メルヘン

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小説
  「花咲く、ねこの天国」
              どらぽん
 ともちゃんは、動物が好きでした。
 ある日、こねこちゃんが、にゃあんにゃあんと、ないているので、どうしたの? ときくと、ぷいと、どっかへ行ってしまって、ともちゃんは、ついていったら、そこにいたのです。
「ねこ? かってますか? 」
 と、ともちゃんがきくと、
「ここに? ねこはいますか? でなくて、ここににんげんはいますか? でないかい? 」と、おばあちゃんは笑います。
 あたりは、ねこでいっぱいです。
 家に帰ってから、お母さんに聞きました。
「あそこはね。ねこやしきというのよ」
「ねこやしき? 」
「ねこがいっぱいに、すんでいるような家ね」
「いいじゃん。ねこやしき」
「よかないわよ! 」 お母さんはいうので、ともちゃんはがっかりです。
 それから、ともちゃんは、ねこちゃんが好きなので、ねこやしきにいくことが多くなりました。
 お母さんの仕事がいそがしくて、家をあけることがふえたのと、お父さんも仕事から帰ってくるのが、8時くらいがいつもどおりと、今でも、早く帰っているつもりのお父さんのいうのは本当らしくて、もんくもいえず、お母さんも、だいたい夕方6時にしか、家にはいませんでした。だから、ともちゃんも、6時前に家にいれば、誰も家族は気にもしません。だから、6時まえあたりまで、ねこやしきで、大好きな、ねこと遊んでいるのでした。「あれあれ? ともちゃん。かぞくはいいけど、おともだちはいいの? 」
「ともだちは、学校ではあそぶけど、家に帰ってからは、あそばない」
「どうしてなの? 」
「みんな、ならいごとにいくの。そこのほうがいいみたいで」「そうなのかあ」
「うん! 」
「べつにきにしなくてもいいよ。それより、おかしはどう? 」「うん、たべる」
 おばあちゃんちの、お菓子は、あまいものと、しょっぱいものが、同時に出ます。せんべいに、大福が中心です。クッキーやケーキなんてでません。緑茶をのみながら、湯呑片手に、縁側でねこをながめるのです。
 ねこってほんとうにかわいい。
 幸せな気分だね! 
「あたしが死んだら、ねこたちどうなるんだろうね」とか、おばあちゃんは、しみじみいいだしました。
 お茶をすすってから、おばあちゃんは、
「この家はあたしの代でつぶすんだ。ねこちゃんに、すこしでも、お金を残せたらいいんだけどねえ。どうしたものかね」
「うん。そうだね」
「あたしはね、お金はべつにいいんだ。ところが、欲しがるやつが多くいてね。いくら残して、ねこにわたしたくても、わたせないんだよ」「うん。そうかあ」
「あたしが死ぬのをまってるんだよ」
「ひどいね」
「ねこはね。死ぬのを見せないんだ。あたしも、死ぬときは、ひとりで死ぬよ。ひっそりとね。それがねがいだね」「・・うん」
「ねこも、にんげんも、同じ命だよ。神様から、さずかった命さね。みんなだいじだよ」
「そうだよ。そうだとおもう。命はだいじだとおもう」
 ほんとうに、そうかな? ともちゃんが、家に帰ってお母さんにいうと、お母さんはそういいます。どうなんだろう? ともちゃん
は悩みます。おばあちゃんの、ねこの命もにんげんの命も同じは、いけないの?
 にんげんも、ねこも、同じじゃないから、命の重みも、べつでないといけない? のかな? にんげんの命とねこの命が、同じでは、だめなのか? ともちゃんは、答えが出ません。お母さんの答えはなんだろう。おばあちゃんの答えは間違っているのかな?
 おばあちゃんはいいます。あたしを死ぬのをまってるのがいる。だなんて、ひどいはなしだね。
 それからでした。おばあちゃんは、ひっそりと入院したのです。
 ねこちゃんの世話役の、管理人がやってきました。エサをてきとうにあげて、てきとうに、そうじして帰っていくのです。
 ともちゃんが、庭の草むしりをしていると、たばこをすって、すいがらをぽいとすてる、げひんな、じじいです。
 ともちゃんを、いやらしいめつき、でみるので、ほんとうにきらいです。
 その、じじいがいうには、おばあちゃんは、そうとうな、お金持ちらしいのです。
「さすが、金持ちだよな。自分が死んでも、ねこに金をのこすなんざ」
「まだ、死んでないよね」
「うん? まだ死んでないよ」
 なかなか、世の中、うさんくさいのでいっぱいですね。おとなたちの、おもわく、はどうなるんでしょう?
 ともちゃんは、庭の草むしりを終えてから、庭一面に、花を咲かせて見せようと、計画して、種をまいているのです。
「ねこやしきなんて、バカにしないで! おばあちゃんも、怒らないとね。多分いうと思うわ! 花が咲いてきれいだね! 」
 こんどは、はなやしきだね。
 なんだ! はなやしき? ばかみたいだね。
「ここは、おばあちゃんとねこちゃんたちの、天国なんだ。天国が天国であり続けたいの! 」みんなに、思わせるの! ここは楽園天国だって、そんな名前てないかな?
 お母さんに、ともちゃんは聞きました。
「ねこの天国て、英語でなんて言うの? 」
「キャッツパラダイス? かな」
「そうかあ。天国てなんなの」
「パラダイス」
「じゃあ、ねこは、キャッツなの? 」
「ねこは、キャット。ねこの、になると、キャッツね」「そうなんだね」
 うーんとか、ともちゃんがうなるように、ためいきをつくと、
「どうしたの? ねこちゃん死んだの? だから天国? 」
「うん? なんでもないよ。ただきいてみただけ」庭に花の芽が出て、若葉が開いて、育っていきました。あたり一面が、若葉でいっぱいです。みずやりを夕方済ませると、
「なんでえ、くさぼうぼうだな」
 じじいがたばこをふかせながら、そういうと、にやにやしながら、ともちゃんにちかづいてきました。へんなじじいで、ともちゃんは、すぐはなれました。
「おやおや、にげなくてもいいじゃんかよお」 
 じじいのめつきは、いやらしくて、いつもどんぐりまなこのくせに、ともちゃんの、からだをみるときだけ、細い目に変わるのです。昔話の、お化けの蛇みたいな目です。
「いいことおしえてやるよ」
「うん」「うんじゃない。はいだ」
 ともちゃんは、なにもいえなくて、うなづくと、「ばばあは、いきてるよ。そのうちかえってくる」「そうなんだ」
「ふん。そうだよ。オレも用済みてわけだ」
「ええいくそねこ! 」
 じじいはおもいきりさけぶと、
「オレにはどうでもいいんだ。ばばあが生きようが死のうが、ねこが死のうがなあ」
 ともちゃんが、だまっていると、また、ふんと鼻であしらうように、
「オレの仕事がなくなちまう。金持ちらしいからなあ、ばばあのやつ」
 まあ、いい気味さ。ひひひ。と笑うと、じじは、えさはここだ。と、小屋の戸を開けて見せて、おれはもう来ないからなあ。
 とか、いって、めんどうなことを、ともちゃんに押し付けるのでした。
 ほんとに、いやなじじいです。
 花を雑草だとか言って、くつでふみ散らして、くつが泥だらけになる。とかいって、たばこのすいがらを、ぽいすてしてから、二度ときませんでした。
「やめてー! 」とか、ともちゃんは、短く悲鳴をあげたのを、よろこぶみたいでした。
「さいごの、じゃあな」 と同時に、じじいの、「早く死ねばいいのに」と、ちらというのは、ともちゃんを怒らせるのには、あんまりなことばでした。うしろすがたに、「ばーか」と、いったのでは、あきたりませんね。
 じじいが、いなくなって、ねこちゃんのせわは、ともちゃんがやりました。
 キャットフード、水をあげて、庭のそうじを毎日やりました。学校を終えると、すぐ、おばあちゃんちに行って、庭にいくのです。
 花はすくすく育って、もうつぼみをいくつかつけています。マーガレットです。
 コスモスのが、よかったかな?
 おばあちゃんにいうと、コスモスならまだ咲かないね。マーガレットだからいま咲いたんだよ。といってくれます。
 おばあちゃんが、退院してから、一斉に、庭一面にマーガレットが咲いたのです。
 「きれいだね」おばあちゃんが言います。
 縁側に座っていると、お茶とお菓子で、ねこがごろごろ、しあわせきぶん。
 庭にはマーガレット!
 うんとね! ともちゃんが、いいます。
「庭に名前を付けたんだ」
「ん? なんてなまえ? 」
「キャッツパラダイス」「キャッツパラダイス? 」「ねこの天国」
 うんとお、「ここを、そうよばせたいの」
「ねこやしきだなんて、ばかにしないでって」
「そうねえ。あたしが死んだらいきたいとこね」「ここがもうそうだよお」
 ともちゃんが笑うと、おばあちゃんも笑いました。ニコニコ顔で二人ずっといました。

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