に不安になっています。
NISA を始めたほうがいいのは分かっていて、証券口座も作りました。でも「もし減ったら」と思うと怖くて、結局まだ何も買えていません。
節約はしているつもりですし、貯金も世帯で 450 万円あります。それでも、いくらあれば安心なのかが、正直よく分かりません。この前、妻に「いくらあったら安心なの?」と聞かれて、何も答えられませんでした。
「……身に覚えがある」という方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
よくある悩みに見えて、その正体は「金融知識の不足」とは別のところにあります。
カルテでは、悩みの本質を言語化するところから始めます。
診立て ー 不安の正体は、金額ではない
先にお伝えしたいのは、ヒナタさんが「何もできていない人」ではない、ということです。
『本当の自由を手に入れる お金の大学』で固定費を見直し、月 1 万円ちょっと下げることにも成功しています。
それでも、不安は変わらなかった。
手順を足しても効かないのなら、原因は知識の不足だけではないはずです。
紙上ヒアリングを通じて見えてきた悩みの本質を、カルテでは 3 つに言語化しました。
1. 不安のサイズを、まだ測ったことがない
2. 「安心」の物差しが、他人の手元にある
3. お金が「使うと減るもの」にしか見えなくなっている
1. 不安のサイズを、まだ測ったことがない
きっかけは、娘さんが生後 3 ヶ月の頃。
学資保険の営業担当に「大学まで一人 1,000 万かかりますよ」と言われた夜、電卓アプリを開きました。
でも、教育費のほかに何をどこまで足せばいいか分からず、途中で閉じます。
「それからは、なんとなく数字を見るのが怖い感じがあって」。
以来、「うちの場合はいくら必要か」は分からないまま、夜な夜な記事を読んでは不安になる習慣だけが残りました。
姿が見えないものを、人はいちばん怖く感じます。
金額の分からない不安には上限がなく、450 万円あっても「足りないかもしれない」が終わりません。
ここに、ひとつ目の真因があります。
「不安だから測れない」のではなく、「測らないから、不安が無限のままでいる」。
2. 「安心」の物差しが、他人の手元にある
さまざまな記事やニュースで見た「老後 2,000 万円問題」。
同期の飲み会で聞いた「NISA はもう 4 年目、300 万は入れてる」。
焦って、翌週に証券口座まで開設しました。
でも、不思議です。450 万円という立派な貯金があるのに、なぜ焦るのでしょうか。
ヒアリングで「安心できる数字が手に入ったら、不安は消えそうですか」と尋ねると、答えはこうでした。
「『いくらあれば大丈夫』の『大丈夫』が何なのか、自分でも分かってない気がします」。
比べる物差しが、ぜんぶ他人の手元にあるのです。
他人の物差しは次々と現れて、ゴールを動かし続けます。
「大丈夫」の中身 ー うちは何にお金を使いたいのか ー を決められるのは、ヒナタさんのご家族だけです。
奥様に言われた「うちはうちでしょ」という言葉は、この核心を突いた一言でした。
3. お金が「使うと減るもの」にしか見えなくなっている
奥様が提案してくれた、娘さんの 1 歳記念の温泉旅行。予算は 8 万円。
いい思い出になると分かっているのに「積立何ヶ月分だろう」と換算し、「今じゃなくてもよくない?」と渋って気まずくなりました。
証券口座でも、同じことが起きています。
オルカンか S&P500 かまで絞り、金額に 1 万円と入力して ー 最後に浮かんだのは「これで減ったら娘に申し訳ない」でした。
以来 10 ヶ月、口座にはログインしていません。
この話は「かっこ悪くて」と、奥様にもまだしていません。
お金は本来、家族の思い出や安心や経験に変えるための道具です。
でも不安が強いとき、人は残高の数字そのものを精神安定剤にしてしまいます。
すると、変えるたび、つまり使うたびに不安が増えるのです。
家族を守るためのお金が、家族との時間をためらわせている。
この逆転が、いちばんの苦しさの正体です。
この 3 つは、バラバラの問題ではありません。
・測らないから、不安に上限がない。
・物差しが外にあるから、貯めてもゴールが動く。
・使うたび不安が増えるから、思い出までためらう。
・そして、残高だけが精神安定剤になっていく ー 。
この循環に楔を打つために、カルテでは次の 3 冊を処方しました。
処方選書 ー この 3 冊
📖 1冊目 『happy money』 ー 悩み③ お金との付き合い方を結び直す本
1 冊目は、『ユダヤ人大富豪の教え』の本田健さんが英語で書き下ろし、世界 25 カ国以上で刊行された本です。
「あなたのお金はニコニコ笑っていますか」という問いから始まり、数式もグラフも出てきません。
この本の核心は、1 行で書けます。
不安や恐れからお金と付き合っている限り、いくらあっても安心はやってこない。
『お金の大学』での学びを実践しても、不安は変わらなかった。
ここから、足りないのは知識ではなく、お金との関係の結び直しだと考えました。
感謝して受け取り、感謝して手放す。
お金を「残高」ではなく「流れ」として見る本です。
数字を持っていても焦ってしまった、あの実感にまっすぐ響くはずです。
不安を燃料にする夜の記事の代わりに、心が静かになる寝る前の数ページを処方します。
📖 2冊目 『お金と生き方の教室』 ー 悩み② 「何のためか」を家族の言葉にする本
2 冊目は、池上彰さん監修『僕らの未来が変わる お金と生き方の教室』。
マンガと解説が交互に進む、「お金と生き方」の教科書です。
見た目は 10 代向け。でも、これは大人にこそ効く本です。
教えてくれるのは、「稼ぎ方より使い方」という視点。
使い方にはその人の生き方が表れる ー だから「何に使いたいか」を決めない限り、貯蓄にはゴールも意味も生まれません。
「いくらあったら安心なの?」への答えも、この「うちの物差し」からしか出てこないのです。
物差しを自分の手に取り戻すと、同じ数字でも見え方が変わります。
マンガと図解が中心なので、活字だと眠くなってしまうヒナタさんにも合います。
読み終えたら奥様と話す入り口になり、いつか娘さんに、そのまま手渡せる 1 冊です。
📖 3冊目 『投資の超基本』 ー 悩み① 電卓の続きを、図解とやり直す本
3 冊目は、『今さら聞けない投資の超基本【改訂新版】』。
ファイナンシャルプランナー監修、オールカラー図解の入門書で、新 NISA にも対応しています。
「これで 1 億」と煽る本ではありません。
「怖いもの」の輪郭を、投資の歴史や意義からひとつずつ明るくしてくれる本です。
最後に置いたのは、ヒナタさんの不安に「目盛り」を付けるためです。
この本は金融商品の話の前に、いまの資産と将来設計の見直しから始まります。
あの夜に途中で閉じた電卓の続きを、図解に手を引かれながらやり直せるのです。
「減ったらどうしよう」の想像も、確率と時間の話として、解像度を上げてくれます。
測った不安は、対処できる不安に変わります。
この本のゴールは、読了ではありません。
10 ヶ月ぶりに証券口座にログインして、金額 1 万円のあの画面まで戻ってこられたら ー この処方は効いています。
服薬指導 ー 読む順番
カルテでは、読む順番まで含めて処方します。
今回は「『happy money』→『お金と生き方の教室』→『投資の超基本』」の順です。
順番には、理由があります。
ヒアリングでヒナタさんは、「自分の場合は、手順の問題じゃないのかも」と話していました。
その通りだと思います。だからこの処方は、手順をいちばん最後に置いています。
「土台 → 視野 → 行動」 ー まず「怖い」をほどき、次に物差しを作り、最後に目盛りを付ける順番です。
Step 1: 『happy money』で、お金への「怖い」をほどく
寝る前に、数ページずつで構いません。
夜、老後資金の記事を開きたくなったら、その手でこの本を開く ー それだけで Step 1 は進んでいきます。
Step 2: 『お金と生き方の教室』で、「うちの物差し」を作る
マンガパートだけでも十分です。
読み終えたら、心に残ったことをひとつだけ、奥様に。
「うちは何にお金を使いたい家だろうね」という会話が 5 分でも生まれたら、大成功です。
Step 3: 『投資の超基本』で、電卓の続きをやり直す
ライフプランと NISA の章から、自分の家の数字をメモしながら拾い読みを。
「怖い」がほどけ、「何のためか」が見えたあとなら、10 ヶ月ぶりのあの画面は前と違って見えるはずです。
読み方のヒントも、ひとつだけ。
3 冊とも、最後まで読み切れなくても大丈夫です。
1 冊につき行動がひとつ生まれたら、その処方は成立です。
経過観察 ー 最初の一歩
カルテの結びで伝えたかったのは、「不安の出発点には、ご家族を大切にしたい気持ちがある」ということでした。
あの夜に止まった手は、弱さではなく、家族を大切に思う気持ちの表れだからです。
そのうえで、私はこう書こうと思いました。
その愛情の向き先を、残高の数字だけでなく、「いま一緒に過ごす時間」にも、少し分けてあげませんか。
娘さんが 1 歳なのは、今年だけです。
温泉旅行の 8 万円は、口座から見れば「減った 8 万円」ですが、10 年後から見れば「あの時しか撮れなかった写真」になります。
ヒナタさんは、架空の相談者です。
でもこの結びは、冒頭のひとり言に覚えのあった、すべての人に宛てたつもりです。
もし今日、一歩だけ踏み出すなら。
今夜、枕元に本を 1 冊置いてみてください。
寝る前に老後資金の記事を開きたくなったら、記事の代わりに、その本を。10 分で眠くなったら、それで十分です。
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ここまでお読みいただき、どうもありがとうございました!
この公開処方箋は、架空の相談者をもとに作成したものです。
有料版の「処方選書カルテ」では、数問のアンケートとDMでのヒアリングを通して、あなたの悩みや読書習慣を整理します。
そのうえで、
・今、向き合いたい課題
・あなたに合う 3 冊とその選書理由
・おすすめの読む順番
・最初の一歩
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